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フラメンゴがクラブを挙げて取り組む新型コロナウイルスへの挑戦

2020.04.30

 リオデジャネイロの強豪フラメンゴが、クラブの持つ様々なメリットを生かして、新型コロナウイルス感染拡大と戦っている。

 フラメンゴは昨年、南米最高峰を争うリベルタドーレス杯と、ブラジル全国選手権、リオ州選手権の3冠を達成。その顔ぶれも、フィリペ・ルイス(元アトレティコ・マドリー)、ラフィーニャ(元バイエルン)、ジエゴ(元ブレーメン)といったベテラン勢から、ガビゴウ、ブルーノ・エンリケら、ブラジル代表でプレーし始めた選手たちまで、代表レベルのスターがそろっている。

 人気、実力、それを支える資金力を兼ね備え、今季も絶好調のスタートを切った矢先のパンデミックであり、サッカー活動の中断だった。

社会的困窮者を様々な方法で支援

 まず、クラブはリオに無数に散在するスラムの人々に手を差し伸べた。ブラジル生物学研究所と組み、容器にフラメンゴのエンブレムがついたアルコールジェルを生産。20万個が完成し、食料品や衛生用品と合わせて各家庭に無償で届けているのだ。

スラム街の住民にアルコールジェルや生活必需品を無償配布するクラブスタッフ (Photos: Marcelo Cortes / Flamengo)

 食事にも事欠き、感染予防に欠かせない手洗い石鹸の購入も難しい人々への支援。地元の社会事業団体からは「新型コロナによって経済的打撃を受けた家庭を手助けできることはもちろん、そこに生きる人々に『自分たちは見捨てられた存在ではない』ということを感じさせてくれる」という声が聞かれる。

 また、個人事業主と小企業の救済にも乗り出した。これは個人、または年収18万レアル(約450万円)までの小企業であれば、フラメンゴのロゴを無料で使ってマスクを生産して販売してもいいという、自助努力をサポートするものだ。ブラジル国民の20〜25%がフラメンゴサポーターという数々の調査機関のデータもあり、人気は全国区だけに効果は大きい。

ロゴを無償提供して、個人事業主や小企業のマスク生産・販売を許可した(Photo: Flamengo)

 マスク生産の際のルールは、クラブの公式サイトに掲載された正式なロゴを使うこと。新型コロナ撲滅に貢献する目的もあるため、ロゴを使用できるのはマスクのみ。期間は今年8月末日までで、生産・販売はブラジル国内に限る。

 生産者がそのマスクの画像をクラブに送れば、より良いデザインのものをクラブ公式SNSに掲載するなど、取り組みを促進している。

選手がビデオ通話で感染者を激励

 心のケアを目指すのは「連帯の電話プロジェクト」。これは、新型コロナに感染し、闘病しているサポーターに、選手が『whatsapp』によるビデオ通話でエールを送るというものだ。

 その第一弾を担当したのはMFエベルトン・リベイロ。昨年のブラジル全国選手権で大会ベストイレブンに輝き、ファン投票でも1位に選ばれた選手が、集中治療室での治療を乗り越え、退院の日を迎えたサポーターと話をした。

 本人の気持ちに寄り添い、様子を聞き、気さくな様子で励ます。10分におよぶその会話で、サポーターは笑顔を取り戻した。

再開に向けクラブ本部のスタジアムを整備

 一方で、練習再開に向けての準備も続けている。新型コロナのテストキット600セットを購入したほか、トレーニングセンター内の動線を制限し、敷地内にある個室付きの宿舎を生かすことでロッカールームを使わずに行動できる方法を確立させたり、ドイツの例を参考にした、選手が密集しない練習方法を準備したりと、詳細なガイドラインが作られた。

 さらに、いつ再開されるにしても、当面は無観客試合になるであろうと想定。1試合にかかる経費を考えると、ホームスタジアムであるマラカナンの使用は難しい。さらに、マラカナンの駐車場には今、その広いスペースを生かして新型コロナ対応の400床の仮設病院が建設されている。

 そのため、1997年以降プロの試合では使われていなかった、クラブ本部のスタジアムを使う準備を進めている。現在は下部組織の試合のみに使われ、2014年W杯ではオランダが準備合宿に使用、2018年末にはU-19日本代表が練習試合をしたこともあるスタジアムだ。

フラメンゴのトレーニングセンター(Photo: Kiyomi Fujiwara)
クラブ本部に併設されたスタジアムはかつてU-19日本代表も訪問。リーグ戦再開後はここを本拠地として使用する予定だという (Photo: Kiyomi Fujiwara)

 すでに芝生の全面改修が終了しており、照明塔の設置と、人工芝のサブグラウンド建設も行う予定だ。

できることを次々に実行

 公式サイトやSNSでは、選手はもちろん、プロチームのフィジカルコーチや理学療法士、栄養士らも動画に登場し、自宅で過ごす上でのアドバイスをしている。

 ブラジルでは今、感染者数が急カーブで上昇中。リオを含むいくつかの州で、集中治療室や人工呼吸器、そして医療関係者の人手が不足している。そんな中、できることを次々と実行に移す。それが、このパンデミックにおけるフラメンゴの挑戦だ。

 クラブのコミュニケーション・マーケティング副部長を務めるグスタヴォ・オリヴェイラ氏は「新型コロナとの戦いは、ヘルスケア、責任感、そして連帯感が要求されるもの。フラメンゴはそのための社会的役割を果たすつもりだ」と語っている。


Photos: Kiyomi Fujiwara, Marcelo Cortes / Flamengo, Flamengo, Getty Images

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ジエゴフィリペ・ルイスフラメンゴ新型コロナウイルス

Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。