「アーセナル沼へようこそ」 アーセナル超入門
※『フットボリスタ第87号』より掲載
2021年8月31日、プレミアリーグ夏の移籍最終日、一人のサムライがアーセナルに入団した。彼の名は冨安健洋。知る人ぞ知る、知らない人はまったく知らなかった日本代表CBである。しかしわずか3試合で魅せたパッションあふれる献身的なプレーに、「どこのアジア人?」と懐疑的だったローカルサポもゾッコンLOVE。今や至るところでチャントが歌われ、スパーズとのライバル対決、ノースロンドンダービーではファンが選ぶMoMまで獲得。ローカルのみならず全世界グーナー(アーセナルサポの総称)の絶対的信頼を勝ち取った。
日本でも当然このニュースは拡散され、これを機に「アーセナルとやらを見てみようか……」と思われた方もわんさかいらっしゃるに違いない。そこで、そんなみなさんをアーセナルという果てしない沼に引きずり込むべく、否、冨安選手を応援するきっかけとなるべく、現地ノースロンドン在住アーセナル出家信者のわたくし猿が、アーセナルの魅力を余すことなく文字数の許す限り紹介してみたいと思う。ぜひ参考にしていただければ幸いである。
【アーセナルとは】
アーセナルはイングランド北ロンドンのイズリントン地区に本部を置く、「自由・平等・平和」を基本理念として掲げる、世界最高峰のフットボールリーグ、イングランド・プレミアリーグに所属する友愛団体である。
創設は1886年と130年以上の歴史があり、これまでの国内タイトルはリーグ優勝13回(うちプレミアリーグは3回)、最古のカップ戦であるFAカップ14回、リーグカップ2回、コミュニティシールド16回、そして国際タイトルもUEFAカップウィナーズカップ1回と数々のタイトルを獲得している、嘘偽りのない名門中の名門カルト教団だ。
【教団名の由来】
教団名である「Arsenal」とは「兵器庫」もしくは、軍隊直属の軍需工場である「工廠」の意味。これはもともとアーセナルが軍需工場の労働者のチームとして創設されたためで、アーセナルのクレストの大砲マークもその名残である。

教団名は何度か改変が行われている。当初の名前は「ダイアル・スクエア」。その後王立(ロイヤル)の兵器工場だったこともあり「ロイヤル・アーセナル」へ。そして1891年のプロ化に伴い、そのエリア名だったウーリッジを冠につけ「ウーリッジ・アーセナル」へと名称を変更したが、1913年ハイベリーに移転したのを機に、その翌年、現在の「アーセナル」となった。

またアーセナルは「The Arsenal」と、チーム名に「The」の冠がつくプレミア唯一の教団である。これは「Arsenal」というワード自体が「兵器庫」や「兵器工場」という一般的な意味を持つため、教団名を特定するために「The」を付けたというのが通説。よって呼び方も「ジ・アルフィー」同様「The(ジ)アーセナル」となる。冨安選手にはぜひ「Welcome to“ The(ジ)” Arsenal !」と呼びかけてほしい。
【教団と信者の愛称】
教団の愛称は「Gunners(ガナーズ)」、信者は「Gooner(グーナー)」と呼ばれる。Gunnersの由来はもちろん大砲インスパイア系。Goonerに関しても一見すると「大砲由来」と思われがちだが、実は諸説あり、その一つが1950年代にBBCで放送されていたラジオのコメディ番組『The Goon Show』説。
このラジオが実にふざけた、どうしようもなくウンコみたいな番組だったため、お隣のスパーズサポが「アーセナルサポはGoonな奴ら」つまり「クソみたいなふざけた奴ら」と揶揄する意味で「Goon-er」と言い出したらしい。文字面的にも「Gunners」と似ているため、ダブルミーニング的な意味合いもあったのかもしれない。
これを当のアーセナルサポが取り入れ、自ら名乗り出したのだ。イングランドのフットボールサポは、馬鹿にされた事実をあえて自虐的に取り込むことで自らの強みとする特徴がある。アーセナルサポがすんなり取り入れて名乗り出すのもさもありなんである。

ちなみにスパーズサポの愛称は「イーズ(Yids)」。これはスパーズのエリアにユダヤ人が多く住んでいたことから他サポに揶揄されていた侮蔑語だが、彼らもそれを逆手に取り自ら名乗り出した。日本では考えられないことかもしれないが、これがイングランドのフットボールカルチャーである。
【教団のモットー】
教団のモットーは「Victoria Concordia Crescit(ウィクトーリア・コンコルディアー・クレスキト)」、“勝利は調和の中から生まれる”というもので、『スクールウォーズ』でお馴染み「One for All, All for One」みたいなやつである。
よって、前半あまりにも不甲斐ない試合をしていると、監督がハーフタイム中に選手をぶん殴って気合いを入れるとか入れないとか。そのおかげで、後半から生まれ変わった試合が何度もあったとかなかったとか。それはさておき、芸術的パスサッカーの代名詞となったアーセナルのモットーが「調和から生まれる勝利」というのは、実にアーセナルを体現している言葉である。
【教団本部】
アーセナルの教団本部は、公式6万432人収容のエミレーツ・スタジアム。実際の名称は「アーセナル・スタジアム」だが、UAEのエミレーツ航空様が多額のお布施によるネーミングライツ取得により、この「エミレーツ」が通名となっている。オープンは2006年7月22日と比較的新しく、
イギリスでも有数のモダンな巨大スタジアムで、周辺には沢山の駅が点在。空港直結の地下鉄ピカデリーラインのアーセナル駅をはじめ、同線のホロウェイロード駅、フィンズベリーパーク駅、ビクトリアラインのハイベリー&イズリントン駅、さらには金融街のシティ直結のドレイトン・パーク駅など、非常に便利な住宅街のど真ん中にこのエミレーツは鎮座しており、試合のない日もマラソンコースになったり、スケボーパークになったりと、近隣住民の憩いの場となっている。ちなみにスタジアム併設のショップの名前は「Armory(アーモリー)」。造兵廠、つまり兵器工場の意味である。

【ノースロンドンダービー】
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Profile
さる☆グーナー
ノースロンドン在住、アーセナルのせいで帰国できなくなった非国民。アーセナル出家信者。ダイエットにも役立つかもしれない8割妄想2割ガセのエアブログほぼ毎日更新中『Arsenal 猿のプレミアライフ』♪底辺ユーチューバーもやってるよ!『Arsenalさるチャンネル』。
