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熱気が戻ったブラジルサッカー、パンデミックを経て好調な観客動員

2022.08.11

 4月9日に開幕したブラジル全国選手権1部リーグが全38節中19節までの前半戦を終え、好調な観客動員数を記録している。ブラジルサッカー連盟の発表によると、前半戦の1試合平均は2万1026人。これは、年間の1試合平均の過去最高記録である1971年(2万2953人)、2位の2019年(2万2601人)に次ぐ3位の数字だ。

 優勝争いや上位4チームに与えられるコパ・リベルタドーレス出場枠権争い、1部残留争いなどが激化する後半戦はさらなる観客の増加が見込まれるため、過去の記録を更新することが期待されている。

人気を牽引するフラメンゴ

 ブラジルでも世界各国と同様、新型コロナウイルスのパンデミックにより、2020年3月半ばからすべてのサッカーの試合が休止された。同年7、8月には再開されたものの、無観客での開催であり、スタジアムに観客が戻ったのは昨年10月のことだ。その後、2度のワクチン接種またはPCR検査陰性証明などの条件とともに、収容人数の30%、50%、移動を伴う対戦相手のサポーター受け入れなどの段階を経ながらスタンドを開放していった。

 そして、今季の全国選手権はパンデミック始まって以来初めて、開幕から人数制限なしのスタートとなった。スタジアムの熱気の中で自分の愛するクラブとともに戦い、目の前で繰り広げられるプレーにみんなで一喜一憂する、サッカーの醍醐味に飢えていたサポーターが、意気揚々と詰めかけている結果だと言われている。

 好調な観客動員数の原動力の1つがフラメンゴだ。もともと、過去から現在に至るまでの様々な調査により、国民の5人に1人はフラメンゴサポーターという結果が出るほどの全国的な人気を誇っている。ホームスタジアムは観客収容人数7万8838人のマラカナンだ。

マラカナンでのフラメンゴ戦は満員近い観客が入ることも(Photo: Paula Reis/Flamengo)

 ただし、スタジアムが大きければ観客数が増えるわけではない。クラブごとの1試合平均観客数上位につけているのは、1位フラメンゴ(5万3484人)、2位コリンチャンス(3万8152人)、3位パルメイラス(3万4541人)、4位アトレチコ・ミネイロ(3万4417人)。いずれも今季の全国選手権で、常に上位5、6位までの好成績を維持している。そのため、ブラジルサッカー連盟は「良いサッカーが多くの観客を呼ぶ」としている。

 試合の注目度も効果を発揮する。1試合の観客動員数のうち、トップ3を占めるフラメンゴの試合の中でも、1位はフラメンゴvsパルメイラスの6万9997人。(4月20日。結果は0-0)。近年、この2チームが様々な大会でタイトルを争うことが多く、サポーター同士のライバル意識が非常に強い。

 4位はフルミネンセvsセアラーの6万3707 人(7月9日。結果は2-1)。クラブの英雄である元ブラジル代表FWフレッジの現役最後の試合だった。5位はフルミネンセvsフラメンゴの5万7919人(5月29日。結果は1-2) 。リオデジャネイロのダービーマッチであり、フルミネンセのホームスタジアムもマラカナンだ。

フルミネンセの英雄フレッジのラストマッチは6万4000人近くを動員(Photo: MAILSON SANTANA/FLUMINENSE FC)

“らしい光景”が戻りつつある

 各メディアによって、その他の要因も分析されている。例えば、近年はスタジアムの設備が整い、より快適に観戦できるようになったことが、観客の層を広げている。

 また、各クラブがSNSを駆使してチームや選手に関する魅力的な情報を発信することにより、サポーターの忠誠心や観戦意欲を盛り上げるためのイニシアチブを取っていること、試合当日のスタジアムでの体験ツアーなど様々なプログラムを充実させてクラブ会員の増強を図っていることなども動員数増に影響を与えている。

様々なファンサービスが観客動員の増加につながっている(Photo: Paula Reis/Flamengo)

 昨年、観客が戻った当初は、やはり不安が大きかったのか、制限された定員をはるかに下回る入場者しかいなかった。その後、観客が増えるに従って、マスクの正しい着用のルールが守られにくくなったり、ソーシャルディスタンスの指示があっても一旦入場するとサポーターが密集したりと、問題もあった。

 現在は、熱気が戻るにつれて、ブラジルサッカーの負の名物とも言えるスタンドやスタジアム周辺でのサポーター同士の喧嘩も戻ってきた。

 それでも、チームが懸命に戦う姿や各クラブの経営・運営の努力、一方でサポーターの歓喜と情熱、その双方が、サッカーの魅力を牽引していることを表す観客動員数のデータとなった。


Photos: Marcelo Cortes/Flamengo, Paula Reis/Flamengo, MAILSON SANTANA/FLUMINENSE FC

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アトレチコ・ミネイロパルメイラスフラメンゴフレッジ

Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。

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