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佐々木雅士と田中隼人。柏の再浮上に貢献した2人の若き守備者の台頭

2022.08.24

柏レイソルの躍動は衰える気配を見せない。シーズンも4分の3を消化しようという段階で、5位という好順位をキープ。“降格候補”の意地がJ1のステージで確かな輝きを放っている。ただ、もちろんここまでのシーズンが常に順風満帆に進んできたわけではない。とりわけ後半戦は3連敗スタートと、一気に下降線をたどってもおかしくない状況の中で、台頭した若き守備者たちの存在は見逃せない。佐々木雅士と田中隼人。アカデミー育ちの2人は、どのような形でチームの再浮上に貢献したのか。おなじみの鈴木潤にその経緯を記してもらおう。

緊急事態で台頭した2人の守備者

 開幕前の“降格候補”という低評価を覆し、第26節を終えて暫定ながら柏は5位につけている。成績が上がらずともブレずに継続してきたことによる戦術的な積み上げ。マテウス・サヴィオ、高橋祐治、戸嶋祥郎といったケガによる長期離脱で、過去2シーズンは戦力になりきれなかった選手たちの完全復活。そして新戦力のフィットなど、躍進の要因はいくつも考えられる。その要因の1つに挙げられるのが若手選手たちの台頭である。

 開幕からスタメンに名を連ね、若きエースとしての地位を確立したばかりか、7月のEAFF E-1サッカー選手権では日本代表に選出された細谷真大を筆頭に、今年はプロ1〜3年目の活躍が際立つ。筑波大から加入した森海渡はリーグ戦で4得点、天皇杯で1得点と、すでに公式戦で多くの得点を重ね、U-18から昇格したルーキーの升掛友護はYBCルヴァンカップのグループステージで得点王争いを演じた。升掛と同期の真家英嵩も初出場初スタメンでいきなり得点を決める衝撃のデビューを飾っている。こうした若手アタッカーたちの躍動感あふれるプレーは、間違いなく序盤戦のチームを勢いづかせた。

 柏は今季から若手中心の編成に切り替えた発展途上のチームである。それゆえに好不調の波も大きく、リーグの折り返しである第18節・横浜F・マリノス戦からは3連敗を喫し、勢いのあった前半戦とは対照的に後半戦は最悪のスタートを切った。しかもそのタイミングで、キム・スンギュがサウジアラビアのアル・シャバブへ移籍。追い打ちをかけるように第23節・ヴィッセル神戸戦、第24節・京都サンガF.C.戦と古賀太陽が2試合連続で欠場した。守備を重んじる柏にとって、韓国代表にしてチームの絶対的守護神だったキム・スンギュの移籍と、ゲームキャプテンで守備の柱である古賀の欠場は、本来ならば緊急事態だと言っていい。後半戦の3連敗スタート、守護神の移籍、キャプテンの不在……。これらが原因となって、一気に順位が下降してもおかしくはなかった。

 だが柏は踏みとどまった。第21節のサガン鳥栖戦で連敗を食い止め、そこから4連勝を記録してV字回復を果たす。しかもその4連勝では失点はわずかに1と、むしろ強固な守備が際立っていた。

J1第21節、サガン鳥栖戦のハイライト動画

 この緊急事態で出色の働きを見せたのが佐々木雅士と田中隼人である。前半戦の躍進が細谷、森などアカデミー出身のアタッカーによってもたらされたものならば、後半戦のV字回復では、キム・スンギュの後任として正GKの座に就いた佐々木、左利きの大型CBの田中、2人の守備陣が輝きを放った。

新守護神・佐々木雅士が掴んだ確かな手応え

 プロ2年目の佐々木は、アカデミー時代から将来を有望視されており、“中村航輔以来の逸材”として「いずれはトップチームのゴールマウスを守る」と、かねてから育成年代に精通した識者たちの評価は高かった。実際に、ルーキーイヤーの昨年の時点でリーグ戦3試合、ルヴァンカップ5試合、天皇杯1試合と実戦経験を重ねており、キム・スンギュに次ぐ二番手の立ち位置を確保していた。

 ピッチ外のあどけない笑顔とは対照的に、佐々木はサッカーに関しては20歳とは思えない達観した視点を持ち、客観的に自分のプレーを分析して課題を見つけ出しては、自身の成長につなげることのできる選手だ。

 今季、佐々木のターニングポイントになった試合が第18節の横浜FM戦だった。AFC U-23アジアカップのウズベキスタン遠征から戻った佐々木は、リーグ折り返しの試合で柏のゴールマウスを守った。重要な上位直接対決でありながら、柏は横浜FMの圧力に屈し、0-4という大敗に終わる。後日、佐々木は井上敬太GKコーチとともに横浜FM戦を振り返り、自分はどうすべきだったかをコーチの助言をもとに思考を巡らしていた。そこで辿り着いた答えがコーチングの改善だった。

J1第18節、横浜FM戦のハイライト動画

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佐々木雅士柏レイソル田中隼人

Profile

鈴木 潤

2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。