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就任1年目でスコットランドを制したポステコグルー。監督業への覚悟を語る

2022.06.03

 トップレベルの監督に必要な心構えや、彼らが向き合う重圧とはどんなものなのか? 就任1年目にセルティックを国内2冠に導いたアンジェ・ポステコグルー監督が、『Sky Sports』で“メンタルヘルス”について語ったインタビューが興味深いので紹介しよう。

批判をはねのけ国内2冠達成

 ポステコグルーは現役時代にオーストラリア代表に選ばれるDFだったが、ケガの影響で20代後半に引退を余儀なくされた。引退後は銀行で働きながらクラブチームのアシスタントコーチを務めていたが、1996年に監督職のオファーを受け、指導者の道に専念することを決意した。

 その後はオーストラリア代表を率いてFIFAワールドカップに出場したり、横浜F・マリノスをJリーグ制覇に導いたりと輝かしい実績を築き上げ、昨年6月にセルティックに引き抜かれた。

 だが就任が発表された際、元スコットランド代表の名物ラジオ司会者には「冗談だろ。必要なライセンスさえ持っていないのに」とUEFAプロライセンスを所持していなかったことを小馬鹿にされた。就任後も、最初の数カ月で宿敵レンジャーズに水をあけられると矢面に立たされた。それでもポステコグルーは決して屈することなく、最終的にリーグ優勝を果たしてプロ選手協会とスコットランド記者協会の年間最優秀監督をダブル受賞した。

 そんなポステコグルーが先日、『Sky Sports』のインタビューで監督の苦悩と覚悟について語った。選手から監督になるのは「転職ではなく、生活スタイルの選択」で、監督業は休みのない「7日間、24時間営業」だという。

 「オン・オフの切り替えを大事にする監督もいるが、実際のところオフなどない。何か重要な連絡があるかもしれないので、一瞬たりともスマホの電源を切ることができない。だから監督の道に進む人には、そういったことを理解し、それを受け入れる必要があると伝えている」と説く。

敗戦の辛さは常に変わらない

 妻子とともに日本やスコットランドといった馴染みのない土地で暮らしてきたポステコグルーは、家族の重要性も強調する。

 「結局のところ、家族は犠牲を払ってくれているんだ。生活スタイルの選択と言ったが、それは私だけの問題ではなく、家族についても言えることなんだ。だから、みんなで新しい生活スタイルを受け入れる家族の絆が大事だと思う」

 監督業を続けていれば、当然だが悔しい敗戦も経験する。輝かしい実績を誇るポステコグルーにとっても、それは避けて通れない道だ。

 今季、セルティックは日本人選手の活躍もあってリーグとリーグカップの2冠を達成したが、スコットランドカップでは準決勝で宿敵レンジャーズに苦汁をなめさせられた。その時の、監督ならではのエピソードも明かした。

 「準決勝でレンジャーズに負けた時、実は2年ぶりに会う友人がオーストラリアから来てくれており、一緒に夕食をとる約束だった。だが、(負けたので)私は食事に行かず、妻が友人たちの相手をしてくれた。彼らは私の友人なので、ちゃんと理解してくれたがね」

 ポステコグルーは「敗戦の辛さは何年経っても変わらない。監督1年目の時と同じだけ辛いものだ」と語る。だからこそ、家族や友人の存在は大切なのだろう。ポステコグルーは、8歳の時から知る幼馴染グループとの付き合いを今も大事にしているという。

「私は大好きなことをしている」

 SNS時代に突入したことで、選手や監督に対する批判は以前の比ではないという。昔なら、新聞が発行されるのは試合の翌日のため、少し気持ちを整理する時間が取れた。しかし、今はそうもいかない。そのためポステコグルーは、若い監督にこんなアドバイスを送る。

 「周りに気を許せる人間を置くこと。相談役のような人をスタッフに入れるべきだ」

 重圧に関しても、前向きにとらえるべきだと力説する。

 「自分のクビを心配したり、任期を意識したりしたら、それはもう重圧にやられているようなものだと思う。とにかく、なぜ自分はこの仕事をしているのか。それを決して忘れないことだ。毎週末のようにサッカーの試合に勝つチャンスがある。負ける可能性もある。でも、それが大好きなんだ」

 そして、自分が恵まれていることも忘れてはいけないという。

 「将来何になりたいか小学生に聞いた時、実際にその夢を叶えられるのはクラスにほんの一握りしかいない。私はその中の1人なんだ。だから、どんなに大変なことがあっても『私は大好きなことをしているじゃないか』と自分に言い聞かせるのさ!」


Photo: Getty Images

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アンジェ・ポステコグルーセルティック

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。