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マリオ・ゴメスがRBグループ国際部へ。見据えるグループ全体の未来

2022.01.26

 1月5日、元ドイツ代表ストライカーのマリオ・ゴメスがRBグループ国際部のテクニカルディレクターに就任することが発表された。ラルフ・ラングニックがRBグループでの最終年に務めた役職であり、グループ内でも重要なポジションだ。現在はRBライプツィヒのCEOを務めるオリバー・ミンツラフがゴメスの代理人を務めていたこともあり、考え方、人柄やサッカー界での経験といったものを考慮しての抜擢となった。

 ゴメス自身、現役キャリアの終盤にはマネージャーとして動くイメージを持っていたことで、この動きはスムーズに決まった。1月12日の『シュポルトビルト』の中で、ゴメスが選手からマネージャーに移行した経緯、そしてRBグループの計画について話をしている。

2014年W杯で落選の挫折が転機に

 2014年ブラジルW杯優勝という栄光の陰で、ゴメスはケガの影響もあり、代表から落選していた。それまで好不調にかかわらず、ドイツ代表のストライカーとしてミロスラフ・クローゼとともに切磋琢磨してきたゴメスにとって、この落選はサッカー選手として大きな失望となった。だが、この落選が大きな転機となったという。

 「キャリアの前半は自分のことだけを考えていた。だが、2014年W杯での落選によって、自分にとってサッカーがどんな意味を持つのか、本当に理解したんだ。とても複合的に絡み合っていて、自分自身のキャリアなんかよりもずっと大きなものなんだということをね」

 この経験を経て、チームやグループがいかに機能するのかを考えるようになり、その分野に関心を持つようになったという。「それ以来、自分は絶対的なチームプレーヤーであるように努めた。たくさんのテーマに関心を持ち、多くの質問をするようになったんだ」。イタリア、トルコといった海外で経験を積み、EURO2016では再び代表に復帰。代表、所属チームとそれぞれでチーム全体を見ながら、ピッチの内外で自身が負うべき役割とその責任を引退まで全うした。

機能するチームの作り方

 「キャリアの中でたくさんのことを観察できた」とゴメスは続ける。「成功するために、チームの中で何をしなければならないのか。選手やスタッフを苛立たせることなくマネジメントが介入するにはどうすればいいのか、といったことだ。選手だった自分が『すごい!』と感じることもあれば、呆れることもあった。そうして、どのようなタイプの人間が、どのような種類のチームの成功をもたらすことができるのか、ある程度は見極められるようになった」という。

 その例として、キャリア最晩年の2019-20シーズンのシュツットガルトで遠藤航の起用を監督に推薦したことが挙げられる。昇格争いで停滞しつつあったシュツットガルトにあって、チームの不調を感じ取ったゴメスは当時監督のティム・バルターに「ワタルがチームのベストプレーヤーだ」と進言し、起用を促した。後任のマタラッツォの下で絶対的な主柱となった遠藤は昇格に貢献。主将の座を獲得するまでになった。

ゴメスが監督に起用を進言した遠藤は、いまやシュツットガルトのキャプテンを務めるまでに

 そのゴメスの視点から、RBライプツィヒのドミニコ・テデスコ監督の招聘は正しいものだったようだ。「テデスコは、チームを軌道修正できるだけのクオリティを持っている。監督の要求を実践させるためのモチベーションを選手たちに与えることができる。各選手はそれぞれに重要な存在だが、最も不可欠なのはチームとしてのまとまりであり、そのための構造・序列だ」と話し、再びチームとして機能するうえで不可欠な規律や仕組みを構築した手腕を評価した。

 「まずはチームを率先してリードする選手たちのユニットは欠かせない。そのユニットは、3、4人いれば十分だ。彼らは、率先した声がけや姿勢でチーム全体に先立ち動くリーダーとしての責任を背負う。それは性格的なものも関係する能力であり、30歳を超えるベテランである必要はないし、誰でもできるものでもない。私自身も、自分のことだけを考えていたキャリアの前半は、それができなかった。今のRBライプツィヒには、自分自身のプレーだけではなく、全体を見渡して動ける選手たちがいる」とし、そういった選手たちにしかるべき役割を与えたことが成功の鍵だと説明した。

 日本国内では、元Jリーガーとして活躍した水戸ホーリーホックの西村卓朗GMがサッカークラブのマネージャーとして、選手時代の目線を交えながら興味深い情報を発信しているが、選手時代の意識や観察能力が引退後の仕事につながることを示している。

RBグループは2026年W杯に焦点

 国際部のスポーツディレクターとして、ゴメスはアメリカ・ニューヨーク、ブラジル・ブラガンチーノ、そしてドイツ・ライプツィヒの3カ国の拠点を結ぶ役割を担当することになる。その中で最も力を入れているのは、2026年ワールドカップの共同開催国の1つであり、サッカー市場の注目を集めているアメリカのニューヨークだ。「アメリカはワールドカップに向けて多くのことを発展させ、改善させようとしている」とし、今後4年かけて投資が行われ、大きく変化すると見ている。

 そのアメリカのみならず、ブラジルでもトップレベルのアカデミーを作り、自前の選手でそれぞれの国のタイトルを獲ることが最大の目標だ。そこから欧州、欲を言えばRBライプツィヒで活躍できる選手が定期的に出てくることを目指すとしている。

 RBライプツィヒには、すでにアメリカ代表のタイラー・アダムズと同U-20 代表のケイデン・クラークが所属しており、流れができ始めている。今後、アメリカやブラジルからの選手がRBライプツィヒに定着するかどうか、RBグループのインフラストラクチャを支えるゴメスの手腕にかかっている。


Photos: Getty Images

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Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。