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“場外乱闘”が招いた災難。ボカのチーム全員が強制隔離で試合出場不可に

2021.07.25

 国際カップ戦で起こしたトラブルにより、国内のリーグ戦に選手たちが出場できなくなる――あり得ないことのように思われる事態だが、このたびボカ・ジュニオールがそんな憂き目を見る羽目になった。

12時間待機、帰国後は強制隔離

 7月20日、コパ・リベルタドーレスのラウンド16第2戦で、ボカはアトレチコ・ミネイロ(ブラジル)相手にPK戦の末の敗退が決定した。ホームでの第1戦に続き、アウェイのこの試合でもVAR判定によってゴールが無効になったことから、募りに募った不満と敗退のフラストレーションが「場外乱闘」に繋がってしまった。

 ボカのクラブ関係者の説明によると、控え室に引き上げる途中、アトレチコ・ミネイロのスタッフから執拗な挑発を受け、それに怒った選手たちが相手の控え室に近づいたところでスタジアムの警備員と揉み合いになり乱闘に発展したという。その一部始終を映したセキュリティカメラの映像には、ボカの選手とコーチが警備員に向かって鉄柵を投げる様子まで映されている。

 間もなく警察が介入し、催涙スプレーを撒き散らしたことで沈静したが、乱闘に関わったボカの選手、コーチ、役員を含む計9人に警察が出頭を要請。その9人に連帯する形でチーム一行55人全員がスタジアムからバスで警察に向かった。当初は事情聴取を終えてからその日のうちにチャーター機で帰国する予定だったが、警察による拘束はなんと夜中の0時から翌日12時まで続き、チーム一行は12時間もバスの中で待機させられることとなった。

乱闘への関与で警察に出頭したボカのチーム一行は、12時間もバスの中で待機することになった

 それでも無事に帰国し、入国時のPCR検査は全員が陰性との結果が出たが、ここで新たな問題が浮上した。アルゼンチンの保健省が、アトレチコ・ミネイロ関係者との乱闘の際、ボカのメンバーが「新型コロナ感染防止プロトコルにおいて違反を犯した」として55人全員に7日間の強制隔離を命じたのである。

リザーブチームで試合に挑む

 これについては南米サッカー連盟が「ボカのメンバーの行動範囲はゾーン1(バブル内)に留められていた」と確認する文書を公表し、感染防止プロトコルに違反がなかったことを保証したが、アルゼンチン保健省は「乱闘時に部外者と接触した」と判断。このため55人はブエノスアイレス市内のホテルに隔離され、保健省からは「バブルを維持してのトレーニングは可能」との許可を得たものの、7月24日のリーグ第2節(vsバンフィエルド戦)と27日の第3節(vsサン・ロレンソ戦)に出場することができなくなってしまったのである。

 ボカは試合の延期を要請したが、リーグを主催するリーガ・プロフェシオナルはこの申し入れを拒否。代替案として「1チームにつき最低8人のプロ契約済み選手の出場」という条件を免除し、1軍の代わりにレセルバ(リザーブチーム)または下部組織の選手の起用を認め、出場選手のリスト提出期限を当初の「キックオフ24時間前」から「キックオフ8時間前」まで延ばす特例を定めた。

 それでも延期を要求し続けるボカに対して「試合を放棄した場合は規律に従い制裁が下されることになる」と警告。最終的にはレセルバの選手たちが出場することになった。レセルバは前日にサテライトリーグでプレーしたばかりだが、クラブの危機を救うべく、選手たちは積極果敢な姿勢を見せている。

 一連の事態についてボカのミゲル・アンヘル・ルッソ監督は、23日に行われた会見で「我々はバブルを破っていないが、保健省の判断は尊重する。ブラジルから敗退の痛みを引きずりながらも(強制隔離の)判断を受け止め、それに従った。クラブが試合の延期を要請したのは、ボカを守るためだ」と話していた。


Photos: Getty Images

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Profile

Chizuru de Garcia

1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。

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