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日本人初フランス杯優勝でELへ!オナイウ阿道が語るトゥールーズへの愛【現地取材】

2023.05.01

2連覇を狙うディフェンディングチャンピオンのナントと、66年ぶりの戴冠を目指すトゥールーズが対戦した4月29日のクープ・ドゥ・フランス(フランスカップ)決勝は、1970年大会(サンテティエンヌ 5-0 ナント)以来の大差となる5-1でトゥールーズが圧勝。69分から途中出場したオナイウ阿道は、日本人選手で初めて、この国内カップ戦の優勝メダルを手にした。

 黄色がテーマカラーのナント、そして紫色のトゥールーズ。対照的な2色にくっきり分かれたスタッド・ドゥ・フランスのスタンドは、観客数では「6:4」と、パリに近い分だけナント側が優勢だった。しかし試合は、キックオフ後わずか4分にトゥールーズが先制する展開に。

 右CKにヘディングでぴたりと合わせたのはローガン・コスタ。22歳のフランス人CBは、その6分後にもセットプレーから追加点を挙げ、試合開始10分間でチームに2-0のリードをもたらす殊勲のプレーを披露した。2021年夏にトゥールーズ入りした彼は今シーズン、初参戦となったリーグ1ではここまで出場3試合のみ。もっぱらこのフランスカップを主戦場とする選手だった。

 今大会は初陣の3回戦から準決勝まで全5試合に先発フル出場。決勝戦という特別な一戦では通常のスタメン選手を起用するというよくある采配を、フィリップ・モンタニエ監督は選ばなかった。

 「彼には大きな信頼を寄せている。競争は激しいが、この大会での彼の活躍は目覚ましい。よって私にとっては理にかなった選択だった」

 指揮官は、2週間前のリーグ1第31節リヨン戦でコスタを先発起用し、このビッグマッチに備えたことを試合後の会見で明かした。同じく控えGKでフランスカップ要員だったシェティル・ハウグも、決勝戦で引き続きゴールを任されている。

英雄になったローガン・コスタ。スタッド・ランスで育成を受けたCBは、スタッド・ドゥ・フランスがあるサン・ドニ生まれ(ルーツはアフリカのカーポベルデ)。故郷でマン・オブ・ザ・マッチ級の活躍を披露し、優勝トロフィーを手に入れた。なお、1点目の右CKも2点目の起点となったフリーキックも、蹴ったのはオランダ人MFブランコ・ファン・デン・ブーメン。トゥールーズ3季目の27歳は、チーム随一の精度を誇るプレースキッカーだ(Photo: Yukiko Ogawa)

 トゥールーズはその後も23分、31分とオランダ人FWタイス・ダリンハがゴール至近距離から2点を追加し、4-0で前半を終了。後半、ナントがPK から1点を返したが、間髪をいれずにモロッコ代表MFザカリア・アブクラルがボックス手前からの強烈ボレーで取り返すという、この日は完璧にトゥールーズの日だった。

 ちなみに、まさに“ボコボコにされた”といった感じのナントのGKアルバン・ラフォンは、奇しくもトゥールーズの下部組織出身で、2015年に16歳309日というフランスの歴代最年少GKとして同クラブからプロデビューした24歳の俊英。未来のレ・ブルーの守護神候補でもある。古巣にこれほど得点を許してしまった彼の身辺が思わず心配になってしまった。

ナントを粉砕した5発のゴール動画

「チームとして必要なことは少なからずやれたと思う」

 そしてベンチスタートのオナイウ阿道は、後半開始直後からアップを始めると、4-0でリードしていた69分にダリンハとの交代でピッチに送られた。……

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オナイウ阿道トゥールーズフィリップ・モンタニエフランスフランスカップリーグ1

Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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