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国内リーグが公開処刑の場だった過去も…サッカーで見るアフガニスタン

2021.10.18

2021年8月、国土の大部分を制圧したイスラム主義組織タリバンが再び政権を掌握することとなったアフガニスタン。国民生活に多大なる危機が訪れていることが報じられているが、当然のことながらスポーツ界にも暗い影を落としている。その動向が世界的課題であるアフガニスタンについて、過去のタリバン政権下において「数少ない許されたスポーツ」であったサッカー史の観点から紐解く。

 中央アジアや中東に特徴的な「~スタン」という国や地域はペルシア語由来で「~が多い土地」を意味する。カザフスタンであれば「カザフ人の多い土地」、ロシア連邦内のタタルスタン共和国であれば「タタール人の多い土地」といった具合にその地域の多数派である民族名が前に付けられる場合が多い。このように民族の名称を強調するのは、他民族からの侵略の脅威にさらされ続けてきた歴史ゆえかもしれない。

 現在、アフガニスタンほどその国名が重く響く国はないだろう。今年8月にかつて恐怖政治を敷いていた武装勢力タリバンが再び政権を奪取し、「テロとの戦い」のために20年に渡って駐留していたアメリカ軍が「軍事作戦の終了」を宣言し撤退。イスラム原理主義によるタリバンの厳しい統制を恐れる市民が空港や国境沿いに殺到し、市内では過激派組織の犯行とみられる爆破テロが頻発するなど国内は混乱を極めている。当然同国のサッカー界もその影響は免れず、特に女子サッカー選手は自身の命が危険にさらされるほどの緊張状態にある。

世界から孤立していなかった…この夏までは

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アフガニスタン文化

Profile

篠崎 直也

1976年、新潟県生まれ。大阪大学大学院でロシア芸術論を専攻し、現在は大阪大学、同志社大学で教鞭を執る。4年過ごした第2の故郷サンクトペテルブルクでゼニトの優勝を目にし辺境のサッカーの虜に。以後ロシア、ウクライナを中心に執筆・翻訳を手がけている。

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