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レジェンドたちからのアドバイスで飛躍。ハーランドを上回るプレミア“今年最高”のストライカーとは

2023.04.21

 今季プレミアリーグの最強ストライカーは、文句なくマンチェスター・シティのノルウェー代表FWアーリング・ホーランドだろう。しかし「2023年に入ってプレミアリーグで最も得点に絡んでいるストライカー」となると話は別だ。

 ここまで32ゴールでプレミアリーグ得点ランクを独走しているホーランドは、今年に入ってから11ゴール2アシストで13得点に関与。得点ランクで2位につけるトッテナムのFWハリー・ケインは同期間に11得点に関わっている(10ゴール1アシスト)。

 そんな世界的プレーヤーを抑え、今年に入ってプレミアリーグで最も得点に関与しているストライカーこそ、アストンビラのイングランド代表FWオリー・ワトキンス(27歳)だ。2023年に入ってから14得点に関与(11ゴール3アシスト)しているワトキンスは、前述の2のようなエリートとは程遠い苦労人である。

 イングランドの4部クラブでキャリアをスタートさせたワトキンスは、8年前の2014-15シーズンには6部リーグに貸し出されている。しかしそこから着実にステップアップを果たし、3年前に当時2部のブレントフォードでゴールを量産してアストンビラに引き抜かれた。そして今季は、シーズン途中から就任したウナイ・エメリ監督の下で大暴れしている。

 先週末のニューカッスル戦でも積極的に仕掛けていき、その試合最多の6本のシュートを放って「2ゴール1アシスト」とチームの全得点に絡んで3-0の勝利に貢献。昨年10月までビラを率いていたスティーブン・ジェラード監督からは「考え過ぎる」傾向にあると指摘されたことがあったのだが、それと同じ選手とは思えないほどの積極性を見せている。

全得点に絡んだ第31節ニューカッスル戦のプレー集動画

パフォーマンスを支える“ライフコーチ”の存在

 自身の飛躍についてワトキンスは、「考え方が何より大事」と英紙『The Times』で説明している。エメリ監督から「今日は十分だ。もう明日にしろ」と止められるほど練習の虫だそうで、その磨いた技術をピッチ上で披露するために精神面も鍛えているのだ。

 ワトキンスはいろいろなことを相談できる“ライフコーチ”に話を聞いてもらい、試合前に「頭をクリアにする」という。そして、試合後には感想などを語り合う。勝った時だけでなく、負けた時も同じルーティンを維持するそうだ。勝負の世界において、勝ち続けることなどできない。人生がバラ色だけでないのは、ジェラードから学んだことだという。

ワトキンスと握手を交わすジェラード。無念の途中解任となってしまったが、その助言が飛躍の一助になったとワトキンスは振り返る

 「監督に言われて、その通りだと思った」とワトキンス。

 「うまくいかなった後でも、自分を厳しく責め過ぎてはいけない。崩壊しちゃうからね。僕はストライカーだから常に注目を浴びることになるし、チャンスを決めることも外すこともある。大事なのは常に次のプレーに備えていることなんだ」

 ビラのコーチを務めていたチェルシーのOB、ジョン・テリーの助言も忘れていないという。若くしてチェルシーの主将を任されたテリーはプレッシャーに悩まされた時期があったという。そんな時にチームメイトである元フランス代表DFマルセル・デサイーに言われたアドバイスを、ワトキンスにも伝えたという――植物は、水をあげすぎても育たない。自然に任せるんだ――だからワトキンスは変に気負うことなく、努力という「プロセスを信じる」ことにした。

 もちろん、彼の活躍は本人だけの力ではない。11月からチームを率いるエメリ監督の戦術がズバリとはまっているのだ。選手たちに期待するプレーを明確にしたことで、それがチームとして得意のパターンに。その中でワトキンスには、「ボックスから出るな」と言い聞かせているという。そのおかげもあり、今年に入ってワトキンスは11ゴールを決め、チームも2023年はシティに次ぐリーグ2位のポイント数を稼いでいる。

 Twitterはやらない。たまにInstagramに投稿する程度。「自分の人生を比較したくない」というオリー・ワトキンスは、“ライフコーチ”とともに世界最高リーグで独自の道を切り開いている。

Photos: Getty Images

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アストンビラオリー・ワトキンズ

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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