【原口元気×ポープ・ウィリアム×倍井謙】ベールスホットで体感するそれぞれの『This is Life』
ベルギー2部ベールスホットで共闘する原口元気、ポープ・ウィリアム、倍井謙。欧州帰還を選んだベテラン、直感で飛び込んだ守護神、慎重な決断の末に海を渡った若きアタッカー。それぞれ異なる理由で集った3人は、異国の地で何を感じているのか。
昇格を逃した悔しさも、整っているとは言い難い環境も、文化の違いも、そのすべてを受け入れるような言葉が、ベールスホットにはあった。
『This is Life』
移籍の舞台裏からベルギーでの日常、そして未来への展望まで。3人が語る海外挑戦の現在地(編注:取材後の6月20日、倍井謙選手が期限付き移籍満了でチームを離れることが発表された)。
「来たらいいんじゃない?」3人をベルギーへ導いた、それぞれの決断
――まずはベールスホットへ移籍を決めた理由について、お一人ずつ教えていただけますか?
原口元気(以下、原口)「やっぱりヨーロッパに戻りたい気持ちがあったので、浦和とは1年半契約で、そのチャレンジが終わったらヨーロッパに戻ることは決めていました。そこにベールスホットがチャンスをくれて、戻るのが3~4カ月早くなった感じです。他にもオファーはいくつかあったけど、セカンドキャリアについても考えた上で、選手と指導者へのチャレンジを同時に進められる環境を探す中で、一番はベールスホットでした。ベルギーのチームは基本的に英語なので、ドイツ語だけだと世界で指導者をやっていく上で不利になるので、英語を話す環境に行ってみたいな、と。あとはシント=トロイデンのように日本企業が買収して新しいクラブを作るプロジェクトという点も魅力的だなと思いました」
ポープ・ウィリアム(以下、ポープ)「僕は単純に面白そうだなって。ヨーロッパでサッカーができる機会はなかなかないし、ましてやGKというポジションに限ってはフィールドの選手よりハードルが高いことは事実としてあって、話をもらった時に『面白そう。行ってみよう』と。僕に関しては(オファーが来たのが)移籍市場が閉まる2日前とかだったので、スピード感を持ってやらないと市場が閉まってしまう。細かい話なんてせずに『行きます』と返事して、荷物をまとめて、ビザの申請に必要なものなどを準備してとバタバタ。決断して旅立つまで本当に短くて、3、4日のレベルでした。ただ、家族と離れることだけが寂しい。息子だったり奥さんだったり、長い期間会えない状況は今までなかったので、そこだけは気になったけど、まあ何とかなるだろう、楽しそうだな、トライしよう、という感じでした」
――即断即決。原口さんも今、すごくうなずいていましたけど、同じ経験があります?
原口「そんなのばっかですよ。移籍なんて二つ返事で、特にヨーロッパにいると明日は違うチームにいることなんて、ザラです。僕も夏のウィンドウの最後5日くらいでしたけど、話をもらってすぐに決めました。それが普通ですよ」

――なるほど。同じ質問として、倍井さんにも移籍を決めた理由を教えてもらえますか?
倍井謙(以下、倍井)「僕はもともと海外でやりたい気持ちは強かったけど、そういう機会がないままずっと来ていて、自分的にはこの半年はジュビロでやるとほぼ決めていました。ただ、決めた後ぐらいにベールスホットからお話をいただいたので、その時はいろいろな感情がありました。僕は2人に比べて、すごく時間をかけて悩んでしまって……今の自分的にどっちでプレーするのが、今後のキャリアが良い方向へ進むのかを考えた上での決断でした。僕より若くて海外で活躍している選手がたくさんいる中で、自分は割と慎重にステップの踏み方を意識し過ぎたというか、それが移籍の決断に時間がかかってしまった原因なんですけど、いろいろな選手に相談したり、それこそ全く知らない状態で(先にチームに所属していた原口)元気さんに相談してしまったし、その上で、自分が納得感を持ってから、決めたのかなと思います」
――原口さんはどんなアドバイスを?
原口「いや別に、『来たらいいんじゃない?』と。基本的にボールを支配できるチームだから、謙が来ればアクションの回数は多いと思うし、2部とはいえ昇格すれば1部だし、昇格しなくても数字を残せば、自分がステップアップできる可能性もある。ヨーロッパの市場に来てしまえば、日本にいるよりも可能性は広がるので、まあ来た方がいいんじゃない? という話はしました」
倍井「いただいたアドバイスは、かなり決め手になりましたね。実際にクラブの中でやっている選手だし、僕からしたらレジェンドですから。いろんな人に相談しましたけど、みんな言うことが違って、逆に自分をなくしかけたというか。やっぱり環境面で、日本のJ1は素晴らしいスタジアムが多いけど、それに比べてベルギーはどうとか、練習場がどうとか、いろいろな要素があるからよく考えて決めた方がいい、と。本来は自分で決めるタイプですけど、話を聞くうちに慎重になり過ぎてしまって。そんな中で、元気さんの話はすごく決め手になりました」

「わきまえる」が存在しない世界。ベールスホットで触れた異なる価値観
――ベールスホットに来て、思ったこと、感じたことは何かありますか?
原口「チームの雰囲気が良いよね」
ポープ「めちゃくちゃ良いです。こんな感じなんだ、って。僕は日本でしかプレーして来なかったので、監督がハリー・キューウェルさんとか、スティーブ・ホランドさんとか、外国人の監督とも一緒にやったことがありますけど、こっちはすごくフランクというか、フラット。移籍してみて、本当に分け隔てないというか、上下関係がそもそも存在しないし、ファミリー感が強いクラブだなって」
原口「そう。ここに来て、一番救われたのはポープだね。ポープが一番、日本文化不適合者だから(笑)」
ポープ「いや、誰が言ってるんですか(笑)」

原口「謙はどうだったの?」
倍井「どうですかね。他とは比べようがないけど、雰囲気は良いなと思います。ただ、言語の部分で、自分はまだ英語も話せないですし」
ポープ「わかったフリするし(笑)」
倍井「わかったフリするし、愛想笑いもするし(笑)。英語を話せるようになったら、もっとワーッとしゃべれるんでしょうけど」
原口「でも来て、2週間ぐらいでクラブで踊ってたじゃん。英語しゃべれないのに」
倍井「いやいや……行ったけど(笑)」
ポープ「まあでもさ、文化として試合が終わった後に爆音で音楽流して、みんなでピザ食って、みたいなこと、日本では絶対にないんですよ。試合後にピザ食うとか。そういうのも全部、僕は新鮮すぎて。謙はそれとか、どう思ってたの?」
倍井「うーん、時と場合によるかな。良いなと思う時もあるし、でも自分のプレーに納得できない時は、『うっせえな』と思ってた(笑)」

――ちなみに、あまり良くないプレーをしたチームメイトは、どんな様子で“ピザ会”にいるんですか?
ポープ「基本的に気にしてないですよね」
原口「うん。気にしてない」
大きなミスをした本人が言う。『This is Life』
ポープ「日本人とはそもそも問題の捉え方が違うというか」
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Profile
清水 英斗
サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』『日本サッカーを強くする観戦力 決定力は誤解されている』『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。
