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新オーナー到来で狂喜乱舞。好発進バーミンガムで「プロジェクト」の旗を振る三好康児の現在地

2023.09.10

2023年6月、ベルギー1部のアントワープを退団したMF三好康児の英2部バーミンガム・シティへのフリー加入が発表された。近年はチャンピオンシップでもボトムハーフでのフィニッシュが目立っていたが、今季は5節終了時点で無敗の4位とスタートダッシュに成功している“ブルーズ”。その低迷を招いた過去から公式戦全試合出場中の初の日本人選手の現在地まで、英国に拠点を移している長年のバーミンガムサポーター、EFLから見るフットボール氏とたどっていこう。

 現在のイングランド・チャンピオンシップ(2部)で、昇格も降格もせず、最も長く2部に留まり続けているクラブがどこかご存じだろうか。イギリス、ウェスト・ミッドランズ州のバーミンガムに本拠地を置くバーミンガム・シティのことだ。

 21-22シーズン、ライバル同士でその称号を分け合っていたノッティンガム・フォレストとダービーがそれぞれ対極の方向へと去ったことで、そのタイトルはバーミンガムの下へと移った。リーグカップ優勝もチャンピオンシップ降格の憂き目を見たのが10-11シーズン。そこから2部に居残り続け、今季は13年目となる。

10-11シーズン、プレミアリーグを4位で終えたアーセナルを破るジャイアントキリングでリーグカップ優勝を果たしたバーミンガム

 もっともその間、彼らは上ではなく下に近づいていた。チャンピオンシップ1年目こそ4位だったものの、その後は厳しい状況に。降格からの12シーズンでトップハーフフィニッシュは4回だけ。16-17シーズン以降は毎年17位以下でのフィニッシュが続き、最終日にようやく残留を決めたシーズンが実に4度もある有様だ。

 そんなバーミンガムが今季、全24チームの中でも屈指の好スタートを切った。チャンピオンシップ第5節を終えた時点で3勝2分の4位。首位プレストンと並んでリーグでは2チームしかいない無敗を継続しており、シーズン序盤とはいえ、サポーターの間にも昨季までとは次元が違うレベルの高揚感が広がっている。

十数年にわたる低迷の元凶は中国系資本のクラブ運営

 今季のバーミンガムを語る上で避けては通れないのが、この7月に完了したクラブ買収だ。

 バーミンガムは長い間、中国系の資本によって運営されてきた。その歴史はプレミアリーグ時代の09年10月、香港出身のカーソン・ユンがクラブを買収したところから始まる。それにより一時的に金満扱いされた時期もあったが、補強の甲斐なく10-11シーズンにクラブは降格を経験。同時にユンがマネーロンダリングの容疑で逮捕され(→後に有罪判決)、2部でも最下位レベルの予算によるやり繰りを余儀なくされることになる。

 その苦しい時期をなんとか乗り切り、16年10月には管財人が持ち株会社自体を売却する形で、別の中国グループが新オーナーとなる。しかし代表者のポール・スエンはサッカー自体に興味がなく、ただ底値を打った株式を立て直し、転売することによって利益を得ることを目的としていた。当時上場していた香港株式市場はアジア屈指の金融市場で、ゆえに「上場さえしていれば儲かる」状態だったのだ。

 そのため実質的な運営権は持ち株会社に(名義を隠しながら)多額の貸付を行っていた別の男にわたっていたとされる。当然リーグ側に彼の存在は通告されておらず、長らく違法な状態でのオペレーションが続いていた(ちなみにこれを暴いたのはユン時代からオーナーシップ問題を追っていたいちサポーターのブロガーだった)。

 そんな状況で好成績が出るわけもなく、前述の通り16-17シーズン以降は最高でも17位という惨憺たる状況が続いた。それどころかクラブ上層部には英国サッカー界での経験を持たない中国人が並び、その素人同然の意思決定はリーグ史上初となるファイナンシャル・フェアプレー違反での勝点剥奪など恥ずべき事態まで招いた。長年繰り返される茶番劇にサポーターは呆れ果て、スタジアムが満員になることさえ極めて稀になっていたのだ。

「プロジェクトの象徴」として到来した初の日本人選手

 だから今年5月、アメリカのヘッジファンドであるナイトヘッド・キャピタルがクラブ買収を発表した際、サポーターは狂喜乱舞して彼らを歓迎した。そしてその期待に応え、新オーナーグループは早くも至るところで辣腕ぶりを発揮している。

 胸スポンサーには著名ファッションブランド “Undefeated” が入り、新CEOには元マンチェスター・シティCEOで地元出身でもあるギャリー・クックをサウジ・プロリーグから引き抜いた。極めつけにNFLのレジェンド、トム・ブレイディを経営陣に招き入れ、クラブの世界的な知名度を一気に引き上げることに成功している。

 この明るい現状を指して、サポーターの間では「プロジェクト」という合言葉が生まれた。前体制ではまったく感じられなかった計画性、そしてプロフェッショナリズム。これなら近いうちに昇格するのも夢ではない――そんな希望に満ちあふれた雰囲気が今のバーミンガムを包んでいる。……

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バーミンガム・シティ三好康児

Profile

EFLから見るフットボール

1996年生まれ。高校時代にEFL(英2、3、4部)についての発信活動を開始し、社会学的な視点やUnderlying Dataを用いた独自の角度を意識しながら、「世界最高の下部リーグ」と信じるEFLの幅広い魅力を伝えるべく執筆を行う。小学5年生からのバーミンガムファンで、2023-24シーズンには1年間現地に移住しカップ戦も含めた全試合観戦を達成し、クラブが選ぶ同季の年間最優秀サポーター賞を受賞した。X:@Japanesethe72

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