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元J戦士ラモン・メネゼス、名門バスコで監督人生最大の挑戦

2020.08.12

 2003年に東京ヴェルディでプレーし、Jリーグデビュー戦で初ゴールを決めたのを皮切りに、1年間、ゲームメイカーとして活躍したラモン・メネゼス。その彼が今年、第2の人生で最大の挑戦をしている。リオデジャネイロ4大クラブの1つ、バスコダガマの監督に就任し、チームの再建に取り組み始めたのだ。

地道に経験を積み、監督に就任

 ラモンは現役時代、ドイツのレバークーゼンの他、ブラジル国内のクルゼイロ、バスコ、フルミネンセ、アトレチコ・ミネイロ、ボタフォゴといったビッグクラブでプレーし、行く先々で優勝に貢献。41歳となる2013年まで活躍を続けた。

 引退したその年からすぐに、当時ブラジル全国選手権2部だったジョインビーレで、アシスタントコーチとして指導者の道を歩み始めた。2015年からは国内各地5つの小規模クラブで監督としての経験を積み、ブラジルサッカー連盟による最高レベルの監督ライセンスも取得する。

 そして2018年末、バスコのアシスタントコーチに就任した。ラモンは選手時代、バスコで1998年リベルタドーレス杯を含む7つのタイトルに貢献。2002年はブラジル全国選手権年間MVPも獲得した、クラブの英雄だ。

 バスコに常駐するスタッフとして契約したため、1年3カ月で3人の監督が指揮を執る間、ラモンはチームを指導し続け、その3人目であるアベウ・ブラガが今年3月15日の敗戦を最後に解任された後も、クラブに残っていた。そして新型コロナウイルス感染拡大によるサッカー中断期間に入っていた3月30日、新監督に任命されたのだ。

「戦う姿勢」に変化が

 ラモンはパンデミックによってチームを指導できない間、2019年からのすべての試合をもう一度じっくり見直すとともに、スタッフや選手と密に連絡を取り合い、着々と準備を進めた。

 いざチーム練習が解禁された5月末の新型コロナ感染テストでは選手16人が陽性となり、隔離療法に入るというトラブルもあった。

 前途多難な状況で、監督として初めての大きな挑戦をスタートさせたが、迎えた再開後のリオ州選手権では、6月28日マカエー戦に3-1の勝利、7月1日マドゥレイラ戦に1-0の勝利。中断前の戦績によってグループリーグ突破はならなかったものの、サポーターに期待感を抱かせた。

 何より、ラモンが就任当初から繰り返してきた「戦う姿勢」に変化が見られたことが、サッカーコメンテーターたちにも好評だった。

 ラモンはこう語っていた。

 「バスコには伝統的な特徴がある。スピーディーにパスを回し、縦に攻め、ゴールを決める攻撃的なDNAだ。監督それぞれに考え方があるが、僕が考えるのはいかに攻撃し、得点するか。もちろん守備をおろそかにするわけじゃないが、守るための守備ではなく、攻撃に繋げるための守備をオーガナイズする」

 そして2試合を終えた後は、選手たちに勝利を感謝した。

 「選手たちが目指すサッカーを理解しつつあることが見て取れた。これからも地に足をつけて、フィジカル的にも、技術的、戦術的にももっと改善しなければね。選手たちもそれを分かっている」

自らの強みでチームを活性化

 バスコには経営悪化の問題もある。今年に入ってから選手への給料遅配が度重なり、肖像権使用料に至っては昨年8月から滞っている。そうした状況が選手のモチベーションに影響し、中断前の不振に繋がったという見方もある。

 問題は山積みだが、ラモンは自らの強みを駆使している。その1つが、アシスタントコーチとして指導した1年3カ月間で選手一人ひとりを熟知していることだ。そのため、中断前のスタメンだけでなく、昨年はレギュラーだったものの、今年に入って出場の機会に恵まれずにいた選手たちを、適材適所で復活させている。

選手たちの特徴を熟知しているのがラモン監督の強みだ(Photo: Rafael Ribeiro/Vasco.com.br)

 また、下部組織にも目を配ってきたことから、若手の起用にも積極的だ。

 「世代交代のために起用するわけじゃない。プロチームにも、起用すべき選手たちの順番待ちの列がある。その中でも、試合に出ることによって大きく伸びると思える選手を起用していくんだ」

 そうした方針がチームを活性化させ、選手たちの士気を高めている、とも言われている。

「日本はファンタスティック」

 ラモンはよく「その時、その時に学びながら進んでいる」と語り、現役時代に自分を指導してくれた監督や、アドバイスをくれる先輩たちの名前を挙げて感謝を語る。

 日本でのプレーは1年間だったとは言え、その日本に対しても、今でも感謝していると言う。

 「日本の文化はファンタスティックだよ。特にあの規律正しさ、そして、他の人を尊重する姿勢こそ日本の人たちの素晴らしさであり、僕が学んだことだ。日本はいつか、僕が戻りたいと思っている場所だよ」

かつて東京Vでもプレー。「日本の文化はファンタスティック」と語る(Photo: Kiyomi Fujiwara)

 開幕したブラジル全国選手権、バスコの初戦は8月13日だ。現在48歳。リーグ20チームの監督の平均年齢が50.15歳であることを見れば、中堅のようでもあるが、選手時代の長かったラモンは、監督としてはまだ若手とみなされている。

 そんな新監督の挑戦を、サポーターもメディアも、期待を込めて見守っている。


Photos: Kiyomi Fujiwara, Rafael Ribeiro/Vasco.com.br

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バスコダガマ

Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。