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「8強以上を狙う力はあった」U-20日本代表に足りなかったもの

2019.06.10

2019 U-20ワールドカップ ラウンド16韓国戦に敗れ肩を落とすU-20日本代表の選手たち

ポーランドで開催中のU-20ワールドカップに出場した若き日本代表の挑戦は、前回大会と同じラウンド16で幕を閉じた。現地取材した西部謙司さんいわく「『普通に強い』チーム」「ベスト8以上を狙う力があった」という今大会の日本チームに欠けていたものとは何だったのか。大会全体の戦術的傾向を踏まえつつ、戦いぶりを総括してもらった。

 今回のU-20ワールドカップでは、新シーズンから適用が予定されているルール改正が先行採用された。ゴールキックを攻撃側の選手がペナルティエリア内で受けられるようになったのは、その変更点の1つ。従来よりもゴールキックからのビルドアップがやりやすくなったせいか、それともU-20というカテゴリーゆえか、GKからビルドアップをするチームが比較的多かった。そうすると、守備側もそれを狙ってハイプレスを仕掛けていく。ビルドアップ対ハイプレスの局面では、中盤がはっきりとボールを奪い取るべきエリアになる。このエリアでファウルになっても大勢に影響はなく、ある意味ゴール前よりも厳しい守備が行われた。ここで奪えば大きなチャンスに結びつけられる。逆に、ハイプレスをかわせば一気に前が開けて攻撃側もチャンスになる。中盤の攻防は焦点の1つだった。

 例えば、今大会のアジア予選にあたるAFC U-19選手権で圧倒的な実力を見せ優勝したサウジアラビアは、徹底して自陣からのビルドアップを試み、そのためにハイプレスの餌食になっている。フランス戦、マリ戦では球際で明らかに劣勢だった。

 一方で、日本はこの攻防で劣勢に陥っていない。

 体格に差がないメキシコ戦ではむしろ圧倒していて、エクアドルやイタリアに対しても互角にやれていた。齊藤未月はどの試合でも球際の戦いに勝利している。彼のように小柄でもアジリティに優れ、運動量とパワーを兼備したMFの存在は、この大会で優位性を得るためのポイントになっていた。

 ビルドアップ対ハイプレスの攻防において、その密集を回避してロングボールを前線に送るのも常套手段である。守備側はDFラインを上げているので、機動力があってフィジカルコンタクトに強いFWがいるかどうかもポイントになる。日本はそこにも弱点がない。守備では瀬古歩夢、小林友希がロングボールをカットする高さと強さを示し、攻撃では田川亨介が走力とコンタクトの両面で対面のDFを凌駕していた。

 これまでの日本は、言わば今大会のサウジアラビアに近い立場だった。球際は劣勢で、ロングボールで攻め込むのも跳ね返すのも得意ではなかった。つまり、ハンデのある状態での戦いを持ち前の技術を使って何とかしなければならないという前提があった。ところが、今回の日本にはその前提がない。田川、宮代大聖らの活躍で決定力不足という課題もなかった。

 これといった弱点がない。その点で、今回の日本は画期的なチームだったと言える。勝ちパターンが限定された特化型ではなく、攻めても守っても強い。相手との力量、試合の流れに応じてプレーを選択できる「普通に強い」チームという、新たなステージに到達していた。

オーソドックスながらハイレベル

 フォーメーションは[4-4-2]。攻守の機能性はオーソドックスだ。

 攻撃の特徴としてはペナルティエリアの脇、ニアゾーン、人によってはポケットと呼ぶエリアへの侵入を崩しの形として用意していた。このエリアへFWが斜めのランで縦パスを引き出す、あるいはその動きと連動してもう1人のFWがバイタルエリアへ潜り込む。この形ははっきりしていた。

 その前段階のビルドアップでは、SBを高い位置に送り出しながらボランチの1人がCBとSBの間に下りてフリーマンとなる。その選手から、あるいはSBへ渡して、前記のパターンへ持っていく。ビルドアップが詰まっても短いパス交換で確保して逆サイドへ。さらにロングボールで直接前線へポイントを作ることもできていた。

 こうした攻撃のルートは特殊なものではなく常識の範囲内ではあるが、それを当たり前にできているところに日本のレベルの高さが表れていた。

 守備でもハイプレス、ミドルプレス、ロープレスを状況に応じて使い分ける。DFに高さがあるので、引き込んだら危険ということもなかった。ハイプレス、ミドルプレスではポジション移動の速さという従来の長所に球際の強さがプレスされていたので、こちらも危なげなし。ラインコントロールもしっかりしていた。

 攻守ともにそつがない。スーパースターのいない今大会、総合力に優れた日本はベスト8以上を狙う力があったと思う。

課題は対応力

 ラウンド16の韓国戦でも前半は圧倒していた。ただ、後半から韓国が選手交代とともにフォーメーションを[5-3-2]から[4-4-2]に変えて攻撃へシフトすると、攻め合いの様相になっていった。

 日本のゴールがVARでオフサイドと判定され、ぬか喜びで終わるなどメンタル面で難しい場面もあり、0-1で敗れてしまったが、撃ち合いの展開でも時に不利だったわけではない。ただ、力関係で日本が上だっただけに「取りこぼし」に近い負け方だった。

 韓国が攻めに出てくることは、ある程度予想はしていたと思う。しかし、いざそうなった時に日本は強引にねじ伏せようとしていた。攻め合いになった結果、戦列は伸びてしまった。コンパクトに戦ってこそ発揮されてきた日本の良さが消えてしまい、距離感が伸びたことでミスが増え、セカンドボールを拾われやすくもなった。撃ち合いに応じるのは日本にとって得なことはあまりなく、韓国にとっては唯一チャンスのある戦い方だったといえる。

 後半の日本は劣勢とは言えないまでも、うまくいっていないのは確かだった。前でコンパクトにならないのなら、一時的に後方でコンパクトな状態にして韓国の攻撃をやり過ごしておけば、やがてマイボールをキープして押し返し、日本のリズムに持っていくことはできたはずである。

 状況が悪いのを素直に認めて、一時的に撤退する冷静さと勇気が必要だった。思えば、状況は違うがアジアカップ決勝のA代表も一時撤退の決断ができず、強引にハイプレスに出て墓穴を掘っている。ベンチが無策だったのも共通項だ。U-20年代の選手たちにそこまで要求するのは酷かもしれないが、年代を問わず日本にありがちな失敗として記憶しておきたい。

Photos : Getty Images

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日本代表

Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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