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【スウェーデン戦レビュー】ロングボールへの苦戦は変わらずも1-1。日本に貴重な先制点をもたらした瀬古の勇気とは?

2026.06.28

北中米W杯日本戦徹底解剖#6

北中米W杯へ向けて進化を続ける森保ジャパン。その戦いを『森保JAPAN戦術レポート』(小社刊)の著者・らいかーると氏と、ボローニャやミラン、イタリア代表などで分析官兼コーチを歴任し、FIGC(イタリアサッカー連盟)ではアナリスト講座の講師も務めるレナート・バルディが徹底解剖。配置、狙い、駆け引き――日本代表戦に潜む戦術の深層を、それぞれの視点から読み解く。

第6回ではらいかーると氏が、ロングボールとスクランブルアタックに苦しんだスウェーデン戦(1-1)をレビュー。日本に貴重な先制点をもたらした瀬古歩夢の勇気とは?

ミラーゲームとロングボールの先にあるもの

 北中米W杯のグループステージは、どこか静かな試合が多かった印象だ。3位でも決勝トーナメントに進出できる可能性が残されるという新レギュレーションにおいて、勝ち点1の重みが増しているのかもしれない。普段着で試合をするというよりは、リスクマネージメントに熱心なチームが多い大会となっている。

 そんな中、開幕2戦1勝1分でグループF2位の日本。大差で敗れるようなことがない限り、グループステージ突破をほぼ確実にしながらも最終順位、すなわちラウンド32の対戦相手を決めるべく迎えた第3節は、勝ち点1差で3位のスウェーデンによるコーナーキック連打から始まった。トッテナムのアシスタントコーチがセットプレーコーチを兼任しているというスウェーデンは、そのコーチがかつて在籍したアーセナルの代名詞となっているGKの周囲を固める形をアレンジしているように見える。イングランドのプレミアリーグでの近年ではもちろん、日本の2種年代では遥か昔からお馴染みだった全員集合を、2026年のW杯で目撃することになるとは。想像すらしていなかったことも記しておきたい。

 GK鈴木彩艶の勇気のある飛び出しで、スウェーデンへの高さ対策を披露した日本。セットプレーの流れがしばらく続いたので、全員が本来のポジションに戻るまで時間かかる幕開けとなった。これまでの試合よりは多少の慌ただしさを感じさせる両者だったが、この一戦も例外にはならずリスク管理を重視した展開となっていく。

 スウェーデンの配置を整理していこう。ボール保持は[3-4-3]、非保持は[5-4-1]。相手のゴールキック時は、ハイプレッシングを強く志向してくる。本来なら[3-2-5]と表記したいところだが、右ウイングのアンソニー・エランガを含めた3トップでどうにかするという意思が強そうだったので、[3-4-3]とすることにした。なお日本はいつも通り、ボール保持が[3-2-5]で非保持は[5-4-1]である。

 前節まで日本は左肩上がり、例えば左シャドーがCFの脇周辺に出てきて[4-4-2]のような形で守ることもあった。しかし、この試合ではオーソドックスな[5-2-3]と[5-4-1]をDFラインの高さに応じて使い分けている。勘の良い方ならお気づきだと思うが、ミラーゲームとなりやすい構造だ。配置ががっつりと噛み合う中、お互いにどのような解決策を見出すのか。

 GKヤコブ・ビデル・ゼッテルストロームまでハイプレッシングを仕掛ける日本は、スウェーデンにボールを保持させたくない計画だったのだろう。グレアム・ポッター監督就任以降のスウェーデンは、3バックによるポゼッションにこだわりを見せるようになった。そこに重きを置くスタイルで出世したポッター監督なので当然の流れだが、突貫工事で仕上げているので精度自体はまだ高くない。ハイプレッシングで破壊できるだろうという日本の計算は、妥当なスカウティングと言って差し支えないだろう。

 結果としてスウェーデンは、ゼッテルストロームまでボールを下げて蹴っ飛ばしていく。論理的な流れだが、日本からすると地上戦のほうが分がありそうな対ロングボール大作戦となった。背中で相手を抑えられるCFのビクトル・ギェケレシュと、CBの瀬古歩夢とウイングバックの菅原由勢が守る右サイドで空中戦の的になれる、左ウイングのアレクサンデル・イサクの役割は、スウェーデンがボールを前進させる上で重要度を増していた。

 アジアカップで露呈したように、相手のCBやGKによる放り込みを日本は苦手としている。この試合でも、跳ね返すことはできてもラインを割ったり、セカンドボールを拾われたりと苦戦模様であったことは見逃せない。ただし、この作戦を仕掛けてくるチームが世界的に少なくなってきている流れは、日本にとって幸運かもしれない。

 だったら、それを誘導するようなハイプレッシングを行わなければいいじゃないか!と思うかもしれないが、ベスト16よりも上を目指す日本にとっては、いずれ避けては通れない道であることも間違いないだろう。もちろん、すでにグループステージ突破を手中に収めかけている日本だったので、自分たちが普段から積み重ねてきた習慣を曲げてまで取り組むつもりもなかったのかもしれないけれど。

 15分が経過すると、スウェーデンのロングボールにやや手を煩わせていた日本は、ハイプレッシングに出ないようになっていく。予定通りのペースダウンである可能性が高いが、相手の出し手よりも受け手への対策を優先した変更とも言えるだろう。なお、菅原サイドに蹴ることの多かったスウェーデンは、どのエリアでも空中戦で優位に立てるんじゃないかと考えたのか、中央も狙ってくるように変化していった。

 スウェーデンの[5-2-3]でのプレッシングに対して、日本は右ボランチの田中碧、ときどき左ボランチの鎌田大地のサリーダ・ラボルピアーナで、[4-1-5]への可変を見せる。SB化する左CBの伊藤洋輝、瀬古の攻撃参加を促す形だ。ただし、序盤に関しては中村敬斗と菅原の両ウイングバックと、前田大然と堂安律の両シャドーに攻撃を任せ、中盤2枚は後方支援に徹する場面が多かった。なお、堂安と前田というコンビの珍しさもあってか、今大会で頻出している逆サイドへの出張がスムーズに機能するまでに時間を要することになっている。

判定基準だけじゃない。日本に重なった不運の正体

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Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』 (小学館)。

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