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育成大国ベルギーとイングランドに学ぶ、小学生指導における3つの心得

2020.06.27

新型コロナウイルスの影響により外出規制があったヨーロッパ。欧州サッカー全体が止まる中、各国サッカー協会の関係者はウェビナーを数多く実施。現場に立てない指導者に、自宅での知識のアップデートを促していた。

その1つに、ベルギーサッカー協会の指導者養成責任者であり同国女子代表のアシスタントコーチでもあるクリス・ファン・デル・ハーゲンと、イングランドサッカー協会(FA)の小学生年代の育成責任者ピート・スタージスの対談がある。近年、トッププレーヤーを輩出し続けている2カ国の責任者の言葉は、小学生年代の指導者にとって示唆に富むものばかり。実際にイングランドで指導にあたっていたマーレー志雄氏に、彼らの発言を3つのポイントから紹介してもらった。

1. 個人が育つ環境を作り、提供すること

 このウェビナーで最初に投げかけられたのは「子供たちがフットボールを楽しむために何ができるか?」という質問だ。この問いに対し、ファン・デル・ハーゲンは「小学生年代の重要性を国全体で共有すること」を挙げた。

 「指導者はえてして指導する年代が上がれば上がるほど自分が偉く、より良いコーチになっていると考えている。だが、U-7~9の指導者はU-19と同等か、それ以上に重要な役職だ。U-7~9の選手たちはフットボールのことは何も知らないが、U-19の選手はフットボールとは何かをかなりわかってきている。そういう意味では、小さな子供を教える方が圧倒的に難しいはずだ。ベルギーでは6~7歳を指導するためのスペシャリストコースがある。そういったことが大きな違いを生み出すのだ」

 その理由としてスタージスは、小学生年代の指導者に「子供たちの初めてのスポーツや運動を成功体験に導く」重大な役割があることを強調。

 「もしポジティブで記憶に残り、子供たちが楽しみ、指導者や友達と繋がりが作れたなら、次も参加してくれる。感情的な繋がりがそうしてくれるのだ。もう少し大きな観点から見ると、運動と学校での学習には強い相関がある。だからこそ、子供たちには運動を好きになり、生涯にわたって運動によるメリットを受けてほしい」……

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クリス・ファン・デル・ハーゲンピート・スタージス育成

Profile

マーレー志雄

1993年、滋賀県生まれ。日本で3年間の指導経験を積んだ後、イングランドで指導者ライセンスを取得するためにサウサンプトン・ソレント大学のフットボール学科へ。現地でU-12の男子チームから大学の女子チームまで幅広いカテゴリーを指導し、現在は同大学のスポーツ科学&パフォーマンス指導学科で修士課程に進んでいる。Twitter:@ShionMurray

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