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【川島永嗣インタビュー前編】3番手から正GKへ「その犠牲心がチームに団結力をもたらす」

2021.02.03

第3GKという立場で迎えたストラスブール3年目。川島永嗣は11月22日のリーグ1第11節から先発に復帰すると、1月24日時点で11戦連続出場。その間、19位(2勝8敗)に低迷していたチームは年明けの無失点3連勝を含む5勝3分3敗で15位まで浮上し、“新守護神”が復調の立役者となっている。これまで何度も逆境をはねのけてきた37歳は今、どのような心境で「自分の挑戦」を続けているのだろうか。1月中旬にZoomで収録したインタビューを前後編でお届けする。

不調の20-21序盤戦

「僕らは過去に縛られていた部分があった」

――20-21シーズンはリーグ1最初の2試合に先発後、ベンチで約2カ月半を過ごし、11月下旬から再びゴールを任されています。今季ここまでを振り返っていただきたいのですが、まず昨年8月23日の開幕時は、第1GKのマッツ・セレスが左足アキレス腱を断裂する重傷で離脱し、2番手のバングル・カマラも新型コロナウイルスに罹患したという状況だったのですよね?

 「カマラはキャンプの時にコロナ陽性となり、2週間の隔離後、戻ってきたのは開幕の1週間前くらいでした。そうなるとプレシーズンマッチに参加できず、最後の練習試合も僕が出場していたので、そのまま開幕戦は僕で行ったという感じでしたね」

――その後、第3節からカマラが出場することになりましたが、ティエリ・ロレイ監督からはなんと?

 「何も言われていないです。普通にメンバー発表の時に彼の名前が呼ばれて。ただ僕自身、結果を残せなかったら出場し続けるのは難しいだろうなと感じていました。2連敗スタート(対ロリアン●3-1、対ニース●0-2)と自分の出来は別だったとしても、チームが勝てなければ(序列が下の)GKをメンバーに残す必要はそれほどないですし。監督と話はしていないですけど、結果を残せなかった自分が悪いのかなと思っていました」

――そのカマラも以降8試合で2勝6敗と苦戦しました。彼は自信をなくしていたのでしょうか? もっともチーム全体が良くなかったのですが……。

 「チーム全体も開幕から調子が上がらず、なかなか波に乗れない状態がずっと続いていましたね」

――新加入のアビブ・ディアロや3年目のリュドビク・アジョルクなど、点を取れる選手もいますし、メンバーは決して悪くないですよね。

 「メンバーはほとんど変わっていないんです。監督も5年目ですし。実はシーズンの最初に、今までやっていなかったことにトライしていたんです。簡単に言うと、もっと攻撃的にプレーするということなのですが、それがうまくいかなくて、元の自分たちのベースのレベルにさえも戻れないままズルズルいっていました」

――一昨シーズンはリーグカップで優勝も果たし、安定して10位前後を見込める力のあるチームという印象だっただけに意外な停滞でした。

 「シーズンって毎年違うし、同じメンバーだから同じ結果を残せるかといったらそれも違う話で。メンバーが変わらないことによる保証というのはなくて、常にアップデートしていかなければならない。周りもどんどん変わるので、それに対応していかないといけない。なので逆に、僕らはそこにこだわり過ぎていた部分もあるのかなと。『今までの自分たちにはできたのに、なぜできないのか?』って、過去に縛られていた部分はあったと思います」

――同じメンバーで熟成することで成功するケースもあれば、いろいろということですね。

 「そうですね。チームは“生き物”じゃないですが、明確な答えというのはないし、状況によって対応していかなければならないというのを、今季あらためて感じましたね」

分岐点は11月の1分1

「自分たちのやるべきことをやれば…」

――迎えた11月22日の第11節モンペリエ戦(●4-3)から、GKが川島選手に交代した理由というのは?……

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インタビューストラスブール川島永嗣

Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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