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世紀末に現れた救世主。冨安健洋という夢

2021.10.26

9月11日のデビュー戦からチームは同月3連勝、10月も直近の第9節アストンビラ戦(3-1)まで1勝2分とプレミアリーグ負けなし。文字通りアーセナルの救世主となったのが冨安健洋である。そんな22歳の日本人DFに対して地元サポーターが送るリスペクトの眼差し、称賛の嵐を、フットボリスタ第87号(10月12日発売)の「All or Nothing ~アーセナル沼へようこそ~」特集にも寄稿した、おなじみのノースロンドン在住“アーセナル教信者”さる☆グーナーさんが現場から伝えてくれた。

 「Super Super Tom, Super Tomiyasu!」

 シーズン最大の大一番であるノースロンドンダービー(9月26日/プレミアリーグ第6節)を、3-1という眩いばかりのスコアで快勝したアーセナル。試合後、笑顔の波をかき分け意気揚々とパブに到着すると、店の中から聴こえてきたのがこのチャント(応援歌)だった。

 実は、彼のチャントはこれだけにとどまらず、確認できているだけですでに3曲もある。冨安健洋の存在感の大きさをまざまざと実感させられるわけだが、これはプレミアリーグにおいては衝撃的な出来事でもある。フットボール選手が自身のチャントをゲットするというのは並大抵のことではない。長年プレーしていてもいまだ自身の曲を持たない選手が多数いる中で、デビューわずか3戦目にして立て続けに数曲ノミネートというのは常軌を逸していると言っても決して過言ではない。

 それもこれも、ライバルであるトッテナムとの一戦で右サイドを全面封鎖し、あの世界のソン・フンミンさえもUターンさせたポリスマン冨安に対する最大の賛辞であると言えよう。そして当然それは、クラブの一員としてサポーターに認められた証でもある。

スパーズには足を向けて寝られない

 世間的にはこのトッテナムとのダービーで一躍脚光を浴びた冨安だが、“冨安伝説”はすでにデビュー戦から始まっていた。

 アーセナル合流後、準備期間実質わずか1日でプレミア第4節ノリッチ戦(9月11日/○1-0)に先発出場。代表戦の疲れもあり62分で途中交代したものの、空中戦での競り合いで8戦7勝とアーセナルの長年の課題であった高さで圧倒する。さらにプレス、インターセプトでも爪痕を残し、スタンドはスタンディングオベーション。万雷の拍手を受けながらピッチを後にした。

 初のアウェイゲームとなる第5節バーンリー戦(9月18日/○0-1)では、劣悪なピッチと疲労で足をつりながらも90分間最後まで立ち続け、ボールタッチ数はチーム最多の79をマーク。さらに特筆すべきは対人スコアだ。デュエル、空中戦ともに勝率100%と無敵の強さで、クセの強い古豪を完全シャットアウト。もはやチームになくてはならない存在となった冨安は、続くノースロンドンダービーのスタメンにも息を吸うように名を連ね、試合で一番輝いた選手に贈られるMoM(マン・オブ・ザ・マッチ)にまで選出された。

 加えて、デビューわずか3戦にして51%という過半数を上回る得票率で9月のクラブ月間MVPを獲得するなど、新人とは思えぬ記録を立て続けに樹立。激戦区と言われるアーセナルの右SBに早くも「絶対的スタメン」として定着し、サポーターのみならず、監督の信頼さえも自らの実力でつかみ取った。

 当然、現地の評判は上々だ。エミレーツ・スタジアムの僕の席周辺からも試合中ひっきりなしに「トミー!!」という歓声やチャントが送られているし、MoMの受賞にも以下のようなコメントが多数寄せられている。

……

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アーセナルプレミアリーグ冨安健洋

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さる☆グーナー

ノースロンドン在住、アーセナルのせいで帰国できなくなった非国民。アーセナル出家信者。ダイエットにも役立つかもしれない8割妄想2割ガセのエアブログほぼ毎日更新中『Arsenal 猿のプレミアライフ』♪底辺ユーチューバーもやってるよ!『Arsenalさるチャンネル』。

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