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サンパウロは僕の“家”…カカーが古巣の推進委員会メンバーに

2021.01.12

 今年サンパウロの会長に就任したジュリオ・カザーリスが、1月4日に就任後、初めての記者会見を行った。今後のクラブの体制についても触れる中で、話題となった1つがカカーの組織入りだった。

将来はダイレクターを務める?

 「カカーはサンパウロ最大のスターの1人だ。彼自身は研修という形を望んでいたのだが、私が彼に言ったのは、クラブのサッカー推進委員会のメンバーとしてサッカーにもっと直接関わってほしい、ということだ。彼は自分の意見や経験をもって我われを手助けすることになる。彼が来ることで、新たなクラブ首脳陣を構成する手助けにもなる」

 そして、カカーが将来、クラブのダイレクターを務めることも視野に入れていると語った。

カザーリス会長は就任後、初の会見でカカーの組織入りについて語った(Photo: Rubens Chiri/saopaulofc.net)

 古巣サンパウロにカカーがマネジメント側の立場として復帰するのは、今回が初めてではない。現役引退後、彼は第2の人生において「サッカーやスポーツのマネジメントに最も興味がある」と語り、ハーバード・ビジネススクールでサッカービジネスを学んだり、FGVというブラジルの教育機関やFIFA、UEFAの講座でスポーツの運営管理を学んだりした。

 UEFAの講座では現場での経験も求められる。そのため、カカーはクラブのマネジメントに関わるいくつかの役割を、サンパウロの様々な部署での研修という形で経験したのだ。

2019年8月には加入したダニエウ・アウベスのお披露目イベントに登場した
(Photo: Miguel Schincariol/saopaulofc.net)

若い頃からクラブへの貢献を望む

 カカーがまだ21歳だった2003年、ヨーロッパ移籍も間近と言われていた頃から、彼はクラブへの思いをこう語っていた。

 「僕は7歳からサッカーを始めて、8歳でサンパウロに来た。だから、もう13年もここにいるんだよ。ここでサッカーをし、食事をし、寝泊まりもしたし、ここで選手として成長した。だから、ここは僕の“家”だ」

 「もちろんヨーロッパでプレーする夢はあるけど、このクラブにはずっと関わっていたい。もっと先になって、選手としてではないとしても、何らかの役割を果たしていきたい」

 その思いが38歳の現在も続いているのだ。

2003年のインタビューでは「このクラブにずっと関わりたい」とコメント(Photo: Kiyomi Fujiwara)

 ミランとレアル・マドリー、合わせて11年間のヨーロッパでのプレーを経てアメリカのオーランド・シティに移籍する際には、選手として貢献するという目的はもちろん、自分自身の将来の糧になることも視野に入れていた。

 当時、カカーにMLSでのプレー、しかも、新たに誕生してMLS参入を決めたばかりのクラブへの移籍を決めた動機を聞くと「このリーグは大きく成長すると信じているから、その種をまく時期にリーグに参加し、発展に協力したかった」と語っていた。

 そして、キャプテンとしてチームをリードすると同時に、その存在によってホーム、アウェイを問わず観客動員数を大幅に増やすなど、サッカー人気やリーグの知名度アップにも貢献した。それが他のビッグネームの参加にも繋がり、カカー本人も「自分の想像以上にMLSの発展に寄与できていると思う」と認めていた。

 一方で、彼自身が得ている経験についても熱心に語っていた。

 「印象的だったのは、リーグの組織力と中長期的なプランの組み立て、それに、成長の仕方。みんなが一緒に成長していっている。持続可能な成長だ」

「それに、オーランドCのプロジェクトにも参加したかったんだ。ゼロから始まったチームだから簡単じゃないよ。学ばないといけないし、いろいろな部分で忍耐も必要だ。でも、そういうのもすべてプロジェクトの一部。僕にとっては、プロとしても、1人の人間としても、すごく良い経験になりつつある」

オーランドCではMLS全体の発展にも貢献した(Photo: Kiyomi Fujiwara)

研修しながらクラブ運営に参画

 現役時代からそうやって少しずつサッカーやクラブのマネジメントへの興味を膨らませていたカカーは、引退後にブラジルのサッカー番組で「いつかミランのダイレクターをしたいけど、まだ準備ができていないと思っている」と話していたことがあった。

 その誠実さにより、サンパウロの新会長の誘いにも「研修という形で続けたい。まだ学んでいる最中だから」と申し出た。そして会長もまた、そういうカカーだからこそより深く関わってほしいと考え、その研修に加え、サッカー推進委員会のメンバーに招聘したのだ。

 会長はクラブ運営における新たな展開をも見据えている。

「我われは『能力主義』に価値を置くことを示すために、一定の期間を区切って何かをすべきだと考えている。カカーとともにそういうこともやっていくつもりだ」

 具体的には、一般のサポーターやクラブ会員、そして「サンパウロを愛するすべての人たち」にも枠を広げてダイレクター養成講座を行い、「誰でも将来、クラブで何らかの役割を担うための準備ができる」ことを広めようとしている。カカーはその手伝いもすることになる。

 FIFAワールドカップやUEFAチャンピオンズリーグで活躍し、2007年にはFIFA最優秀選手賞も獲得したスター選手が、引退後、レベルの高い機関でハードに勉強し、現場で研修を重ねる。カカーは現代的かつ非常に堅実な方法で第2の人生を歩んでいる。


Photos: Kiyomi Fujiwara, Miguel Schincariol/saopaulofc.net, Rubens Chiri/saopaulofc.net, Getty Images

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オーランド・シティカカーサンパウロミランレアル・マドリー

Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。