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シュートを打たない鉄人プレーヤー、コナー・コーディーの数奇なキャリア

2020.09.16

 先日、英紙『The Guardian』のポッドキャストを聞いていると、ある選手の面白いスタッツが紹介されていた。過去2シーズン、プレミアリーグで全試合にフル出場しながらシュートを放たなかったフィールドプレーヤーがいるというのだ。その選手とは、ウォルバーハンプトンの守備陣の要にして、先日イングランド代表デビューも果たしたコナー・コーディー(27歳)である。

両親も驚いた代表招集

 にわかに信じがたい話なので、自分でもデータサイトを調べてみたが、確かにコーディーは2年前にウルブズとともにプレミアリーグに昇格して以降、全試合にフル出場しながら1本もシュートを放っていないのだ。もちろん、2-0で勝利した今季開幕戦のシェフィールド・ユナイテッド戦でもシュートを打たなかった。

 そんな彼が、今月8日に行われたネイションズリーグのデンマーク戦でイングランド代表デビューを飾った。若い頃の彼を知る者は「ようやく代表デビューか」と思ったに違いない。名門リバプールの下部組織で育った彼は、ユース世代ではイングランド期待の星だった。U-17代表ではキャプテンとして2010年のU-17欧州選手権を制し、2013年にはU-20ワールドカップでも主将を任された。

 しかし、ともにU-20W杯の舞台に立ったハリー・ケインやジョン・ストーンズがA代表へとステップアップを果たす中、リバプールのトップチームで2試合しか出場できなかったコーディーはその後、下部リーグでの生活を余儀なくされた。

 そして、気づけばユース代表時代の仲間は遠い存在になっていた。今回だって半ばあきらめていたはずだ。ハリー・マグワイアの辞退がなければ追加招集されることもなかっただろう。何より、彼を誰よりも応援する両親でさえ、呼ばれるなんて思っていなかったのだ。

 代表に選出されたコーディーは、記者会見でこんなエピソードを明かした。夫婦そろって両親に代表選出の報告をしに行った際、あまりにも予想外だったため、誤解されたというのだ。「報告がある」と伝えると、両親は妻のエイミーさんを見ながら「もしかして、また妊娠したの?」と言ったそうだ。

ヌーノ監督との出会いが転機に

 そんなコーディーのキャリアの転機は、ヌーノ・エスピリト・サント監督との出会いだった。27歳になるコーディーだが、実はCBとしてのキャリアは短い。若い頃は“次代のスティーブン・ジェラード”として期待された守備的MFだったのである。

 だが、2017年にウルブズの監督に就任したヌーノ監督によってCBにコンバートされた。しかも、その理由は“偶然”だったという。ヌーノ監督は昨季の会見でこう明かした。

 「練習中に選手が1人足りなかったので、コーディーに『ここ(DFライン)に入ってくれ』と言ったのさ」

 そのとき以来、コーディーはウルブズの3バックに欠かせない選手となり、ウルブズの選手としては実に30年ぶりにイングランド代表で先発出場を果たすことになったのだ。

クラブ記録の更新なるか

 英紙『The Times』も8月にコーディーの特集を組んでいた。コーディーは「ピッチ上の監督」と呼ばれるそうで、ヌーノ監督が試合中にテクニカルエリアでおとなしいのも“もう1人の監督”がチームをまとめているからだという。

 そのコーディーが次に目指すのは「プレミアリーグでの初シュート」や「代表での定位置」だけではない。現在、コーディーはウルブズで3年間リーグ戦に出場し続けている。2部リーグ時代の2017年9月に出場停止で欠場して以降、実に112試合連続でスタメン出場しているのだ。

 クラブ記録は1960~70年代のウルブズで活躍したGKフィル・パークスが1973年に打ち立てた127試合だ。ケガや出場停止さえなければ、年末には偉大な記録に追い付けるはずだ。

 そして、その頃には都市伝説が生まれていることだろう。ウルブズのキャプテンがシュートを放つ瞬間を見た者は幸せになれる……とか。というわけで今季は“やりすぎコーディー”に注目したい。


Photo: Getty Images

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ウォルバーハンプトンジョン・ストーンズスティーブン・ジェラードヌーノ・エスピリト・サントハリー・ケイン

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。