ついに監督解任。伊東純也と中村敬斗が渦中で語っていた戸惑い、関根大輝というランスの希望

Allez!ランスのライオン軍団 #7
大好評のスタッド・ランス取材レポートが連載化! 伊東純也と中村敬斗の奮闘ぶり、欧州参戦を目指す若き獅子たちの最新動向を、現地フランスから小川由紀子が裏話も満載でお届けする。
第7回は、リーグ1第19節パリ・サンジェルマン戦(1-1)、第20節ナント戦(1-2)を経て、9戦未勝利(5分4敗)でルカ・エルスナー監督が解任された激動の2週間を。その舞台裏では何が起きていたのか。
伊東「あれでやられていたらお話にならないと思います」
スタッド・ランスは、長く暗いトンネルの中にいる……。
2月2日に行われた第20節のナント戦。勝ち点4差で彼らを追う相手に1-2で敗れると、試合後のロッカールーム付近からは、異様な緊張感が漂ってきた。
いつもなら、荷物を運び出す用具係などひっきりなしに人が行き来する騒がしい通路が、シンと静まり返っている。少し前から現実味を帯びていたルカ・エルスナー監督の更迭。そのXデーがついに来た、という気配は最高潮に高まっていた。
それでもいつも通りの落ち着いた様子で会見に姿を現したスロベニア人指揮官は、「自分が負うべき責任は自分が負う。しかしそれが(この状況における)すべての責任かどうかはわかりかねる」と思いを語った。
“絶対に勝たなければならない”という意気込みで臨んだこのホーム戦。42分に先制されるも、前半のアディショナルタイムに伊東純也の左CKが相手のオウンゴールを誘発する。試合を振り出しに戻してハーフタイムに突入という流れに、「今日の風向きはランスにあり」かと思われた。
ところが70分、3人がかりで止めに行った相手ウインガーにクロスを出され、痛恨の勝ち越し点を許してしまう。
試合の終盤になると、ピッチ上の選手たちは目に見えて苛立った様子で、CBセドリック・キプレは若いMFバランタン・アタンガナを怒鳴りつけ、CBジョゼフ・オクムは相手との接触でイエローカードをもらった後、審判に暴言を吐いて即退場となる始末(いつもランスに取材に来ている『BBCワールド』のアフリカ担当記者は、「ケガばっかりして、治って出てきたと思ったら暴言で退場。こいつはバカすぎる!!」とオクムを猛烈にこき下ろしていた)。
ともにフル出場した伊東純也と中村敬斗は、なんとか勝機を手繰り寄せようと最後まで奮闘したが、勝ち点を失った状態で終了のホイッスルを聞くと、2人とも両手を腰にあてた姿勢のまま、呆然とその場に立ち尽くしていた。
「やばいですね……さすがに今日負けちゃったのは。相手もチャンスはなかったんですけど、裏1本で……。2失点目とか、こっちは3人で(相手を)囲んでましたからね。1-1になった時は『今日いけるな!』と思ったんですけど……」
いつもは歯切れがいい中村の口調も重い。
同点ゴールの起点を作った伊東も、「こういう時こそ俺がなんとかしないといけないんですけど、今日はクオリティ的にはそんなに良くなかった」と自分の責任も感じながら敗戦を悔いた。
「自分たちより(順位が)下のチームですし、最低でも引き分けが必要だったし、勝たなきゃいけない試合でした。(うまくいかなかった)原因はいっぱいあると思います。自分のクオリティも今日は良くなかった。強いて言うなら、失点は防げたと思います。2点目は特に。1対3くらいだったんで。あれでやられていたらお話にならないと思います。
1点目もシンプルに裏抜けされて。攻撃陣も良くなかったけど、最低でも1点防げていれば、1-1で終わっていた試合だった……最低でも勝ち点1は取らないといけなかった。自分たちより(順位が)低い相手に勝ち点を与えるのは本当に良くないと思います」


中村「わかんないです…」、伊東「みんなおどおどプレーしている」
リーグ戦で9試合、勝ち星なし(5分4敗)。この約2カ月半の間で手に入れた勝ち点はわずか5。
序盤戦は第2節から6戦無敗をキープし(4勝2分)、一時は4位まで浮上して欧州カップ戦出場権獲得を目標にしていた。それが一転、リーグ2降格の危機がちらついているという状況に、一番戸惑っているのは選手たち、というように見える。……



Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。