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新ラウカクはバージョンアップだった。シモーネ・インテル2年目は「挑戦、そしてデジャブ」

2022.09.01

昨季は2ポイント差の2位でセリエA連覇を逃したインテル。スクデット奪還を目指し、8月を3勝1敗で発進したチームは今週末、9月3日(土)の第5節でミラノダービーに挑む。シーズン早々の大一番を前に、シモーネ・インザーギ体制2年目の現状を、長年インテルを追うTORA(@labeneamata104)さんに解説してもらった。

 突然だが「バージョン」と「リビジョン」の違いをご存じだろうか。

 主にIT用語として、バージョンは新しい機能や大幅な仕様変更などを意味し、リビジョンは元の機能などには変更を加えず改善や修正を行うことを意味する。iOSで言えば、8/31時点で「iOS15.6.1」が最新。15がバージョン、6.1はリビジョンを指す(正確に言えば、6はマイナーバージョンだが)。みなさん、バージョンアップはお済みでしょうか。

 「あれ……? これフットボリスタだよな……?」と思われた方、合っているのでブラウザバックの手を止めてくださいませ。

 ここからが本題である。

王の帰還

 さて、王座奪還を目指すシモーネ・インザーギ政権2年目のインテル。夏の移籍市場で最もホットだったのはロメル・ルカクの帰還だろう。

1年前に完全移籍したチェルシーから、今季終了までのレンタルでインテルに復帰したルカク

 20-21シーズンのセリエA最優秀選手に輝き、ネラッズーリに11年ぶりのスクデットをもたらしたエースが再び、こんなにも早く黒と青のユニフォームに袖を通すことを一体誰が予想できただろうか。事実、筆者のSNSには移籍が確定してもなお、夢と疑うインテリスタが多数いたものだ。

 また、“再び”という点でラウタロ・マルティネスとのコンビ復活も取り上げないわけにはいかない。

 相性の良さはインテルやセリエAファンならずとも首を縦に振るのではないだろうか。現地ではデュオの頭文字を取った「LU-LA」というネーミングがマジョリティだが、個人的には著名な実況者が推している「ラウカク」が親しみ深いし、単純に好きだ。両者はプライベートでも親交が深く、本人いわく「移籍が決まって一番最初に連絡をしたのはラウタロだった」とのこと。

8月20日の今季セリエA第2節スペツィア戦(○3-0)で、ルカクのアシストからラウタロが今季初ゴールとなる先制点を決めて

 好相性に加えて、彼らの背番号であるラウタロ10+ルカク90=100、という偶合は今季とにかくメディアやファンにこすられそうだが、シモーネ監督はその先を見ている気がしてならない。

 結論から言えば、今季のラウカクは以前のそれとは仕様が異なる。同じiPhoneでもソフトウェアが違うのと同様に、ピッチには新しい機能と効果が存在する。そう、現状に甘んじることなく新しい挑戦をしているのだ。

ルカクは恒星に

 ポストプレーヤーの周囲を動き回るセカンドトップ的なムーブのFWを「衛星」にたとえるのはサッカー用語辞書に載せるべき“たとえあるある”だと思っているのだが、だとするならば今季のルカクは「恒星」であると主張する。

 まず大前提として、ルカクはボックスストライカーではないし純粋なポストプレーヤーでもない。スペースがあり、前を向いてプレーすることで真価を発揮する。身長190cm、体重100kgを超える体躯からは想像しづらいかもしれないが、強いてポジションで表すならばセカンドトップがベストな選手なのだ。

 そのため、アントニオ・コンテ前監督(現トッテナム)はGKハンダノビッチや3バック(シュクリニアル、デ・フライ、バストーニ)を中心に相手チームのプレスを引きつけ一気に縦に展開。1.5列目に降りたりインサイドに開いたルカクを幹として、疑似的なカウンターを創造するスキームで彼の長所を最大限に引き出した。

……

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インテルラウタロ・マルティネスロメル・ルカク

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TORA

インテリスタ。フランスW杯でバッジョ・ビエリ・ロナウドのプレーに惚れてセリエAにのめり込み、クラブで彼らが絶妙に並び立たないジレンマに気づけばハートを奪われていた。TwitterとnoteでインテルやセリエAの考察を発信。戦術×スタッツ×グラフィックの3本柱を目指しているが、いつも何かしら折れている。奥さんと娘がとにかく大好き。Twitter:TORA@la.beneamata104

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