かつては強靭なフィジカルと直線的な攻撃参加を武器にしていた三竿雄斗。しかし大分トリニータへ戻ってきた彼のプレーには、以前とは異なる変化があった。相手の逆を取るボディフェイント、無駄のないターン、広がった視野。その背景にあったのは、筋力ではなく身体の使い方を見直す「重心力トレーニング」との出会いだった。身体の構造を理解し、より自然に動くことで、サッカー選手のプレーはどう変わるのか。
相手2人の間を抜くCB。三竿雄斗に起きた変化
2026年5月10日、百年構想リーグ地域リーグラウンドWEST-Bグループ第16節・大分トリニータ対サガン鳥栖戦の51分。攻め上がったCB三竿雄斗が巧みに相手を剥がす場面があった。
パス交換を交えながらアタッキングサードに進入した三竿はエリア左で挟みに来た2人の相手の間を抜き、後手に回った相手に倒されてFKを獲得。何気なく見えるシーンだが、試合ハイライトのスロー映像で確認すると、三竿の細やかな身体操作がしっかりと見て取れる。DAZN解説を担当していた下平隆宏氏も「誘っておいて2人の間をスッと通る。上手かったですね」と称えた。
実はこの一連の起点となったシーンでも、三竿はボディフェイントで相手を剥がしている。逆サイドからのパスを受けた三竿に寄せてきた玄理吾が、逆を取られて大きくバランスを崩した。三竿自身は特に大きく動作していないが、絶妙な間合いでの一瞬の動きで相手を惑わせていた。
🔵🟡トリテン 更新情報🐢
/#トリテン 更新‼️
\#勝利へのカギ に明治安田J2・J3百年構想リーグ
WEST-B第16節
H #サガン鳥栖 戦に出場した#三竿雄斗 選手の記事を掲載しました✒️【インタビュー】DF 6 三竿雄斗「全員が共通認識を持っていればもっと戦えた」https://t.co/TJwB65TBpE pic.twitter.com/LTrUf6fmgS
— 大分トリニータ / Oita Trinita (@TRINITAofficial) May 11, 2026
わずかな胸骨の動きで相手を剥がす。ボディフェイントの秘密
この2つのシーンにおけるボディフェイントは、ともに胸骨の細かい動きにより実現していると考えられる。相手が寄せてくるスピードを上げた瞬間を見極めて腰の向きを変えることなく上半身をずらしたため、対峙する相手は三竿の体が回転したと錯覚。だが、実際には体の向きは変わっておらず、ただ前進するだけで相手は剥がれてしまう。
三竿がしばしばこのような細かい身体操作をしていることに気づいたのは昨夏、2度目に大分トリニータに加入してからのことだった。2019年に鹿島から完全移籍加入して4シーズン所属していた間には見られなかったプレーだ。当時は大卒後にプロデビューした湘南ベルマーレで活躍していた頃のような、直線的な攻め上がりやコンタクトの強靭さで勝負するイメージだった。大分を離れてから再び戻ってくるまでの2年半の間に、何があったのか。
🔵🟡トップチーム情報🐢⚽
/
完全移籍加入のお知らせ‼️
\この度、#三竿雄斗 選手が完全移籍にて加入することが決定いたしました。👏👏👏
🔹詳しくは⏬https://t.co/OASbP33VGf#大分トリニータ #trinita #力戦奮闘 #クラド1万人 pic.twitter.com/LPcTq9nTK3
— 大分トリニータ / Oita Trinita (@TRINITAofficial) July 27, 2025
“無駄な力を使わない”プレーが生み出す効果
その大きなターニングポイントは、あるトレーニングとの出会いだった。もとより体のちょっとした違和感に敏感で、自らを「マニア」と称するほどに多彩なトレーニングを試していた三竿が、その中で「これだ」と感じるものに行き当たったのだという。
「これを始めてから、自分のイメージ通りに体が勝手に動くようになったんです。それまでは逆を取られて追う時に一瞬の遅れで抜かれてしまったり、切り返した後に1歩目2歩目がちょっと遅れてしまったりということがあったんですけど、ここ最近は今までで一番動きやすいと感じています」
それが「重心力トレーニング」だった。最初はパーソナルジムで姿勢矯正のトレーニングを受講し、それを修了した後、理論の創始者に教えを請うべく門を叩いた。ちょうどパース・グローリーFCへの移籍が決まり、オーストラリアへと渡る直前のことだ。まず対面で基本のメニューと理論を教わり、オーストラリアでの半年間はオンラインで講座を受け続けた。
「重心移動にともなう体の自然な動きを使いこなすんです。前に出る時やボールを蹴る時、ターンする時などに、足を踏ん張るのではなく、素早い重心移動で自然に動く。無駄な力を使わないので脚や腕の筋肉に負荷がかからないし、動き自体が小さいのでマッチアップする相手に読まれづらいのもあります」(三竿)
「仮面の男」が追求した、力みに頼らない身体操作
WEBで「重心力トレーニング」と検索するとたくさんの動画が出てくる。仮面を装着した男性が簡単な体操を無言で実践しており、短い文章による説明が添えられている。動画の中にはリオネル・メッシやネイマールらの動きを模写して身体操作の仕組みを解説したものもあり、「この男、何者…?」と胸が騒ぐのだが、その仮面男こそが「重心力トレーニング」創始者の「本のセンセ」だった。
……
Profile
ひぐらしひなつ
大分県中津市生まれの大分を拠点とするサッカーライター。大分トリニータ公式コンテンツ「トリテン」などに執筆、エルゴラッソ大分担当。著書『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカー・クロニクル』。最新刊は2023年3月『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』。 note:https://note.com/windegg
