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会長選挙実施でルビアレス時代に終止符も、時代が変わる可能性は低い

2024.04.08

 4月6日にコパ・デルレイの決勝が行われ、アスレティック・ビルバオがマジョルカを下して(1-1、PK戦4-2)40年ぶりの優勝を飾ったのだが、その晴れ舞台にスペインサッカー連盟会長の姿はなかった。

 ご存じの通り、ルイス・ルビアレス前会長は強制キス事件で昨年9月に辞任、さらに汚職事件で4月3日に逮捕されたばかり。前会長の辞任で就任した臨時会長のペドロ・ローチャは、会長選挙出馬のために4月4日に辞任したばかり。よって、本来なら臨時の臨時の会長がVIP席の真ん中でフェリペ国王(コパ・デルレイは「国王杯」の意)に同伴しなければいけないのだが、あまりに汚れた連盟の代表が隣では国王のイメージまで汚れる、ということで、女性副首相が座っていた。さすがに表彰式では臨時の臨時の会長がトロフィーとメダルを渡していたが……。

立候補者は前会長の息のかかった人物

 そう、会長選挙が行われる。

 新会長就任は正式にルビアレスの時代に終止符を打つことになるのだが、本当に性加害(容疑)と汚職(容疑)の時代が終わるのかは疑問だ。というのも、最有力候補のペドロ・ローチャはルビアレスが指名した人物で、彼自身に汚職の容疑はかかっていないものの、彼が率いていた財政部門は、今回の汚職事件の主な舞台となっているからだ。

 連盟の自浄能力は限られている。

 新会長を選ぶ評議員たちは前会長の支持者たちで、「私は辞任しない!」と叫んだ前会長をスタンディングオベーションで讃えた人たちと同じである。なので、今回も前会長の息がかかったローチャを支持すると見られている。

 いや、選挙自体が成立しないかもしれない。なぜなら、立候補には21人の評議員の支持が必要なのだが、ローチャ以外の立候補者はこれを集めるのさえ容易ではないからだ。選挙は5月6日に予定されているが、立候補者が1人であれば信任投票だけが行われ、4月末にもローチャの新会長就任が決まる。

構造改革は事実上不可能か

 評議員を変えないと新会長のプロフィールは変わらない。実は、評議員にはルイス・エンリケ前スペイン代表監督や性加害スキャンダルで辞任したホルヘ・ビルダ前スペイン女子代表監督らの名前もあり、選出し直す時期に来ているのだが、選挙委員会は会長選選挙だけで禊を済まそうとしており、それを監督官庁もFIFAも黙認している。

 連盟会長の逮捕はルビアレスが初めてではない。前任者のアンヘル・マリア・ビジャールも汚職で逮捕されているから、二代連続である。連盟の上から下へお金が流れ、評議員たちが利害関係で結び付いており、その頂点に会長がいるという構造で、国旗を掲げてサッカー界を牛耳りながら私的な団体ゆえに自治権を持ち、監督官庁が積極的に介入できないという仕組みなら、いずれまた汚職が生まれるだろう。

 同じ構造と仕組みの親分格であるFIFAやUEFAにお金のスキャンダルが尽きないのだから、スペイン連盟だけクリーンであれ、というのは無理ということだ。


Photo: Getty Images

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アスレティック・ビルバオペドロ・ローチャマジョルカルイス・ルビアレス

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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