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なぜトゥヘルではなくポッターだったのか?新生チェルシー監督交代の舞台裏

2022.09.12

プレミアリーグ開幕6戦を3勝1分2敗、迎えたCL初戦でも黒星を喫したチェルシーは9月7日、トーマス・トゥヘル監督を解任し、翌8日にブライトンを指揮していたグレアム・ポッターと5年契約を締結した。この電光石火の決断の裏には何があったのか。西ロンドンで長年チェルシーを追い続けてきた山中忍さんが伝える。

買収100日後の経営レビュー

 “American’t” ――トーマス・トゥヘルがチェルシーで監督の任を解かれた9月7日、アーセナルファンの友人から届いたスマイル絵文字付きメッセージへの返信だった。ガナーズのお膝元、北ロンドンに住む彼は爆笑の絵文字で反応してくれた。だがブルーズの地元、西ロンドンの住人としては駄洒落を言っている場合などではない。

 チェルシーは変わるはずだった。ロシア人オリガルヒからアメリカ人ビジネスマンへのオーナー交代は、口先だけではない長期的安定への転機になると期待された。暫定役を含めれば19年間で15人の異なる人物が指揮を執るという、ロマン・アブラモビッチ時代の監督交代頻発が再現されることはないと思われた。しかし、トッド・ベーリーをはじめとする新経営陣も我慢ができなかった。

 新たにクラブを所有するコンソーシアムは、買収100日後の経営レビューを当初から予定していたようだが、その結果として前週までブライトンで指揮を執っていたグレアム・ポッターが新監督となる展開など予想されていなかった。最初の100日間で洗い出された経営上の「問題点」と判断されたトゥヘルは、攻撃的スタイルを持つ強豪というアイデンティティ確立を目指すチーム最大のキーマンに他ならないと思われた。ところが、チェルシーで新シーズンを迎えた正監督としては、前政権下での犠牲者たちよりも短い開幕33日目に首を切られてしまった。

 就任1年8カ月後の解任は地元ファンの間でも意見が分かれる。前日に当たる9月6日、最後の采配となったCLでのディナモ・ザグレブ戦(●1-0)で、不甲斐ないチームパフォーマンスを改善できなかったことが事実なら、その3日前のプレミアリーグ第6節ウェストハム戦(○2-1)がトゥヘルのベンチワーク奏功による逆転勝利であったことも事実だ。ザグレブでの敗戦後には、戦うための基本姿勢からしてなっていないとする強烈なチーム批判を口にしたが、選手たちの心離れが見て取れるような状態ではなかった。その一戦で5人がピッチに立った今季新戦力のうち、トゥヘルのチームであることが移籍理由の1つとなった選手は、ドルトムントでも指示を仰いだピエール・エメリク・オーバメヤンだけではないはずだ。

ディナモ・ザグレブ対チェルシーのハイライト動画

新オーナーとの近過ぎた距離

 トゥヘルは、後半戦になって就任した一昨季にクラブ史上2度目のCL優勝を実現した。昨季は、ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁として前オーナーに資産凍結処分が下るという前代未聞の苦境の中、自身にはマンチェスター・ユナイテッドやバルセロナからの興味が伝えられていても、威厳のある指揮官、そして実質的スポークスパーソンとしてチェルシーを牽引し続けた。個人的には、就任後2度目のフルシーズンで時間を与えられるだけの資格はあると感じていた。……

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グレアム・ポッターチェルシートーマス・トゥヘル

Profile

山中 忍

1966年生まれ。青山学院大学卒。90年代からの西ロンドンが人生で最も長い定住の地。地元クラブのチェルシーをはじめ、イングランドのサッカー界を舞台に執筆・翻訳・通訳に勤しむ。著書に『勝ち続ける男 モウリーニョ』、訳書に『夢と失望のスリー・ライオンズ』『ペップ・シティ』『バルサ・コンプレックス』など。英国「スポーツ記者協会」及び「フットボールライター協会」会員。

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