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「ローマの危機に俺が就任を断るか?」デ・ロッシの流儀、モウリーニョの後を受けた闘将が“ハゲタカのように”3連勝

2024.02.10

116日の監督交代後33勝(8得点2失点)。9位から5位まで順位を上げたローマが本日210日のセリエA24節、ホームで首位インテルと激突する(日本時間26時キックオフ)。モウリーニョ解任とデ・ロッシ帰還の衝撃、そして誇り高きバンディエラの下で息を吹き返したチームの変化とロマニスタの狂熱を、『ASローマ速報』の管理人、如月たくみ氏に伝えてもらった。

 2019年5月26日、世界中のロマニスタたちが、巡礼者のようにバチカンを目指していた。正確には、バチカン市国の傍を流れるテベレ川を4キロほど北に遡上したところに位置するASローマの総本山、スタディオ・オリンピコを目指していたのではあるが。

 この日、彼らの信仰の対象であるバンディエラ、ダニエレ・デ・ロッシが18年過ごしたクラブを去るとあって、カピターノを一目見ようとティフォージがスタジアムの周りに集まり、キックオフに向けて徐々にその熱狂は高まっていった。その頃、ロッカールームで今夜の主役であるデ・ロッシはチームメイトの前で気炎を吐いていた。

 「“Per chi ho corso, per chi ho lottato, per chi son morto”ROMA ROMA ROMA!」(誰のために戦い、誰のために走り、誰のために死んだのか? ローマ、ローマ、ローマだ!)

 あれから4年8カ月を経て、闘将はローマに戻ってきた。それも成績不振で解任されたジョゼ・モウリーニョの後任というタフなミッションのために。

“新しい象徴”との別れは突然に

 今もなお紀元前の建築物が威容を誇る永遠の都の名を冠したクラブ、それがASローマだ。ぼくたちはローマがイタリアの首都のクラブであることに誇りを持ち、その街から現れた不世出の天才、フランチェスコ・トッティに誇りを持ち、そのトッティが2004年当時、銀河系(ガラクティコ)軍団と称されたレアル・マドリーのオファーを断った美しいエピソードに誇りを持ち、トッティと一緒にイタリア代表として2006年のW杯を勝ち取ったダニエレ・デ・ロッシに誇りを持っている。そのデ・ロッシがトッティの引退後にキャプテンを引き継ぎ、ピッチの内外でチームを鼓舞する姿にも誇りを持っている。

 ローマが最後にスクデットを獲得したのは今から23年前の2000-01シーズン。それ以降、国際的なタイトルとも無縁だったこのクラブに、突然モウリーニョ監督がやってきた衝撃をぼくは忘れることができない。マンチェスター・シティでもなく、アル・ナスルでもない。スター選手も、お金も、タイトルもない、あるのはロマニスタたちの信仰に似た狂熱だけという実に唯心的なクラブに何かの間違いで来てしまったのだ。本当にそう思った。

 「私たちは小さなヒュンダイ車に4人で乗ってやってきた」と2021年7月の就任会見で話したポルトガル人監督が、そのシーズンの終わりにローマをUEFAヨーロッパカンファレンスリーグ制覇に導くのだから、彼がすぐにこのクラブの新しい象徴となったのもうなずける。

 しかし、モウリーニョ監督とローマとの蜜月はあっさりと終焉を迎えた。今年に入り、コッパ・イタリアの初戦(ラウンド16)でセリエBのクレモネーゼには辛くも勝利したものの、次の準々決勝でラツィオとの“デルビー・ディ・ローマ”に敗れると、持ち直すことができないままカンピオナートではミランに3-1の完敗を喫することになる(前節アタランタ戦で自身にレッドカードが出ていたためスタンドから観戦していた)。

 こうして、彼との別れが近いことは誰の目にも明らかだったが、それでも敗戦から2日後の1月16日の突然の解任に心の準備ができていたロマニスタはいなかった。ましてやその日のうちにデ・ロッシが監督として戻ってくることなど誰が予想できたであろうか。

……

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Profile

如月 たくみ

2004年から続くASローマ情報サイト『ASローマ速報』管理人で、2022年にローマ来日に合わせて設立された公認ファンクラブ「ROMA CLUB TOKYO」の会長を務める。現在はJリーグ入りを目指すサッカークラブ南葛SCで広報、運営として働いている。自著にトッティのラストシーズンを綴ったkindle電子書籍『ローマ速報オフライン』がある。【WEB】ASローマ速報〜ROMANISMO | 2004年からローマの魅力を伝えるロマニスタサイト(asromasokuhou.com) 【Twitter】如月【ASローマ速報⚡ROMANISMO official】(@roma_sokuhou)

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