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カタールW杯で日本が対戦するドイツ代表。フリック監督が語るキーポイントとは

2022.06.20

 6月のUEFAネーションズリーグ4連戦では1勝3分、1-1のドローが続いたドイツ代表。イングランド戦では相手を圧倒する時間帯もあったものの、イタリア、ハンガリー戦では相手のインテンシティの高いプレーに苦しんだ。とりわけハンガリー戦後には、ハンジ・フリック監督自身が「もっとできると思っていた。(チームの成長が)後退してしまった」と危機感を露にする姿も見られた。

 この発言を受けて迎えた連戦最後の試合、6月14日のホームでのイタリア戦でようやく5-2の快勝を収め、ドイツ代表はオフシーズンに入った。世代交代を見越して大きく顔触れを入れ替えたとはいえ、苦手意識のあるイタリア代表に大勝したことで、ドイツ国内メディアの論調にも安堵した雰囲気が漂っている。

“ドルトムントブロック”構築に期待

 6月15日の『シュポルトビルト』では、フリック監督自身がカタールW杯に向けてドイツ代表の状態についてインタビューに答えている。代表監督の目線からすると、左利きのCBとして頭角を表したニコ・シュロッターベックと代表のCBに定着したニクラス・ジューレの2人がセットでドルトムントに加入したことは大きなプラスとなるようだ。

ドイツ代表の現状について、フリック監督がインタビューで答えている

 さらにカリム・アデイェミも加入し、マルコ・ロイス、ユリアン・ブラントらと前線でも“ドルトムントブロック”を構築することになった。

 フリック監督は「選手たちが互いのプレーに慣れていることは重要だ。“バイエルンブロック”と同時に“ドルトムントブロック”ができることで、チームはもっと強くなる。コーチ陣にとって、選手たちがUEFAチャンピオンズリーグに参加し、3日、4日おきのリズムで最高レベルの試合に臨んでくれることは喜ばしいことだ」と語る。

 守備時の4バックから攻撃時に非対称の3バックへの移行を好むフリック監督にとって、左利きで3バックのCBもSBもこなせるシュロッターベック、右利きで同じ役割をこなせるジューレの存在は貴重だ。

 DF陣ではレアル・マドリーに移籍したアントニオ・リュディガーが軸としてほぼ確定しているが、その相棒役はまだ定まっていない。これまで守備的なSBとして、試合に応じて両サイドに入っていたティロ・ケーラーがパリ・サンジェルマンで出場時間を得られていないため、ドルトムントブロックがリュディガーの両脇を固める可能性も低くはない。

 前線でもアデイェミのようなスピードのある選手とブラント、ロイスのような相手ゴール前でチャンスを演出できるような選手をセットで試合途中から投入することで、試合の流れを変えることも考えられる。2014年ブラジルW杯優勝時も、“バイエルンブロック”と“ドルトムントブロック”に“国外組”がバランス良く組み合わさったことがタイトル獲得につながった。当時アシスタントコーチだったフリック監督は、これらのメンバー構成のバランスに気を配っていることも見て取れる。

代表チームの軸はほぼ確定

 フリック監督は「チームの軸は非常に重要だ。軸があるチームは常に成功を収めている。軸があるからこそ安定性が生まれる。中央に固定された選手からは、安心感とある種の存在感が発せられる。彼らはチームにうまく指示を伝えることができる」とし、早い段階でチームの軸を定めたことを明かしている。

 その軸は、「世界一のGK」と監督が評するマヌエル・ノイアー、同じく「最高のCBの1人」とするリュディガー。ボランチのヨシュア・キミッヒ、そして前線のトーマス・ミュラーの4人だ。とりわけミュラーに関しては、チームに勢いを与え、戦術的にもチームを率先する存在だと評価している。さらに、ここにイルカイ・ギュンドアンも名を連ねるといい、チームの中心と呼ばれる存在が出場時間だけで測られるものではないことも示している。

ノイアー(右)やミュラー(左)はチームの軸としてフリック監督も重要視している

 レオン・ゴレツカは現在のドイツ代表のサッカーを次のように端的に表現する。「ボールを持ってインテンシブにプレーし、高い位置からプレッシングを仕掛け、早い段階でボールを奪う。パワーとハイスピードのサッカーだ」

 それに対して、フリック監督はチームの課題を挙げた。「自分たちが絶えずアクセル全開でプレーし続けることなんてできない。スピードを落とす時間も必要だ。そのために、次に挙げる条件を理解している選手たちが必要なんだ。その条件とは『プレッシャーが強すぎるのはどのような時か』『アタッキングサードへのパスが自分たちにとってカウンターを受けるリスクとなってしまうのはどのような状況の時か』そして『後方へのバックパスをすべきなのはどのような時か』といったことだ」

 これらは、所属チームならすぐに改善するトレーニングも組めるが、代表チームの場合は短期間で伝えないといけない。そのため、代表活動期間外でもオンラインでのチャットアプリやリモートでのミーティングを通じて情報を伝え合っているという。

コンセプトは明確。対策はできるか

 選手たちによると、代表のトレーニングはクラブチームのトレーニングよりもインテンシブだという。フリック監督は、負荷や疲労回復を考慮した上で最大限のインテンシティをトレーニングで再現していることを強調している。

 「人は練習したように試合でもプレーするものだ。これには絶対的な確信がある。私たちは、試合で求めるインテンシティをトレーニングのピッチ上でも再現したいんだ。いつでも公式戦に臨める状態でありたいと望んでいる。限界までトレーニングした人間だけが、さらに改善し、成長できるんだ」

 課題はまだあるものの、これまでのチームの活動に手応えを感じているフリック監督は、「自分たちは正しい道の上にいる」と話す。

 とはいえ、ここまで明確にコンセプトが打ち出されている場合、対策を打ちやすい面もある。実際、緻密な対策を打ってきたハンガリーに苦しめられてもいる。カタールW杯までおよそ5カ月も時間があるなか、メンバーもほぼ固まりつつあるため、日本にとって分析や準備をしやすいはずだ。ドイツ代表のハイプレスとスピードに対してしっかり対策を練り、DFラインの裏を攻略する術を見つけられれば、勝機も見えてくるはずだ。


Photos: Getty Images

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アントニオ・リュディガートーマス・ミュラードイツ代表ハンジ・フリックマヌエル・ノイアー

Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。