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まさかエースFWが…もはやインテルの“恒例行事”お家騒動

2019.08.22

18-19 Playback For The Coming Season#8

続々と開幕を迎えている欧州各国リーグ 。プレシーズンマッチを重ねチーム作りを進めている各クラブは、順調に歩みを進められているのか。その進捗を測るうえでは、昨シーズンのチームが抱えていた課題を正確に把握しておくことが欠かせない。

この昨シーズンの振り返り記事で課題を再確認することで、来たる19-20シーズンに向けた準備は的を射ているのか、的外れになってしまってはいないか、判断する手がかりにしてほしい。

INTER | インテル

 昨シーズン最終節のエンポリ戦で、決勝点を決めたラジャ・ナインゴランは喜んでいなかった。

 「エンポリはよく戦った。けど、俺たちがこんな試合をしてはいけない」

 非常にハラハラする試合展開。残留を懸けて死に物狂いの相手に苦労して先制点を奪うが、主将の座を剥奪されたエースのマウロ・イカルディがPKを失敗。軽率なボールロストからあっさりカウンターで同点とされ、さらに2-1とリードした後もピンチに直面、新主将サミル・ハンダノビッチのセーブで命からがら勝ち点3を死守した。力はあるのに結果を得ることに苦労する、2018-19シーズンの縮図というべき試合だった。

 シーズン前半は希望に満ちていた。開幕戦こそサッスオーロに敗れるが、途中CLと並行しながら7連勝を記録し順位を上げていく。とりわけCFイカルディの勝負強さは増しており、彼がゴールを決めれば負けない雰囲気が出ていた。

 しかし、そのイカルディを中心にチームが混乱するとは誰が予想できただろうか。契約更新が話題に上がった昨年12月、夫人にして代理人も務めるタレントのワンダ・ナラが「インテルはマウロをユーベに売ろうとしていたの」と爆弾発言。そこから練習への無断遅刻などが続き、クラブは主将の座を剥奪し戦力外措置とした。ただ、それからもTVのスポーツ番組にレギュラー出演するワンダは大人しくならず、折に触れてイバン・ペリシッチやマッテオ・ポリターノらを批判し、「あの人たちはマウロを化け物扱いしてるのよ」などと吹聴した。

 競技上の評論とゴシップネタを結びつけるのはバカバカしい話ではあるのだが、ピッチ外の騒動に影響されてしまった面は否めない。FFPの影響でCL、ELに十分なメンバー登録ができなかったところにイカルディ問題が勃発し、2、3月の一番キツイ時期に戦力が制限された。何より選手関係者から確執を煽るような発言がなされたら、ロッカールームにはさざ波が立つものだ。その時期の低迷が尾を引き、インテルはシーズンの最後まで苦労することになった。

 結果が出なくなれば、監督とフロントの関係も微妙なものになる。2018-19限りでの退団となったスパレッティ監督はシーズン終了後「(解任報道などが出た時に)たとえシーズン後に契約を更新しないとしても、現場を安心させる一言が欲しかった」とこぼした。シーズン半ばにお家騒動に翻弄される図式は結局毎年恒例。2019-20から本格的に主導権を握るであろうマロッタGD、および新監督のコンテは、この難しいクラブをまとめられるだろうか。

7月のICCで王者ユベントス相手にPK戦までもつれ込む熱戦を演じるなど、コンテ監督の下でのチーム作りは順調に進んでいるように見えるインテル。指揮官の改革に水を差すような事態はもう避けなければならない


Photos: Getty Images

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インテルマウロ・イカルディ

Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。

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