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有言実行の「準備力」。谷口彰悟が導く新たな景色

2022.12.05

「いつでも出る準備はできている」――マイクを向けられてそう語る控え選手は珍しくない。だが本当の意味で「準備ができている」選手が果たしてどのくらいいることか。ましてや、それが「まだ出たこともないW杯の準備」だとしたら、どうだろう。普段は国内でプレーするがゆえにイメージを持つことも難しいように思えるその舞台に、しかし完璧に合わせていた男がいた。川崎フロンターレのDF谷口彰悟の「準備力」が、絶体絶命の日本代表を救った。

それでも、いつも変わらずに

 何度も繰り返していた。出番があるのか、ないのかはわからない。それでも、次の試合で自分にチャンスが来ることを信じ、プレーのイメージを膨らませ続けた。

 いざ出番がなければ、すぐに切り替えて「サッカーの悔しさはサッカーでしか晴らせない」とトレーニングに励む。気持ちの弱いタイプなら不貞腐れてもおかしくないが、谷口彰悟はいつか来るかどうもわからないその日に向けて、常に準備を進めていた。

 「チャンスをもらえればやれる自信はありますし、もらえなえれば次に向けて準備をするだけ。そこは変わらないですし、こっちに来ても自分をコントロールしながらやれている。自分にとってもいい経験になっていますし、成長にも必ずつながっていると思う。いい状態で準備ができていると思います」

 迎えたスペインとのグループステージ第3節。酒井宏樹の負傷やコンディション面に不安のあった冨安健洋がスタメンから外れる中、森保一監督が白羽の矢を立てたのは谷口だった。

 グループステージ突破のために勝利が欲しい一戦で、ここまで出場時間ゼロだった男に出番が来る。もし負ければ敗退が決まるというプレッシャーのかかる試合となったが、谷口はまったく動揺していなかった。

 「スタメンを言われたのは、2日前くらいだったと思います。『やっと来た!』『よっしゃ!』『やってやるぞ!』という思いだけでした。もちろん緊張はしましたけど、むしろ自信というか、『俺は絶対できる』と考えながらピッチに立っていて、緊張を乗り越えることができました」

カタールの地でトレーニングに励む谷口

ずっと作ってきた「準備力」

 いつ呼ばれても問題なし。この自信に大きく寄与しているのが、谷口の「準備力」である。試合に出る、出ないに関わらず、常に試合に向けた準備を淡々と進める。それを何度も繰り返すことで、フィジカルはもちろんのこと、いつ出番が来ても普通にプレーできると思えるメンタリティも構築、キープしていくのだ。

 W杯に向けた準備自体、Jリーグでプレーしている時から始めてもいた。他のCB陣とは異なり、欧州でプレーしていないこともあって常日頃から世界トップレベルの選手と対峙しているわけではない。だからこそ、日々のトレーニングや試合の中で、「もしこの相手がW杯で戦うクラスの選手だったら」と常にイメージしながらプレーしていたと言う。……

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川崎フロンターレ日本代表谷口彰悟

Profile

林 遼平

1987年生まれ、埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることに。帰国後、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

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