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「イカサマ」と呼ばれた男がスコットランドをリーグA昇格へと導く

2022.09.29

 UEFAネイションズリーグで「リーグA」への昇格を決めたスコットランド代表。チームの昇格に貢献したのは、数日前まで「イカサマ」呼ばわりされていたDFだった。

物議を醸した退場劇

 4つのディビジョンに別れているUEFAネイションズリーグで、2部相当の「リーグB」に所属していたスコットランドは、好位置につけたまま9月の3連戦を迎えると、見事に3連勝で1部相当の「リーグA」昇格を果たした。ウクライナ、アイルランド、アルメニアと同組に入っていたスコットランドは、9月27日に昇格をかけてウクライナとの運命の最終戦に臨んだ。

 ポーランドのクラクフで開かれたウクライナ戦、スコットランドは引き分け以上で昇格だった。しかし、負ければ2位につけるウクライナに抜かれてしまう状況。そんな大一番にもかかわらず、スコットランドは10名もの主力を欠く苦しい台所事情だった。試合は戦前の予想通りウクライナが支配する展開となったが、劣勢のスコットランドも堅守を維持。GKクレイグ・ゴードンの好セーブもあって見事に守り切り、スコアレスドローに持ち込んでみせた。

 今年6月のワールドカップ予選プレーオフで敗れていた相手を見事に完封したスコットランドは、これで「リーグA」への昇格が決定。これにより、10月9日に組み合わせ抽選会が行われるEURO 2024の予選で「ポット2」に入ることも決まり、2大会連続でのEURO出場に向けて幸先よいスタートを切れそうだ。

 そんなスコットランドでは、最終戦に起用された“ある選手”が注目を集めている。それがハイバーニアンのCBライアン・ポーティアス(23歳)だ。ポーティアスはアーセナルのDFキーラン・ティアニーやノッティンガム・フォレストのDFスコット・マケンナなどが負傷離脱したことで27日のウクライナ戦にスタメン出場。これまで何度かA代表に呼ばれながら一度も出番がなかったポーティアスは、これが記念すべきA代表デビュー。そして見事にクリーンシートに貢献したのだ。

 この試合、スコットランドのDFラインは非常事態にあった。主将アンディー・ロバートソン(リバプール)がケガで不在の中、ティアニーとマケンナに続きノリッジのDFグラント・ハンリーも直前の試合で負傷して離脱。そのため、今まで出番のなかったポーティアスが抜擢されることになった。以前からCBとして高い評価を受けていたポーティアスだが、ピッチ上での振る舞いについては賛否があった。

 というのも、ポーティアスは23歳にして既に4度も退場になっているのだ。昨季のリーグ戦で2度も退場になり、今季は今のところ退場になっていないが、反対に相手選手を退場に追いやって物議を醸した。9月17日のアバディーン戦で、攻撃時のCKの場面で既に警告を受けている相手DFと競り合った際、一緒に倒れてPKを獲得したのだ。そのプレーで相手DFには2枚目のイエローカードが出されて退場。このPKを見事に沈めたハイバーニアンが最終的に3-1の逆転勝利を収めた。

 そのPKシーンが議論を呼んだ。リプレー映像を見ると、ポーティアスの方から相手をつかんでいるようにも見えたが、スコットランドリーグはまだVARが導入されていないため(W杯後に導入予定)判定は変わらず。試合後、アバディーンのジム・グッドウィン監督は「明らかなイカサマだ」とポーティアスのプレーに激怒。それだけでは飽き足らずに「ポーティアスは何度もあれをやっているのに、いつまで許されるんだ。私は選手たちに伝えていたんだ。ボックス内ではあいつに触るなってね。あいつはすぐに倒れるからね」と痛烈に批判し、後日スコットランドサッカー協会から罰金処分を受けたのだ。

スタッツからも活躍は歴然

 ポーティアスに対する批判はSNSにも広がった。それでもスコットランド代表のスティーブ・クラーク監督は、同選手を信頼して大一番で起用したのだ。するとポーティアスは、監督の期待にプレーで応えてみせた。89分にはゴール前でフリーになりかけた相手MFオレクサンドル・ズブコフに対して背後からクリーンなタックルでボールをかき出しピンチを阻止するなど、無失点に貢献した。

 試合後のスタッツを見ると、彼の活躍は歴然だった。英国放送局『BBC』によると、ポーティアスはタックル成功(チーム1位)、パス成功数(1位)、デュエル勝利数(2位)、ボール奪取(2位)、インターセプト数(1位)という素晴らしい働きをした。試合後にクラーク監督は「デビュー戦のポーティアスは素晴らしかったよ。本当に素晴らしかった。だから彼を起用したんだ。私は練習での彼の姿勢も見ていたしね」と絶賛した。

 この試合でキャプテンを任されたMFジョン・マッギンも、チームメイトに惜しみない賛辞を送った。

「彼はまだ若いのに、これまでいろいろと言われてきた。今日は彼にとって、自分の実力をスコットランド、そしてヨーロッパ中に見せつけるチャンスだった。今日の彼は一級品だ。10点満点の出来だった。このプレーを続ければ、代表でレギュラーに定着できるだろうね」

 こうしてライアン・ポーティアスは、「イカサマ」呼ばわりされた10日後、国のヒーローになっていたのだ。


Photo: Getty Images

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ウクライナ代表クレイグ・ゴードンスコットランド代表ライアン・ポーティアス

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。