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サッカーがビジネス化する時代に、自ら契約解除金の半分を払ってまで愛するクラブへの移籍を決断したストライカー

2023.01.16

 テレビではスペインスーパーカップの中継をしている。レアル・マドリーに続きバルセロナもPK戦で勝ち上がり、クラシコとなった決勝は1-3でバルセロナが勝利しタイトルを掲げた。サウジアラビアのファンは大喜びで、スペインサッカー連盟会長もホッと胸を撫で下ろしているだろう。

 なにせ、この大会は2強とその他では受け取るギャラが違い、2強が参加できなかった場合は連盟にペナルティが課されるという、海外でクラシコを実現するために作られた大会だからだ。そして、これによりジェラール・ピケの会社は4000万ユーロ(約56億円)のコミッションを手にする。

 そのピケの元彼女のシャキーラは、彼と新恋人への当てつけを歌詞にして24時間ほどで6000万回再生を記録したそうだ。この一種の炎上商法の儲けはいくらになるのだろう?

 また、お昼のニュースによるとロナウド対メッシをサウジアラビアリーグで再現しようというプランがあり、その場合、メッシへはロナウドの2億ユーロ(約280億円)を上回る年俸3億ユーロ(約420億円)がオファーされる予定だそうだ。

 以上、もう当たり前のことだが、サッカーはビジネスであり、ビジネスである限りお金儲けが最優先、という話である。そんな中で、サッカーは金ではない、という移籍劇が注目されている。

行き先は、2カテゴリー下の生まれ故郷のクラブ

 12月30日、ルーカス・ペレスはカディスでの最後の試合にゴールを決めてファンへ別れを告げた。生まれ故郷の愛するデポルティーボ・デ・ラ・コルーニャでプレーするためだ。リーグのカテゴリーを2つ落し、契約解除金の半分(50万ユーロ)をポケットマネーで払い、200万ユーロの年俸が10分の1ほどになっても古巣へ戻ることを選んだ。

 デポルティーボは連盟1部リーグ(3部)に参戦中で、2部昇格を目指している。1月13日現在の順位は4位、首位との勝ち点差は4。ダイレクトで昇格するのは1チームだけなので、これ以上離されるわけにはいかない。

 昨季、デポルティーボが2部へ昇格すれば移籍という約束がカディスとの間にできていたが、プレーオフで敗退。その試合をスタジアムで観戦していたルーカスは涙を流した、というエピソードがある。

 先に紹介したカディスでの最終戦では、ケガを避けるためにデポルティーボ側は欠場を勧めたが、恩があるからと耳を貸さず、ゴールで有終の美を飾っている。

 義理堅く、恩を大事にする男なのだ。

カディスでのラストマッチとなったアスレティック戦でゴールを挙げ、雄たけびを挙げるルーカス・ペレス(15番)。デポルティーボではデビュー戦で2ゴールをマークし好発進を切っている

 アーセナルが契約解除金2000万ユーロを払った時もデポルティーボとの契約更新を望んでいたが、財政再建中だったクラブに背中を押されて出て行った経緯がある。プレミアリーグ在籍中に稼いだので、キャリアの最後は「自分が最も好きなことをやりたい」と決めていたのだそうだ。

Photos: Getty Images

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カディスデポルティーボルーカス・ペレス

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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