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パンデミックを乗り越えて。ジーコが第17回チャリティーマッチを開催

2021.12.31

 ブラジルの12月は、チャリティーマッチの季節だ。ブラジルサッカーのシーズンオフは短く、12月第1日曜日のブラジル全国選手権最終節を終えた後、1 カ月間しかない。そのわずかな休暇を惜しむことなく明け渡し、選手たちは広い国土を行き来する。チャリティーマッチを主催したり、友人の主催する試合に参加したりするためだ。

わずかなオフを明け渡す選手たち

 昨年末は、そのすべてが新型コロナウイルスのパンデミックで開催不可能となった。それが今年は現時点、ワクチンの2回接種(1回接種型なら1回)の割合が全国で67.4%となり、職業や年齢によって、すでに3度目の追加接種も進んでいる。感染者数と死亡者数も大幅に減った。そのため、コロナで経済的に苦境に陥った人たちに手を差し伸べる時が来た、という意味でも、多くのチャリティーマッチが行われた。

 「ダビド・ルイス(フラメンゴ)の友達vsウイリアン(コリンチャンス)の友達」は、ブラジル代表の親友同士の主催だった。いつか一緒にやりたいと長く話し合っていたのが、今年は2人ともブラジルのクラブでプレーしていることから、ようやく実現したと語っていた。

 ガビゴウ(フラメンゴ)とクラウジーニョ(ゼニト)も初めて試合を主催した。彼らはみんな、こうしてサッカーを通して社会に貢献できることを「夢の実現だ」と語り、観客を楽しませるプレーを、自分たち自身も楽しそうに披露している。

ジーコ主催は毎年恒例

 そんな中で、もう長年「ブラジルサッカーのカレンダーの一部」と言われているのが、今年で第17回となるジーコ主催のチャリティーマッチだ。ブラジル人のスター選手ともなれば、誰もが1度や2度はこうしたイベントを主催するのだが、ジーコのすごいところは、毎年欠かさずに開催し続けることだ。

 そして、毎年マラカナンに5万人のサポーターを集めるのも、ジーコにしかできないだろう。ジーコと一緒に楽しみたい、ジーコに協力したいというサポーターは多く、そして、それほどの観客を集めるスターがジーコの呼びかけに応じている。

 そのジーコも、昨年はパンデミックで不可能となったため、2年ぶりの開催となった。

 ただし、今年は直前でマラカナンの芝生の張り替え工事が決まった。リオデジャネイロ市内にある同じ規模のエスタジオ・ニウトン・サントスも同様に、シーズンオフを生かした芝生の張り替えがある。この2つのスタジアムは今年、芝の状態が非常に悪く、批判の的となっていたため、やむを得ない。

 そこで、ジーコの人望がモノを言った。リオの中堅クラブであるポルトゥゲーザが、ホームスタジアムを開放してくれることになったのだ。観客席は5000人規模。それでも急きょ、場所と日程を変更したにも関わらず、多くのスター選手やOB、そして観客が集まった。テレビの中継枠もすぐさま調整され、ライブで放送された。

 ジーコは「こうしてチャリティーマッチを開催できることが、パンデミックに対する一つの勝利だ」と語っていた。

 「助けを必要とする人たちに、こうしてまた、少しでも喜びを提供できることを幸せに思うよ。そして、観客や視聴者に、スターの試合を見せられることにもね。もちろん収容人数の違いから、いつものような収益は上がらないが、その代わりに、このイベントのシャツやボールなどグッズのオンライン販売も同時に進行している。いろいろなことがうまくいった。そしてブラジルサッカーの重要な選手たちが、OBも現役も快く受け入れて、今年も集まってくれた。みんなに感謝するばかりだ」

試合は急きょ、ポルトゥゲーザのホームスタジアムで開催。それでも多くの観客が集まり、ジーコはポルトゥゲーザからの表彰も受けた(Photos: Kiyomi Fujiwara)

集まった多くの仲間たち

 日本のサポーターにとって懐かしい顔触れも多い。例えば、鹿島でジーコとともにプレーしたアルシンド。

「誰かを手助けできるなら、いつでもできる限りのことをしたいと思っている。このジーコのチャリティーマッチには、毎年参加してきた。体が言う事を聞かなくなっても一緒にやりたいんだ。ジーコがブラジルと日本のサッカーのためにやってきたことを考えれば、誰もがそうしたいと願う。だから、ここではたくさんの旧友にも会える。このパンデミックが早く終わって、国が元通りになることを願っているよ。職を失ったり、食べるに事欠いたりということが早くなくなって、みんなが笑顔で暮らせるように。ガンバッテクダサイ、ミナサン、トモダチナラアタリマエ!」

Jリーグ草創期に鹿島アントラーズでジーコとプレーしたアルシンド(Photo: Kiyomi Fujiwara)

 1993~1996年に柏レイソルでプレーしたカレッカもいた。

「新型コロナで家族や友達をなくし、悲しみに沈んでいた人が、少しでも笑顔を取り戻せることを願っている。日本のみんなにも、特に愛する柏レイソルのサポーターのみんなにも、大きなキスを。ドウモアリガトウ」

元ブラジル代表で、柏レイソルでもプレーしたカレッカ(Photo: Kiyomi Fujiwara)

 2003年に東京ヴェルディでプレーし、現在は監督に転身しているラモンは、こう語っていた。

「みんなに言いたいのは、まずは健康に気を付けて欲しい、ということ。健康であれば、後は仕事でも何でも、得るために頑張ることができる」

東京ヴェルディでのプレー経験を持つラモン(Photo: Kiyomi Fujiwara)

 昨年現役を引退したばかりの元ブラジル代表ゼ・ロベルトは「2022年は、新たなメンタリティ、新たな目標を持って、新たな時代を生きていこう」と呼びかけてくれた。

現役を引退したばかりのゼ・ロベルトも参加(Photo: Kiyomi Fujiwara)

 現役では、例えば元マンチェスター・ユナイテッド、今年からボタフォゴでプレーしている右SBのラファエウのように「ジーコに呼んでもらえるなんて、最大の名誉」と笑顔の選手もいる。

 元ブラジル代表で言えば、皇帝アドリアーノ(現在無所属)、デデー(今年までクルゼイロ)、ジウベルト(元ヘルタ・ベルリン、現在は引退してスポーツマーケティングディレクター)。

現在無所属のアドリアーノ(中央)もジーコの呼び掛けに応じて駆け付けた(Photo: @jdezico)

 元Jリーガーで言えば、サントスやモーゼルといった鹿島アントラーズ勢、ベット(元北海道コンサドーレ札幌、サンフレッチェ広島)もいた。

 また、今年はフラメンゴのトヨタカップ優勝40周年。当時のジーコのチームメイトたちは元々このイベントの常連だが、応援するサポーターにとっても、さらに熱が入る顔触れだ。

ジーコ本人もピッチに立つ

 そんな中、ジーコは足を引きずりながら、キックオフから6分間、ピッチに立った。今年の7月に股関節の手術をしたジーコは、普通に歩くこともままならない。人工関節を入れる手術も考えているという状況でありながら、それでも集まってくれた観客、テレビの視聴者に感謝を伝えるため、そして、助けを必要とする人に勇気を与えるため、あえて出場したのだ。

コンディションが万全ではないにも関わらずピッチに立ったジーコ(Photo: @jdezico/@gilvandesouza)

 しかし、そのコンディションは、試合前のロッカールームでチームメイトたちに「僕がゴールを決めるようにと、パスを出したりしないでね。絶対に無理だから」と前もって頼むほどだった。

 ピッチを去る時、スタンドに向かってお辞儀するジーコに、観客はブラジルの伝統的なジーコのチャント「王様、王様、王様、ジーコは僕らの王様だ」と大合唱して称えた。

 こうして集まった収益は、主にリオにある、経済的に恵まれない子供たちのための施設に届けられる。例年のごとく、後日その詳細がきっちりと発表されるはずだ。

 こうして、また一つサッカーにできることを達成しながら、ジーコとその仲間たち、そしてサッカー選手たちの1年が締めくくられる。

 最後に、ジーコからの年越しのメッセージを紹介する。

 「自信を持とう。もちろん、パンデミックがまだ続いている中、感染予防策を尊重し、医療関係者に感謝をしなくてはならない。そして、乗り越えていけることを、これから普通の人生を取り戻せることを信じよう。みんなにとって、良い2022年になることを願っているよ。ありがとう」

ジーコは「みんなにとって良い2022年になることを願っている」とのメッセージを残してくれた(Photo: Kiyomi Fujiwara)


Photos: @jdezico, @jdezico/@gilvandesouza, Kiyomi Fujiwara

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Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。