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「行ってよかった」イングランド3部で積んだ経験を生かしていざプレミア昇格へ。岩田智輝と振り返るバーミンガムでの1年(後編)

2025.07.18

昨夏の移籍市場で驚きをもって伝えられた日本人選手の動向の1つが、岩田智輝のセルティックからバーミンガム・シティへの移籍だった。スコットランドの名門を離れ、イングランドの3部に移った2022シーズンのJリーグMVPは、加入直後より不動の中盤として君臨。チームのEFLリーグ1優勝&チャンピオンシップ復帰を支えた1年を本人が振り返るインタビューを、2025-26シーズン開幕に先駆けて前後編に分けてお届けする(取材日:6月11日)。

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「削られる」サッカーを戦い抜けた秘密は治療と筋トレ

――今シーズンはキャリア最多となる公式戦通算8得点をマークしました。自分で振り返ってみて、その要因となった部分はありますか?

 「毎回いろんなインタビューで聞かれるんですが、運ですね。本当に運だなと思います。ただ1つ挙げるとすれば、1年通してボランチでプレーできたことは大きかったと思います。これまでのプロキャリアで中盤で1年通して出続けるというのは一度もなかったので、コンスタントにケガなく出続けられたのが大きな理由なのかなと。(ペナルティエリア付近でボールを持った時にファンから上がる) ”Shoooo” の声が聞こえることもあります。それによってシュートを打とうとはまったく思わないですけどね。でも、それで相手もシュートを警戒してくるので、いいフェイントにはなってくれています」

――8ゴールの中で一番印象的だったのは?

 「印象的なのは(FAカップ4回戦)ニューカッスル戦のゴールが一番だと思いますね。日本に帰ってきてからもいろんな方に言われますし、プレミアのチーム相手にあの雰囲気の中で決められたというのは、自分のプロキャリアの中でも一番いいゴールでした。入る確信はなかったですが、『ここにこぼれてくるだろうな、こぼれてきた、このコースが見えたからここに打とう』くらいの感じで。たまたま見えたコースに打ったのがうまく行ったという感じです。

 それにゴールの瞬間の歓声も凄かったです。まず海外に行ってプレーしたい理由の一つとして、ああいう雰囲気の中でプレーしたいとずっと思っていたので、あの満員のスタジアムであの雰囲気でできたというのが、本当に選手として幸せなことだと思います。あの試合に限らず、スタジアムは毎週のようにほぼ満員になっていたので、本当に凄いなと思っていました」

――「毎週のように」といえば、EFLの1つの特徴として過密日程が挙げられると思います。昨シーズンのバーミンガムはリーグ戦の46試合に加えてカップ戦3つを加えると公式戦60試合(岩田加入前の消化分も含む)を戦いました。特に年末年始などは12日間で5試合を戦い、その全試合先発したのはチーム内でMFビラム・ビラムソンと岩田選手だけ、しかも岩田選手に関しては5試合目で73分に交代するまでフル出場でした。その中でも大きなケガなくシーズンを乗り切りましたが、コンディショニング面についてはどう振り返られますか?

 「自分の中でも手応えがありました。その1つの理由として、セルティックでの最後のシーズンの途中から同級生の紹介で知り合った日本のトレーナーの方に定期的に診てもらっていて、その方にオンラインで電気治療をやってもらっているんです。なので多少痛いところがあっても『そこ電気当ててみて』という感じで診察してくださるので、それで大きなケガも軽傷になるというのが結構ありました。削られることも多かったですが、しっかりケアができましたね。もちろん日本食を含めたご飯を作ってくれた妻のおかげもありますし、本当にいろんな方のおかげで1年通してケガなくできたと思います」

――「削られる」という話が出ましたが、移籍する前と後でリーグに対して持っていたイメージは変わりましたか?

……

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EFLEFLリーグ1チャンピオンシップバーミンガム岩田智輝文化

Profile

秋吉 圭(EFLから見るフットボール)

1996年生まれ。高校時代にEFL(英2、3、4部)についての発信活動を開始し、社会学的な視点やUnderlying Dataを用いた独自の角度を意識しながら、「世界最高の下部リーグ」と信じるEFLの幅広い魅力を伝えるべく執筆を行う。小学5年生からのバーミンガムファンで、2023-24シーズンには1年間現地に移住しカップ戦も含めた全試合観戦を達成し、クラブが選ぶ同季の年間最優秀サポーター賞を受賞した。X:@Japanesethe72

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