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現監督下3年で216億円(!)を稼ぐ “育成の名門”アタランタ

2019.11.05

イタリア随一の育成型クラブは、ガスペリーニ就任とともに4位→7位→3位とセリエAで躍進。その間、移籍市場でさらに利益を上げた背景にはスカウト体制の強化があった。

 「ガスペリーニが3年間で稼ぎ出した金は1億8000万ユーロ」。今年7月、『トゥットスポルト』紙がこのような記事を出した。アタランタが若手選手の価値を上げることによって得たキャピタルゲインは、なんと216億円(現在のレート)に達するというのだから驚きだ。

 選手の売却益はとんでもないことになった(以下、金額は同記事を参照)。DFマッティア・カルダーラをユベントスに2000万ユーロ、MFフランク・ケシエとDFアンドレア・コンティをミランに計5600万ユーロ、MFロベルト・ガリアルディーニをインテルに2400ユーロで売却。さらにインテルには、17-18までにセリエA7試合に出場して将来が期待された当時19歳のDFアレッサンドロ・バストーニを総額3100万ユーロで売っている。これらの選手は下部組織から育て上げ、いわばゼロから創出した利益だ。だがそれにとどまらず、よそから獲得した若手で利益を生み出すのもうまかった。400万ユーロでベンフィカから買ったMFブライアン・クリスタンテを2500万ユーロでローマに売り、100万ユーロでミランから獲得したFWアンドレア・ペターニャは13倍の額でSPALに完全移籍。同じく100万ユーロでペルージャから引き抜いたDFジャンルカ・マンチーニは15倍の額でローマに売却(今季は買取義務付きレンタル)している。

 選手を育てて売るというアタランタのスタンスは今に始まったことではない。優秀な下部組織を構え、数々の名選手を輩出してきた歴史を振り返れば自明だ。しかしこのクラブが選手の売却でこれだけ膨大なキャピタルゲインを得られるようになったのは、2016年9月のガスペリーニ監督就任後が顕著。そしてそれは、彼の指導能力だけが理由ではなかった。

 アタランタは2014年、あの“ミラクル・キエーボ”を作り上げたサルトーリSD(スポーツディレクター)を招へい。伝説的なスカウトであるファビーニ(2019年4月に死去)が高齢退職するにあたって、スカウトの体制を再整備させたのだ。サルトーリは古巣からのちに下部組織の責任者となるコスタンツィら8人ものスカウトを引き連れ、20人体制で国内のみならず世界にも目を光らせる組織を作った。一人の選手について4、5回、しかも人を変えて視察することを義務とし、以前は比較的テクニック重視だったところを、フィジカル重視の人選に振る。また選手を売り出す際も、ルカ・ペルカッシCEOのサポートの下で巧みに支出と収入を管理。単年のみならず複数年レンタル+完全移籍のオプションという形で将来の収入を約束させた。

 もっとも、今季はこうした荒稼ぎ戦略もひと段落。クラブ収入が安定したことを背景に、現メンバーを維持してリーグ戦やCLに挑んでいる。


Photo: Getty Images

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アタランタ育成

Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。