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5万人が笛で出迎え!? “ルカク・ダービー” 愛憎入り混じるインテル対ローマが今節開戦

2023.10.28

シーズン開幕後の8月31日に1年間のレンタルでローマ入りが発表され、ここまでセリエAで7試合5得点、ELで3試合3得点とゴールを量産中のロメル・ルカク。迎える今節、移籍後初めて元ホームに帰還する30歳のストライカーには、インテリスタの手荒い歓迎が待ち受けていそうだ。今夏に始まる騒動の背景を、『ASローマ速報』管理人の如月たくみ氏に伝えてもらった。

モウリーニョの牽制、マロッタの煽り

 10月29日の日曜日(現地時間)に開催されるセリエA第10節、インテル対ローマには火種が燻っている。それもそのはず、インテリスタに愛されたロメル・ルカクが対戦相手の一員としてジュゼッペ・メアッツァに戻ってくるからだ。そこで彼は、耳をつんざくブーイングを浴びることになるだろう。インテリスタたちは、ルカクが自分たちを裏切ったと感じている。

 この試合に先立ち行われたELグループステージ第3節、ローマ対スラビア・プラハ戦の前日会見に臨んだジョゼ・モウリーニョ監督に対して、ジャーナリストからは翌日の試合ではなく、インテル戦でルカクがプレーするか、どのような精神状態なのかといった質問が飛んだ。これらの問いに指揮官は皮肉を交えて答えている。

 「ルカクはプレーするが……それにしてもだ、これほどまで彼がインテルで重要な選手だとは知らなかったね。確かにスクデットといくつかのカップ戦を勝ち取ったのかもしれないが、それはインテルの長い歴史の中で、200人以上もの選手が達成してきたことでもある。ファビオ・カンナバーロがインテルからユベントスに行った時も、クリスティアン・ビエリがミランに移籍した時も問題はなかった。なのに、ロメル・ルカクが騒動になるとはね。それほどまでにインテルで特別な存在になっているとは思っていなかったよ。私にとっては驚きだな」

 これは暗に、ルカク一人に息巻くなよと牽制した発言なのだが、それでもメルカートの恨み節は後を引き続けている。インテルが伝統のあるクラブだからこそ、クラブの伝統を穢(けが)されたと感じているジュゼッペ・マロッタ(インテルCEO)の語気は荒い。

 「ルカクは過去だ。もうクラブでは誰も彼のことなど考えてはいない。だが、彼がジュゼッペ・メアッツァに来たら、5万人のティフォージが一斉にホイッスルを吹くという計画を聞いたことがある。来場者はチケット代を払って観戦していて、その現状を批判する権利を持っている。チームの応援が最も重要ではあるが、まあ気晴らしになるかもしれないね」

10月26日の最新試合、ELグループステージ第3節のスラビア・プラハ(チェコ)戦では1得点で2-0の勝利に貢献。これでELではエバートン、インテル時代から驚異の14戦連続ゴールとなった。ローマは勝ち点14の7位(4勝2分3敗)、インテルは同22の首位(7勝1分1敗)でセリエA第10節の直接対決を迎える

インテル、ユベントス、アタランタも絡んだ移籍劇

 この夏、ヨーロッパ移籍市場の話題はなんといってもサウジアラビア勢の大型補強に尽きるだろうが、カルチョメルカートを賑わせたのはなんといってもルカクを取り巻く去就騒動だろう。22-23シーズン、レンタル移籍でインテルに帰還したルカクは、ケガから復帰すると徐々に存在感を増して、主力として幾多の勝利に貢献する活躍を見せた。誰もがインテルとの相思相愛を疑わず、この夏にチェルシーから完全移籍するものとばかり思っていた。しかし、ルカク側が水面下でユベントスと交渉のテーブルに着いていたことが発覚すると、このミラノの蜜月は呆気ない幕切れを迎えた。

 だが、騒動はそれだけでは終わらない。インテルとユベントスは過去220試合を超える「イタリアダービー」のライバル関係にあり、さらにユベントスの未来を担うドゥシャン・ブラホビッチを売却した資金で獲得するという情報がリークされたことから、この取引にユベンティーノが猛反発。8月9日に行われたテストマッチが終わると、大勢のティフォージがピッチに雪崩込み、ルカクの移籍に実力行使で待ったをかけた。

22-23コッパ・イタリア準決勝第1レグのユベントス対インテルで、今夏に”ビアンコネロ”(白黒)から”ネッラズーリ”(黒青)のシャツに袖を通したファン・クアドラードと一触即発の事態に陥りかけるルカク

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イタリアインテルジョゼ・モウリーニョセリエAローマロメル・ルカク文化

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如月 たくみ

2004年から続くASローマ情報サイト『ASローマ速報』管理人で、2022年にローマ来日に合わせて設立された公認ファンクラブ「ROMA CLUB TOKYO」の会長を務める。現在はJリーグ入りを目指すサッカークラブ南葛SCで広報、運営として働いている。自著にトッティのラストシーズンを綴ったkindle電子書籍『ローマ速報オフライン』がある。【WEB】ASローマ速報〜ROMANISMO | 2004年からローマの魅力を伝えるロマニスタサイト(asromasokuhou.com) 【Twitter】如月【ASローマ速報⚡ROMANISMO official】(@roma_sokuhou)

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