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50年ぶりのブラジル全国選手権優勝に沸くアトレチコ・ミネイロ

2021.12.06

 今年のブラジル全国選手権1部は、2節を残してアトレチコ・ミネイロが優勝を決めた。クラブにとって実に50年ぶりとなる悲願のタイトルだ。

 ロナウジーニョジョー(元名古屋グランパス)を擁した2013年のリベルタドーレス杯を始め、コパ・スダメリカーナやコパ・ド・ブラジルなどのタイトルは獲得してきたものの、全国選手権では勝てずにいた。

 今季は首位を独走し、2位以下との勝ち点差から、優勝はほぼ確実と言われていた。ただ、数字の上で可能性が残っていたフラメンゴもしぶとく勝ち星を挙げていたため、ここ数節は試合のたびに優勝先送り、という忍耐の時が続いていた。

 そして12月2日、アウェイで臨んだバイーア戦。まさかの2点を先制されたものの、73分にフッキ(東京ヴェルディ、川崎フロンターレ、コンサドーレ札幌でもプレー)が決めたPKを皮切りに、チームは3得点を挙げて逆転、ついに優勝を決めたのだ。

バイーア戦でPKを決めるなど活躍したフッキ(右)は、アトレチコ・ミネイロの優勝に大きく貢献した

チームを牽引するフッキ

 当日は、本拠地ベロ・オリゾンテに戻ったチームの凱旋パレードが行われ、広場には市も警察も数を把握できないほどのサポーターが集まった。それにより、無許可でイベントを開催したという理由で、クラブが市から3000レアル(日本円で約6万円)の罰金を命じられるというおまけまでついた熱狂ぶりだった。

凱旋パレードには多数のサポーターが広場に集まりチームと喜びを分かち合った

 ブラジルのサッカーメディアでは、その勝因分析が盛んに行われている。中でも、最も称えられている要因の1つが「フッキ効果」だ。

 今年1月の移籍当初は、中国サッカーから帰国した経歴と当時34歳だった年齢から、メディアにもサポーターにも疑問視された。しかし、フッキはそれを吹き飛ばす勢いで、全国選手権では第36節までに18ゴールを決め、得点ランキングでトップに立っている。4アシストも加えると、チーム合計60得点の3分の1以上となる22ゴールに直接関わっている。

 ちなみに、シーズン全体ではここまで65試合に出場し、33ゴール12アシストという驚異的な数字を記録している。

 彼のニックネームが「フッキ」であることから、彼こそがアメリカンコミックの主人公以上の、真のスーパーヒーローだという論調もある。フッキにとってはポルト、ゼニト、上海上港時代も含め、国内リーグでは7つ目のタイトル達成であることから、優勝請負人として称えるメディアもある。その本人は優勝の決まったピッチで、座り込んで号泣していた。

優勝が決まった後、ピッチに座り込んで号泣するフッキ

優勝に貢献したヒーローたち

 他にも名前の挙がるヒーローがいる。左SBのギリェルメ・アラーナは、昨年セビージャからレンタルされ、今季途中に完全移籍となった。全国選手権の年間ベストイレブンに選ばれた昨年に続き、今年は東京五輪で全試合にスタメン出場し、金メダル獲得に貢献するなど絶好調だ。

セビージャから加入したギリェルメ・アラーナは左SBの主力として活躍した

 15年ぶりに帰国したFWジエゴ・コスタは、アトレティコ・マドリーやチェルシーで経歴を築いた選手だが、フッキと同様、若くして外国に出たため、ブラジルでプロとして活躍したわけではなかった。それがすんなりと母国のサッカーに適応し、チームに欠かせない選手となった。

 大型移籍だけではない。CBに補強が必要となれば、アトレチコ・ゴイアニエンセにレンタル移籍させていたナタン・シウバを連れ戻した。

 不動の守護神だったビットーが2月末で現役引退すると、昨年サントスから獲得したエベルソンが正GKの座を引き継ぎ、ブラジル代表に招集されるまでになった。

 そして、今季開幕から1カ月半後、3月上旬に急遽就任したクッカ監督だ。このクラブを2013年リベルタドーレス優勝に導いた英雄の復帰だった。

 それだけに、リベルタドーレス初戦のラ・グァイラ(ベネズエラ)戦で引き分け、全国選手権初戦のフォルタレーザ戦に敗れた時は、サポーターを落胆させ、SNS上で「出て行け」運動を起こされたこともあった。

 しかし、そこからクッカは素早くチームを立て直し、リベルタドーレスは準決勝まで勝ち進んだ。全国選手権も、第15節で首位に立ってからは一度も順位を落とすことがなかった。

3月上旬に就任し、早急にチームを立て直したクッカ監督

凱旋試合は6万人の前で

 クラブのサッカーディレクターであるホドリゴ・カイターノの手腕も注目されている。強力なスポンサーによる資金力を得たのは大前提だが、数々の的確な補強は、彼の指揮下で行われたものだ。

 また、クラブ全体を一つの家族のようにする、という理想を実現するために、日々の細かなところから気を配った。例えば、クラブ職員から警備員、食堂スタッフまでを一同に集めたビンゴ大会などを開催し、みんなで楽しむ場を設けた。クッカや技術スタッフも、そうした企画の運営側として参加し、特にフィジカルコーチのクリスチアーノ・ヌネスなどは、陽気な性格でいつでも盛り上げに一役買っていたそうだ。

 この12月5日には、優勝後、初めての本拠地での試合が行われる。ホームスタジアムであるミネイロンの入場券6万枚は、5時間で完売した。日曜日16時からということもあり、スタジアムを埋め尽くす観客はもちろん、サポーターは再び、街に繰り出して歓喜に酔うことだろう。

 そして、クッカと選手たちは全員、この優勝による報償金を、給料の低いクラブ職員たちにも分けるという。1年を通したクラブ一丸となっての努力が、クラブ全員の幸せな年末に繋がっていく。


Photos: Pedro Souza/Atletico Mineiro

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Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。