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モウリーニョのリバプール対策、そして南野拓実のプレミアデビューは?

2020.01.11

2位に勝ち点13差をつけて独走するリバプール。その無敗の進撃を止めるクラブは現れるのか――日本時間1月11日(土)26時半にキックオフを迎える一戦では、トッテナムがそのミッションに挑む。

今回は、ホームでリバプールを迎え撃つトッテナムの視点からモウリーニョがいかな策を講じるのか、そして注目集まる南野拓実のプレミアデビューの可能性について、西部謙司さんに展望してもらった。

 ジョゼ・モウリーニョ監督がシーズン途中で就任するも、いま一つ調子の上がらないままのトッテナム。そんな中で迎えるのは、UCL王者にしてプレミアリーグで首位を快走するリバプールだ。

 ここ14試合でスパーズはリバプールに対してわずか1勝しかしておらず、4分9敗とまったく歯が立っていない(プレミアリーグのみ。公式戦に広げるとさらに黒星が2つ増える)。昨季のUCL決勝を戦った時は、実力差はほとんどなかった両者。ところが、今では大きく差が開いてしまった。

 モウリーニョ監督にとっては負傷者続出が痛い。エースストライカーのハリー・ケインとMFムサ・シソコが長期離脱となり、GKウーゴ・ロリスやMFタンギ・エンドンベレもまだ復帰できていない。ソン・フンミンが出場停止から戻ってくるのは朗報だが、移籍が噂されるクリスティアン・エリクセンはベストの状態にはなく、トビー・アルデルワイレルトとヤン・フェルトンゲンのベルギー代表コンビも綻びが目立つようになった。リバプールに対抗するにはあまりにも準備ができていない。ただ、モウリーニョは歴戦の知将であり、実力差を縮める、あるいはひっくり返すための策を練るはずだ。

 リバプールの特徴はスピードと強度。スペースがあるうちに素早く攻め込み、モハメド・サラー、サディオ・マネの速さを生かす。多少無理なロングパスでもサラー、マネはマイボールにしてくれるし、相手に奪われたとしてもプレッシャーはかけられる。その間にチーム全体を押し上げて敵陣でハイプレスをかけて奪い、波状攻撃を繰り出していく。このリバプールのリズムに耐え切れるチームはない。守備に不安のあるスパーズとすれば、撃ち合うのはかなり危険な賭けになる。

 定石はDFラインを低い位置に構えてスペースを消し、リバプールにボールを持たせても粘り強く対応して侵入させないことだ。今季はポジショナルプレーの要素も採り入れてポゼッションからの攻撃も進化させているリバプールとはいえ、速攻に比べれば遅攻はそこまで威力がない。

 しかし、リバプールを自陣に引き入れることには別のリスクがある。

公式戦ここ3試合勝利なしと低調な中で迎える大一番、勝負師モウリーリョはいかな策をチームに授けるのか

「最も得意な形」をいかに消すか

 最初の攻撃を防いだとしても、リバプールのハイプレスにボールを刈り取られると、守備組織が崩れた状態で2次攻撃を食らうことになる。2シーズン前のUCL決勝でレアル・マドリーがリバプールに勝てたのは、このハイプレスを外せるパスワークがあったからだ。スパーズにもデレ・アリ、エリクセンらキープ力に優れた人材はいる。彼らが能力を発揮して、リバプールのハイプレスを無効化できるかどうかが第1のポイントになるだろう。

 プレスを外してカウンターに結びつけられればベストだ。スパーズの前線にはフィールドの半分を運んでゴール前まで到達できるソン・フンミン、ルーカス・モウラがいる。カウンターにいけなくてもボールを確保できれば、リバプールのリズムをとりあえず断ち切ることはできる。

 ポゼッションの場合はサイドの使い方がポイントだ。リバプールはサラーとマネの両ウイングが外切りの対応をする。中へのパスコースは空いているが、うっかりそこへ通そうとするとMFのボールハンターたちの餌食になりやすい。外へのパスコースは切られているが、外にいる選手はノーマークになっているので、中へワンクッション入れて外を使うルートがボールを運ぶために必要だ。

 頻繁に外に起点を作られた時のリバプールは、マネがMFのラインに入り[4-4-2]での対応になる。さらに押し込まれればロベルト・フィルミーノも引いてサラーをトップに残す[4-5-1]へ移行する。ここまで引かせることができれば、スパーズはリバプールの速攻の脅威を半減できる。

 しかし、そこまでは高望みというもので、現実的には引いてスペースを消して守り、効率は悪いがリスクを避けてシンプルなロングボールによるカウンターを狙うことになるだろう。攻撃が行き詰まった時のリバプールはSBのトレント・アレクサンダー・アーノルドとアンドリュー・ロバートソンが前に出てくるので、ソンやルーカスがその裏へ走り込み、CBを引っ張り出すことができる。モウリーニョ監督とすれば、今のリバプールに引き分ければ上出来の結果だろうから、まずは相手が得意とする流れにしないこと、オープンな撃ち合いを避けることを狙うのではないか。

リバプールの超攻撃的な両SBが空けたスペースを突く役割の担い手として、ソンとともに期待されるルーカス

終盤、プレー強度維持に南野

 注目の南野拓実は、フィルミーノのバックアップとして獲得したものと思われる。ただし、単にフィルミーノの代役だけではなく、70分以降の“リリーフ的交代”を含めての補強だろう。さすがのリバプールも終盤はプレーの強度が落ちてくる。リードしているなら、あえて強度を落とし、マネやフィルミーノを中盤に下げて、落ち着いた守備からのカウンター狙いにシフトすることも多い。南野がセンターもサイドもできることはザルツブルクで証明されているので、CFとしてのフィルミーノの代役だけでなく、終盤にポジションを下げた時のフィルミーノの役割を肩代わりできる人材と見ているのではないか。

 南野はプレーの強度があり、攻守を連続的に行える。相手を引き込んだ守備からカウンターへ転ずる時の“足”があり、技術と戦術眼も優れている。南野を活用することでフィルミーノを休ませて負担を軽減するのも狙いだろう。このスパーズ戦でも70分までにリードしていれば、南野登場の可能性は高まりそうだ。

FAカップのエバートン戦でリバプールデビューを果たした南野。プレミアデビューなるかも見どころの一つだ

プレミアリーグ第22節 トッテナム vs リバプール LIVE ON DAZN

2020年1月11日(土)26:30キックオフ DAZN独占ライブ中継&見逃し配信
トッテナム vs リバプール


Photos: Getty Images

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。