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5月18日からの練習再開は認められず…6月中旬のセリエA再開に暗雲

2020.04.28

 イタリアにおいて新型コロナウイルス感染症の拡大ペースが収まり、再開への検討が進められてきたセリエA。しかし経済活動再開のムードとは裏腹に、リーグ戦再開はおろか、各クラブの練習すら不透明な情勢になった。

FIGCのガイドラインは却下

 4月26日、イタリア政府のジュセッペ・コンテ首相は記者会見の中で、サッカーを含めたプロスポーツの練習を「5月18日から認める」と明言した。新型コロナウイルス感染症の爆発的感染が抑制されたことを受け、5月4日から実施される”第二段階”対策を示した首相令の内容を発表。

 スポーツについては同日からの個人活動を認めた上で、「スポーツ省と専門者委員会、またサッカー界の関係者はすでに練習再開を決めたが、現在中断されているサッカーのリーグ戦についても、再開の条件を見出せるよう検討を進めていく」と述べた。

 ところがその直後、そのスポーツ省のビンチェンツォ・スパダフォーラ大臣が国営放送『RAI』のインタビューで「5月18日が来た時点で、再開できる状況にあるかどうかを決めたい」などと、練習再開すら確定条項ではないという趣旨の発言をした。

 イタリアサッカー連盟(FIGC)からは感染防止のための運営ガイドラインが提出されていたが、それも「専門者委員会が十分でないと判断した。再検討を要する」と現時点で却下。

 さらにはサッカー選手に当初認められたという個人練習までも、首相令案の中では練習場は引き続き閉鎖。したがって市民ランナーと同様、「野外の公園などでなら外に出てトレーニングしてもいい」という許可に過ぎないことがわかった。

 一方で、2021年の東京五輪を見越した個人競技のアスリートは施設利用が認められ、非公開での練習が許可されている。

スポーツ大臣はサッカー再開阻止を画策か

 背景には、急激な活動の解禁で感染のリスクを高めたくないという思いが見え隠れする。『コリエレ・デッロ・スポルト』によれば、専門者委員会の医師はコンテ首相に対し、サッカーの再開を急がせず、個人競技と序列をつけるよう勧告をしていたという。

 しかしサッカー関係者は当惑を隠せなかった。ラツィオのイグリ・ターレTDは「市民がたくさんいる公園で走らせたらファンが押し寄せ、ソーシャルディスタンスも何もないだろう。練習場で選手を走らせた方が感染予防の点では10倍は安全なはず」と指摘し、「これは差別だ。大臣のやることは極端で、サッカーを再開させまいとしているのではないか」と批判した。

 スパダフォーラ大臣もこれに応戦し、「謀反を企てているなどと考えるのもバカバカしい。社会面でも経済面でも再開は重要だと知っているから動いている。意識調査では国民の大多数が反対し、医師も反対している。止める方がずっと簡単だ」と反論した。

 しかし、複数のメディアからは「与党の『5つ星運動』は反資本主義的な社会のダウンシフト(減速生活)を志向しており、クラブが恐れるセリエA衰退はポピュリストにとって望ましい」という声も上がっている。

 事実、スパダフォーラ大臣自身も、有料TVの放映権を定める法律の改定を口にした経緯がある。「FIGCは6月中旬の再開を考えているが、まだ先は長い。それまでに何が起こるか分からないのに再開の確約などできない」と語るスポーツ相の姿勢が、言葉通りに支持を得られるかどうか。情勢は混沌としてきた。


Photo: Getty Images

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神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。