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守田英正、川崎Fの心臓。日本が誇る守備のマルチローラーになれるか?

2019.04.05

 新卒1年目でチャンピオンチームの主軸になるだけでなく、追加招集とは言えA代表に選出されて先発デビューも果たした(キルギス戦 ◯4-0)。大学を卒業してわずか半年足らずで日の丸を背負い、所属クラブの2連覇にも貢献した守田英正は、その後も継続して森保ジャパンへの招集を受けている。

 しかし、2019年1月のアジアカップと同3月のキリンチャレンジカップはともに負傷で辞退。優勝を義務付けられたといっても過言ではない前者の大会において、その緊張感を味わえず、アピール機会も逸したことは痛恨だった。そういった状況でも、結果的に辞退したものの今回の親善試合でも声がかかった。これは、指揮官が彼に寄せる期待の証明と言えるだろう。

攻撃力を印象づけた高校時代、守備を学んだ大学時代

 守田は、決して陽のあたる道を歩いていた選手ではない。地元・高槻市立第九中学校を卒業後、林卓人(広島)や中村太亮(大宮)の母校である金光大阪高校に進学。ただ、チームを率いる岩松哲也監督によると「1年生の中でも目立たなかった」存在だったようだ。ボールを扱う技術やさばく力は備わっており、3年時には10番を背負った。しかし「Jのレベルかと言うとそうではない」(岩松監督)存在だったという。

 自身の高校時代を、守田本人は振り返る。

 「全国大会にも出たことがなければ、全国区の選手でもなかった。埋もれていたと言うか。下手ではなかったですけど、特に上手くもない、という感じでしたね。高校はあまり名の売れていた感じでなかったです」

 ただ、続けてこうも言う。

 「下手ではないと思っていましたし、ボールを触ること自体はすごく好きでした」

 筆者はかつて、守田擁する金光大阪と対戦経験を持つ選手に話を聞いたことがある。彼が、守田について「めちゃくちゃ上手かったですよ」と興奮気味に話してくれたのを鮮明に覚えている。ちなみに、彼の所属していた高校は全国優勝を経験した。

 その対戦については守田も覚えており「調子が良い試合だっただけ」と謙遜したものの、全国の頂点に立ったチームの選手の舌を巻くほどの「最大出力」はこの当時から持っていた。

 この話を聞けば、中村憲剛や大島僚太ら国内屈指の技術と判断力を持つチームメイトの中で遜色なくプレーできているのも納得できる。

 だが、守田がそのままボールを扱うことに主軸をおいたプレーヤーとしてサッカー人生を歩んでいたら、日の丸を背負うことはなかっただろう。2018年シーズンが始まる前の小林悠は、守田についてこう語っていた。

 「(守田は)すぐにでも試合に出られるんじゃないかな。うちではボランチのところで、守備で“刈り取れる”タイプの選手が少ないですから、あいつの良さは出しやすいと思います。攻撃も思ったより技術が高いし、シンプルにやって色気を出さない。すごく良いかなと」

2018年の新加入選手発表会で話す守田

 結果として、この“予言”は当たった。守田は川崎に入ってから球際の守備、イーブンのところを取り切る力を発揮し、攻撃的な色がついているチームの中で異彩を放った。加えて、守備力に長けているだけではなく、攻撃面でもテンポが早い川崎のパスワークに自然と馴染んでいったのだ。

 高校時代は“オン・ザ・ボール”で魅せていた選手が、守備のクオリティを身につけたのは大学の4年間だった。

 流通経済大学では、高円宮杯を制した流経大付属柏の“黄金期”の選手たちと同期になった。高校時代とは比較にならないほど競争の激しい環境に身を置くことになった。ただ、守田はその中でもたゆまぬ努力を続けた。同じポジションを務め、Jの舞台に進んだ先輩・塚川孝輝(松本)や中野雄二監督の教えを吸収し、欠けていた守備の能力を磨いたのだ。

 「守田は3年生の時SBをやっていて、僕にクソミソに怒られていましたから。やったことがないから、ミスをするんですよ。でも、それを全部聞き入れてうまくなろうと取り組んだ。それで、今の彼がある」(中野雄二監督)

際立つ、攻守におけるアベレージの高さ

 元来備わっていたテクニックに、大学で磨いた守備の技術。この2つは、プロ入り後から今に至るまで存分に発揮され、日に日に凄みを増していっている感がある。

 攻撃面では相方の動きに合わせて的確なポジションを取り、ポゼッションに関わって長短のパスで攻撃のスイッチを入れる。こうしたプレーは大学時代よりも明らかに増えた。攻撃におけるアクションの質の高さは、目を見張るものがある。「こんなことまでできたのか」と驚きを与えてくれるシーンは、枚挙にいとまがない。

 家長昭博や小林らリーグを代表する質の高い攻撃陣の“ここぞ!”というタイミングに合わせてパスを通せば、低く鋭いサイドチェンジで相手守備網を揺さぶる。見ている者が「ここに通せ!」と思ったことを、ピッチ上で瞬時に体現するのだ。その一連の動きにムダがないのも、見てていて気持ちがいい。小林の言葉を借りれば「色気を出さない」ところが魅力的であり、味方の要求する高いレベルに良い意味で合わせられるところが最大の強みと言えるだろう。

 守備面でも、毎試合際立ったシーンを見せている。入れ替わられたらピンチになるシーンでも、絶妙なタイミングで身体を入れてボールを奪い、すぐさま相手の重心の逆をとって攻撃に転じる。そんなプレーも、一見の価値がある。

 「そんなに身体が大きいわけではないんですけど、『身体の使い方がうまい』とは周りの人からも言われていて。自分としてもそういう実感はある。うまくボールと相手の間に身体を挟むプレーは、持ち味の1つでもあります」

 大学時代に語っていたこの強みは、試合を重ねるごとに磨きがかっている。アタッカーを活かせる配球力と、危機察知能力の高さが為せるボール奪取力。この2つの武器を、国内トップカテゴリで安定的に発揮する選手はリーグを見渡してもなかなかいない。

もう1つの大きな評価点と、代表での役割

 守田の特長として、“ポリバレント性”も挙げられる。大学時代にはCBとSBでプレーしており、SBはプロと代表の両方で経験済み。この位置でも、ここまで述べてきた自身の特長を殺さずプレーできるのだ。守備的なポジションはどこでもこなせる、マルチロールなのである。

 主戦場であるボランチでは、相方が“守備専任”でも“攻撃的”のどちらでも順応できる。1人で複数の役割をこなせるため、チームにとっては選択肢と組み合わせの多様化に繋がるし、指導者目線で言えばノドから手が出るほど欲しい存在だ。

 同じ代表選手であれば、遠藤航が近い。アジアカップでも柴崎岳とダブルボランチを組み、高い強度の中でも冷静にさばき、球際の守備でも存在感を出していた遠藤。森保一監督が守田に求めているロールは、これに近いものだと察する。

 能力的には十分、通用するだろう。ただ、遠藤や柴崎岳ら中盤の底の選手をライバルと想定した時、守田には国際舞台での経験値が圧倒的に欠けている。彼らとの争いに入っていくには、Jの舞台でもう一皮剥け、国内のライバルにさらに差をつける必要がある。

 ではそれはどういう部分になるかというと、ゴールやアシストなどが挙げられる。“数字が付く”部分をあえて目標として戦ってみても良いのではないだろうか。そこまで求められたことはないだろうし、求めるのは酷だという声もでるかもしれない。ただ、数字に残らない部分で彼が大きくチームに貢献していることは、誰もが知っている。だからこそ、他を圧倒する価値をさらに高めるため、「数字」へのチャレンジを切に願っている。

Photos: Takahiro Fujii, Getty Images, Ryo Kubota
Edition:Daisuke Sawayama

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守田英正川崎フロンターレ

Profile

竹中 玲央奈

“現場主義”を貫く1989年生まれのロンドン世代。大学在学時に風間八宏率いる筑波大学に魅せられ取材活動を開始。2012年から2016年までサッカー専門誌『エル・ゴラッソ 』で湘南と川崎Fを担当し、以後は大学サッカーを中心に中学、高校、女子と幅広い現場に足を運ぶ。㈱Link Sports スポーツデジタルマーケティング部部長。複数の自社メディアや外部スポーツコンテンツ・広告の制作にも携わる。愛するクラブはヴェルダー・ブレーメン。