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勝てるのは勤勉なユーベ、でもイタリア人は皆どこかでマラドーナやカッサーノを欲している

2021.07.16

“バッドボーイ”は消えてゆくのか。現代サッカーの「優等生」論について:イタリア編

ピッチ上での愚行に対しては仕方ないとして、SNSを含むピッチ外での言動でも批判されるネイマールを見ていてふと思う。最近は“愛すべき悪童”ポジションのスター選手がめっきり減ったなと。かつては私生活で多少ハメを外したって、プレーで結果を出せばそれでOKだったフットボーラーだが、現代において選手は「商品」となり、そして品行方正を求められるようになった。ビジネス化の影響、社会全体の変化……良いアスリートとは良い人間である、と考えられるようになった背景には何があるのか。叩かれて当然だと思う反面、その風当たりの強さに昔は面白かったなと思ったりもする今日この頃。主要国それぞれの“バッドボーイ”をめぐる変化について、そんな時代を懐かしみながら各国の書き手に綴ってもらった特集のイタリア編。

※『フットボリスタ第84号』より掲載。

 「ここすげぇんだよ。『オレは○○だ』って言ったら、おまわりが交通違反のキップを切らないんだぜ。オレは北の出身なんだけど、こんなの故郷じゃ絶対ありえねぇ」

 何年も前のことになるが、あるイタリア南部のサッカークラブの取材の帰りに、そこの所属選手に練習場から駅まで送ってもらったことがある。その車中で、ふと彼がつぶやいた。名前は伏せておくが、活躍して地元では人気のあった選手の一人だ。

 この言葉で、多くを理解できた気がした。……

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アントニオ・カッサーノセリエAディエゴ・マラドーナロナウジーニョ

Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。

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