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堅守速攻の先へ――ベガルタ仙台と手倉森監督が挑み続ける「高い壁」

2021.08.24

手倉森監督が作った「堅守速攻」というベースの上に、渡邉監督や木山監督がプラスアルファを上乗せする挑戦を続けてきたベガルタ仙台。今、再びバトンを受けた手倉森監督は、「その先」の壁を越えようともがき苦しんでいる。それを越えた先に悲願のJ1残留があるのかもしれない。

 8季ぶりに手倉森誠監督が就任し、チームの立て直しを図ったベガルタ仙台。しかし序盤戦は大量失点の試合が続き、一時はリーグ戦6連敗を喫した。その後、手倉森監督らしく堅守速攻のスタイルが徐々に確立され、5月頃にはJ2降格圏脱出も見えかけていた。ところがこの夏直面したのは決定力不足という課題。引き分けで勝ち点1は取れるが、3が取れないもどかしいチーム状況が続く。福森直也、富樫敬真といった夏の補強を経て、降格圏脱出は果たして実現できるのか。

手倉森→渡邉→木山、そして再びバトンは手倉森へ

 手倉森誠監督は2004年にコーチとしてベガルタ仙台入りし、2008年に監督就任。2009年のJ2リーグで優勝し、J1昇格を達成した。2010年は何とかJ1に残留したが、2011年は東日本大震災の大きな被害を受けた中「希望の光になる」という監督の発したメッセージの下、チームは結束。堅守速攻を武器にJ1リーグ4位となった。さらに2012年にはFW赤嶺真吾(現・FC琉球)とこの年加入したFWウィルソンが共に二桁ゴールを達成し、攻撃力が強化され、DF上本大海の加入で守備もより強くなった。かくしてサンフレッチェ広島と優勝争いを演じ、J1リーグ2位へとチームを躍進させ、2013年には、監督就任時に「5年でACLに出場する」と語った目標を現実のものにした。こうした実績を受け、2014年からは五輪代表監督に就任。2018年まではA代表のコーチも務めた。そして2019年から2020年までV・ファーレン長崎で監督を務めていたが、悲願のJ1復帰は達成できず、昨年末で監督退任となっていた。

 手倉森監督退任後の仙台は、2014年にオーストラリア国籍のアーノルド監督が就任したが、公式戦1勝もできず4月に退任し、手倉森監督の下でもコーチを務めていた渡邉晋監督(現・レノファ山口監督)が就任する。渡邉監督は当初は「時計の針を戻すことが必要」と手倉森監督のスタイル堅守速攻に舵を切ったが、徐々にポジショナルプレーを採り入れた新たなスタイルを志向し、2017年にはJリーグYBCルヴァンカップベスト4、2018年は天皇杯準優勝という成果も見せた。しかし2019年にはJ1残留争いに巻き込まれ、再び堅守速攻スタイルに戻し、J1残留は決めたものの渡邉監督はここで退任する。

2018シーズンの天皇杯準決勝、モンテディオ山形戦のハイライト動画。 渡邉監督の下で“みちのくダービー”を制し、 クラブ史上初の決勝進出を果たした

 昨年は前年までモンテディオ山形を指揮していた木山隆之監督が就任し、前からボールを積極的に奪いに行き、ポゼッションも高めるスタイルを構築しようとしたが、コロナ禍の影響で多くの負傷者が出たこともあり、大量失点での敗戦が増え、ホームでの勝利は0。J1リーグは17位。降格のないシーズンだったが本来であればJ2降格となる順位で終え、木山監督は1年でチームを去った。加えてクラブの債務超過や、不祥事による選手の契約解除も起こり、次々と暗い話題がクラブを覆うどん底状態だった。

 この状況下でクラブ再建を任され、昨年12月に就任したベガルタ仙台・市民後援会前理事長の佐々木知廣代表取締役社長は、手倉森監督の長崎監督退任が決まった直後、仙台監督就任を打診した。仙台をよく知り、震災後J1でチームを躍進させた手倉森監督にチーム再建を託すことになったのは、自然な流れだったと言えるだろう。

6連敗のどん底スタート。そして「鍛え上げる13連戦」

 しかし、手倉森監督をもってしても、昨季まったく勝てずに自信喪失した選手たちをまとめ上げるのは簡単な話ではなかった。……

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ベガルタ仙台戦術手倉森誠文化

Profile

小林 健志

1976年3月8日生まれ。静岡県静岡市清水区出身。2006年より宮城県仙台市を拠点にフリーライターとしてサッカーの取材を始め、J1ベガルタ仙台、J3福島ユナイテッドFCといったJリーグクラブの取材の他、少年から高校までの東北の育成年代、またアマチュアや女子サッカーなど幅広いカテゴリーで取材を行っている。『サッカーダイジェスト』、『サッカークリニック』、『河北スポーツマガジンStandard宮城』、『岩手スポーツマガジンStandard』、『青森ゴール』などの雑誌や、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』、Jリーグ公式サイト(J3福島担当)、『ゲキサカ』などWeb媒体に寄稿。2017年聖和学園高男子サッカー部加見成司監督著書『聖和の流儀』(カンゼン)の構成も担当。ライター業とともに、2012年より仙台市内の私立高校で非常勤講師として理科(生物)の授業も担当。