SPECIAL

ブラジル戦で見えたU-22日本代表の現在地 東京五輪へむけて更なる進化を

2019.10.17

来年に東京五輪を控えるU-22日本代表は10月14日、ブラジルのレシフェでU-22ブラジル代表と対戦し、2-3で勝利した。今年6月に行われたトゥーロン国際大会決勝の再戦となった一戦で日本代表が見せた成長、そして課題とは。

トゥーロン国際大会以来の再戦

 U-22日本代表にとって今回のU-22ブラジル戦は、リベンジマッチだった。

 今年6月に開催されたトゥーロン国際大会で決勝まで勝ち進んだ日本の前に立ちふさがったのが、他でもないブラジルだったのだ。アントニーに先制ゴールを許したものの、小川航基のゴールで追いついた日本は、PK戦の末、“未来のセレソン”に屈した。結果だけを見れば、善戦かもしれない。しかし、そこには実際にピッチに立った者にしかわからない差があった。その試合に3バックの一角として出場していた田中駿汰が振り返る。

 「PK戦までもつれたとはいえ、力の差はけっこう感じましたね」

 そんなブラジルが今回、4カ月前からパワーアップした陣容で日本を待ち受けていた。レアル・マドリーのロドリゴアタランタのイバニェス、アトレチコ・パラナエンセのブルーノ・ギマラエスといったトゥーロン国際大会に参加しなかった実力者をそろえてきたのだ。

 日本もトゥーロン国際大会に出場した陣容ではなく、同時期に開催されたコパ・アメリカに参加していた三好康児、中山雄太、大迫敬介、杉岡大暉、原輝綺、立田悠悟といった常連組を招集してブラジルに乗り込んだ。とはいえ、A代表に選出されている冨安健洋堂安律久保建英、板倉滉はもちろん、クラブ事情などで上田綺世、前田大然、安部裕葵らは招集していない。つまり、ブラジルの方がベストメンバーに近い陣容を整えてきたのだ。

 「ブラジルには欧州で活躍している選手が何人もいる。そういう相手に対して自分たちの現在地がどれくらいのものなのか、それを測るいい機会だと思います。トゥーロンの時よりも1mmでも成長したところを見せたいと思っています」

 決戦を前にそう語ったのは、A代表の指揮を執る森保一監督に代わってU-22日本代表を預かっている横内昭展監督代行だ。2017年12月のタイ遠征でチームが結成されて以来、35戦目となるゲームは、そんなシチュエーションで行なわれたのである。

トゥーロン国際大会決勝ではPK戦の末、ブラジルに敗れている

ミドルシュート3連発の背景

 ゲームが動いたのは早くも15分だった。自身ペナルティエリア内での浮き球に対し、渡辺剛が足を上げてクリアに行ったところ、相手選手の足と接触し、PKの判定が下された。これをマテウス・クーニャが決めて、ブラジルが先制した。

 この時点で大敗もあり得るように思われた。キックオフ直後からブラジルのスピーディな攻撃とポジションチェンジに翻弄され、押し込まれ続けたからだ。なんとかボールを奪回しても、ブラジルの迫力のあるプレスを前に自陣でミスを連発。「けっこう来ると聞いていたんですけど、予想を上回るプレスの速さだった」と渡辺は振り返る。しかし、若き日本の選手たちは、自陣でパスを繋ぐことを諦めなかった。

 「自分たちが主導権を握りながらやりたかった。それを選手がトライし続けてくれた」

 横内監督代行は、そう振り返った。9月の北中米遠征ではメキシコ、アメリカに対してノーゴールに終わっていた。

 いかにプレスを掻い潜り、ゴール前までボールを運んで、ゴールを奪うか――。

 それが、このブラジル戦のテーマの一つだったのだ。そのため、今遠征では狭いスペースの中でプレスを剥がしてフリーの選手にボールを預ける練習を行なっていた。このトライが後半になって実を結ぶことになる。攻め疲れたブラジルがペースダウンしたのか、日本がブラジルの攻撃に慣れたのか、25分過ぎから、日本がブラジル陣内に攻め込むシーンが増える。田中碧のミドルシュートによる同点ゴールは、こうした時間帯に生まれた。

 田中は52分にもこぼれ球を拾ってミドルを放ち、チームを逆転に導いた。さらに68分には中山が左足で弾丸ミドルを突き刺し、リードを3点に広げる。日本にとって珍しいミドルシュート3連発――。その背景には、やはり無得点に終わった9月シリーズの反省があった。

 「シュートチャンスを逃さないようにしようとミーティングで話した」と横内監督代行が言えば、中山も「チャンスがあったら狙っていこう、という横さんの言葉が頭の中にあった」と明かした。

 一方、理想的だったのは、74分の攻撃である。左サイドで中山が杉岡に預けると、町田→田中碧→立田→GK大迫敬介→渡辺→橋岡大樹→三好→小川→杉岡と繋いでクロス。三好のヘディングシュートはGKの正面を突いたが、ボールの逃し方、形勢のひっくり返し方において、トレーニングの成果が表れたシーンだった。

 その後、立田が疑問の残る判定でPKを取られ、1点差に迫られると、85分には危険なタックルを犯した町田に一発退場が宣告された。だが、選手6人を入れ替えたブラジルに対し、選手交代を1人にとどめた日本は最後までオーガナイズを乱すことはなかった。こうして2-3のまま逃げ切ることに成功したのである。

アピールに成功した新戦力は……

 いかにゴールを奪うかがテーマの一つなら、もう一つのテーマは、新戦力のテストだった。横内監督代行が明かす。

 「新しい選手がいますし、彼らがどれくらいチーム戦術にフィットするか、確認したかった」

 今回、初招集となったのは、渡辺、食野亮太郎、菅原由勢の3人。結果として、この3人全員がブラジル戦のピッチに立った。

今夏からスコットランド1部ハーツで武者修行をしている食野

 最もアピールに成功したのは、シャドーの一角としてフル出場を果たした食野だろう。ガンバ大阪から今夏、マンチェスター・シティに引き抜かれ、現在は期限付き移籍先のハーツ(スコットランド1部)で研鑽を積むストライカーである。試合前、「爪痕を残してやろうと思っています」と語っていたように、ブラジル相手に臆せず仕掛け、果敢にシュートを放つ姿勢が光った。ゴールこそ奪えなかったが、ブラジル守備陣に驚異を与えていたのは、間違いない。

 渡辺は序盤にPKを与えたが、時間の経過とともに落ち着きを取り戻した。武器である空中戦の強さやカバーリングを十分発揮したとは言えないが、生き残りを懸けた最初のテストには合格したと言えるだろう。

 今夏、名古屋グランパスからオランダのAZに移籍した菅原は87分に三好に代わってピッチに入り、右ウイングバックを務めた。この試合では見せ場はほとんどなかったが、4日前のU-20サンパウロとの練習試合では、何度も攻撃に参加してチャンスに絡んだ。そして何より、「このメンバーの中で僕が一番、東京五輪に出たいと思っている。それくらいの覚悟でいる」と語るメンタリティが頼もしかった。

 「間違いなく日本は、東京五輪の金メダル候補の一つだ」

 レアル・マドリーのロドリゴはそう語って、日本を称えた。とはいえ、ベストメンバーをそろえたブラジルに対し、日本はチームの全貌がまだはっきりと見えていない。前述したように、冨安、堂安、久保、板倉の4人はA代表に参加しており、クラブ事情などで上田、前田、安部らも今回、招集されていない。さらに本番では、そこに3人のオーバーエイジが加わる予定だから、チームの陣容は大きく変化することになるだろう。

 「まさか1年に2度、ブラジルに来ることになるとは思わなかったですね」

 このチームで10番を背負う三好が笑みを浮かべて言った。コパ・アメリカのウルグアイ戦で三好が奪った2ゴールは、記憶に新しい。しかし、その後A代表に昇格していれば、U-22ブラジル代表戦の頃はタジキスタンにいたはずで、2度もブラジルに来ることはなかったのだ。このチームの指揮官である森保一監督は、9月のワールドカップ予選を終え、こんなことを言っていた。

 「(U-22日本代表が中心となって参加した)コパ・アメリカを終えた時点では、何人かの選手を9月の代表の活動に呼びたいな、と思っていた。でもその後、彼らのパフォーマンスをスタッフ全員で確認したが、所属クラブで存在感を出せていたか。マッチアップする相手の選手を圧倒するくらいのパフォーマンスを示せていたか。もちろん、マークは厳しいが、それを上回っていくのが真の代表選手。今いる代表選手を上回るか、上のレベルでやらせた方が明らかに成長するな、と感じさせてくれないと、昇格させるわけにはいかない。そこはつかみ取ってほしい」

 実際、U-22ブラジルには勝利したものの、三好も前半はパスミスを連発した。小川は前線でボールを収め切れなかったし、2ゴールを決めた殊勲の田中碧も「ミスが多かった」と自身が認めるように、ボールをロストするシーンが目についた。

 まだまだやらなければならない。この世代がもっとたくさんA代表に食い込んでくるようでなければ、東京五輪でのメダル獲得など、夢のまた夢なのだから。


Photos: AFLO, Getty Images

プレミア会員になってもっとfootballistaを楽しもう!

プレミア会員 3つの特典

有料記事が読める

動画が観られる

雑誌最新号が届く

「footballista」最新号

フットボリスタ 2020年11月号 Issue081

高度化するピッチ外の戦い。FFPを軸にモダンになったクラブ経営を読み解く。 特集➀FFPを理解するためのサッカーファイナンス入門。 特集②20-21欧州展望。新時代を切り開く戦術家たち

10日間無料キャンペーン実施中

TAG

戦術食野亮太郎

Profile

飯尾 篤史

大学卒業後、編集プロダクションを経て、『週刊サッカーダイジェスト』の編集記者に。2012年からフリーランスに転身し、W杯やオリンピックをはじめ、国内外のサッカーシーンを中心に精力的な取材活動を続けている。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』などがある。