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バイエルンSDが証言。補強のカギはパーソナリティ・スカウティング

2020.10.22

 移籍市場が閉まり、メンバー構成も一段落したバイエルン。10月12日のエリック・マキシム・チュポ・モティングとブナ・サールの新加入会見では、スポーツディレクターのハサン・サリハミジッチが今季の選手獲得の真意を説明した。ハンジ・フリック監督の意見を尊重し、意見が一致した上での獲得だったことを強調している。

 「チームは多くの要素から成り立っている」と話すサリハミジッチSDは、補強の際にサッカー選手としての能力はもちろん、パーソナリティの面を重要視していることを明かした。

 “役割の理解”と“チームワーク”

 昨季にトリプル(3冠)を達成し、フリック監督やトーマス・ミュラーといった主力の契約が切れる2023年が1つのサイクルの目処と見られるバイエルン。すでに主軸は定まっており、ドイツ代表で他のメンバーも良く知るレロイ・サネを除いて、新加入選手が簡単に定位置を確保できるような状況ではない。

 バイエルンの補強は、即戦力、(長期的な)将来性を見込んだ獲得、バックアップといった3つのカテゴリーに分かれていることが見て取れる。今季のサネや昨季のフランス代表DFルカ・エルナンデスのように年齢的に若く、同時に即戦力と見込んだ選手には、堅実経営のバイエルンも数十億円単位の移籍金を支払うことを厭わない。

 将来性を見込んで獲得した10代の選手は、アルフォンソ・デイビスのようにU-23などの落ち着いた環境で生活や環境に適応させた上で、時間をかけてデビューのタイミングをうかがうことができる。

 難しいのはバックアップの選手たちだ。ここがスカウティングの腕の見せどころとなる。そして、その際の決定的な項目について、サリハミジッチSDはこう説明する。

 「“チーム内での役割の理解”と“チームワーク”が、サッカーの能力面の他にも持ち合わせていなければならないソフトスキルだ。我われは、獲得した選手たちが好ましいキャラクターを有しているか、自身の役割を理解しているか、そして優れたスピリットを持ち合わせているか、ということに、とても強い関心を寄せている」

監督が重要視する“性格”

 チーム内の雰囲気に気を配るフリック監督にとっては、チームマネジメントを潤滑に進めることが何よりも重要となる。

 サリハミジッチSDも、昨季の成功の要因として、選手間のパーソナリティと役割理解の面でそれぞれがうまく合致したことを上げており、「監督はこれらの点に非常に大きな価値を置いている。私たちは、この点で考えも一致している。だからこそ、優れたキャラクターを備え、チームに合った選手を獲得したのだ」と選手の獲得基準を説明した。

 サッカー選手をプレーヤーとしての能力面と社会性や性格といった人格面の2つの要素に分けるとすると、メンバーの中で15番目から22番目のバックアップのカテゴリーに入る選手には、能力面で一定水準を満たした上で、性格面がより重要視されるという。

 チュポ・モティングは、「監督との話し合いはとても良いものだった。僕の性格はチームにうまく合うだろうと言ってくれたし、バイエルンに来てくれればうれしい、ということを示唆してくれた」と、移籍交渉中のフリック監督との対話を振り返っている。

成功をもたらすストレスマネジメント

 チームが機能するためには、純粋にピッチ上の能力だけではなく、ピッチ内外での振る舞いや性格も評価の対象となる。

既存の選手や獲得選手のカテゴリー分けを行い、それぞれのカテゴリーに合ったパラメータと評価基準を設定することで、コーチングスタッフによるマネジメントも容易となる。

 各選手が自分自身の役割をあらかじめ明確に理解しておけばストレスが軽減され、選手個人、そしてチームも安定したパフォーマンスを発揮できるようになるのだ。


Photo: Getty Images

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サリハミジッチトーマス・ミュラーバイエルンレロイ・サネ移籍

Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。

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