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「もっと上に行ける」「簡単に上を目指すなんて言えない」…関根大輝が激動のランス挑戦半年で自覚した成長と現在地

2025.06.22

Allez!ランスのライオン軍団
2024-25シーズン総括
 #4

待ち受けていた「地獄」の結末。伊東純也と中村敬斗の両エースが牽引し、冬には関根大輝が加わった今季、スタッド・ランスはフランス・リーグ1で16位、入れ替え戦の末に7季ぶりの2部降格を余儀なくされた。その奮闘模様を定点観測してきた連載コラムの特別編として、若き獅子軍団の、そして3兄弟それぞれの2024-25シーズンを振り返る。

4回は、本人の言葉とともに回想する関根の半年間。「世界で活躍する」ために何が必要か、22歳のDFが初の海外挑戦で得たものとは?

 今年の1月12日にJ1の柏レイソルからスタッド・ランスに入団した関根大輝。

 Jリーグの2024シーズンを終えたオフ中の移籍だったため、合流後はコンディション調整に時間をかけ、14日のフランス杯ラウンド32と19日のリーグ1第18節は招集外。続く25日の第19節パリ・サンジェルマン(PSG)戦で初めてメンバー入りし、後半アディショナルタイムに伊東純也と交代してフランスリーグのピッチを踏んだ。

 そこからはカップ戦、そしてレギュラーシーズン終了後の入れ替えプレーオフも含めて全試合でメンバー入り。リーグ1では出場した15試合中9試合で先発、うち8試合でフル出場した。

 プロキャリア2年目、22歳での海外リーグ初挑戦。タフな経験になることは予想していたと思うが、加入早々に監督交代6連敗フランスカップ決勝進出、そしてプレーオフを経てのリーグ2降格など、アップダウンに満ちたランスでの4カ月半は、彼自身の想像を超える濃いものとなった。

 そんな関根の半シーズンを、彼の軌跡を追いながら、ご本人の言葉とともに振り返りたい。

デビューがPSG、まったく動じない肝の据わり方を見せる

 記念すべきデビュー戦は、なんとパルク・デ・プランスでのPSG戦

 中村敬斗の同点ゴールで1-1に追いつき、ランスファンが「あと数分、なんとか守り切って勝ち点1を持ち帰りたい!」と祈るように時計を見つめていたアディショナルタイム、関根は伊東に代わってピッチに送り出された。

 どんな時間帯だろうと点を奪いにくるPSGを前に、ラストミニッツでの失点だけは避けたい緊迫した山場だったが、そんな状況もなんのその、本人は初出場に胸を躍らせていた。

 「出られてシンプルにうれしかったんで、特にそこまで緊張はしてなかったです」

 試合では一度、対面した左SBヌーノ・メンデスにぶち破られるシーンがあったが、ランスはドローのまま試合を終え、関根はデビュー戦を、フランス王者相手に勝ち点1、という価値ある結果で飾ったのだった。

 「スピードや個々の技術の部分で、必ず何かしら特徴を持った選手がいる中で、一瞬のスピードだったり、そういう選手の凄さが全然違うなと感じました」

 というのが、PSGと相まみえた関根の感想。そして2度目の対戦は、4カ月後に訪れることになるのだった……。

目標としたい存在との衝撃的な出会い

 このPSG戦では前出の左SBヌーノ・メンデスに、関根は衝撃を受けた。

 「本当に数分でしたけど、マッチアップした時の印象が衝撃的すぎた」

 では、彼のどういうところが凄いのか?

 「ベンチで見てても、純也くんがボールを持った時の寄せのスピードだったり、まずシンプルに速い。(CLの)リバプール戦を見てて思ったのは、サラーを相手に完全に中を切って、縦に誘導させてから(ボールを)取り切っていた。普通あんな守備の仕方をしたら縦にぶち抜かれて終わりだと思うんですけど、それで取り切る力があるっていうのは凄いと思います。あの試合で『ああいう存在感の出し方ってあるんだ』って。

 今まではアシストとか攻撃で数字を残す部分にこだわっていた部分がちょっとあったんですけど、そういうところでも目立てるんだなっていうのは、 彼を見て思いました。日本代表に行った時も、本当にみんなが『アイツはヤバい』と言っていたので」

リーグ戦4試合目にして初先発&フル出場

 「行ったり来たりが激しいので、その上下動で使う力だったり、90分出るとなった時に最後に落ちた部分もあるので、そこの力の使い方だったり。もちろん全力でやっているんですけど、全部100ではできないので、試合の流れをもっと読んで。展開の速さには、これからどんどん慣れていけるかな、と思いました」

 というのが、第23節レンヌ戦(●1-0)で、初めてリーグ1で90分プレーして感じた難しさ。でも、手ごたえも得られた初のフル出場だった。

 「(仕掛けて)行く場面では、フィジカルの部分だったり、スピードや一瞬の出だしの部分で手ごたえをつかめた感じがある。今日は負けちゃいましたけど、個人的にはすごく収穫のある試合だったと思います!」

偶然の再会で自分の成長を実感

 このレンヌ戦でマッチアップしたアドリアン・トリュフェールは、2024年のパリ五輪直前に行われたU-23代表戦、フランス対日本(△1-1)でも関根が対面した相手だった。

 「相手の左ウイングバックの選手は、オリンピック前の親善試合でマッチアップしている選手。その時はけっこう僕らがフランスにやられていたのもありますし、個人的にも全然相手に通用しなかったという印象でした。それで今日またマッチアップして、クロスを上げられた場面もありましたけど、前半は1対1でボールを取り切ったり、あの試合から半年くらい経って、ちゃんと成長できてるんだな、というのを同じ相手とやったことで実感できた。なので、ここでのプレーに慣れていけばもっと上に行けるな、というのは感じました」

フランス杯準々決勝でプロ初アシスト

 2月25日のアンジェ戦(1-1/PK戦○3-5)、79分に中村がヘディングで決めた先制点をお膳立てしたのは、関根の右からのクロスだった。

「去年、Jリーグではゼロだったので、初アシストをここで早い段階でできて、やっぱりそういうところでチームメイトの信頼も得られると思いますし、この結果という部分はすごく意識していたので、決めてくれた敬斗くんに感謝です。

 純也くんもあそこで囮(おとり)になってくれたから、敬斗くんが(ゴール前に)入れたと思いますし。3人の連係は、パス回しだったりいい感じで、一番コミュニケーションが取れて流れるように繋がっていけるんで、それが今日、やっと点に繋がって良かったです!」

 「あれは俺の囮のおかげ」(伊東)

 「アイツからもらわないと、いろいろ」(中村)

 兄さんたちからもいじられていたランス兄弟末っ子であった。

純也くん、敬斗くんとの好連係の秘密

……

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Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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