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マックス・エバール。ボルシアMG辣腕SDの組織論

2019.03.11

「私は監督を、自分のパートナーとして見ている 」

Interview with
MAX EBERL
マックス・エバール (ボルシアMG SD)

2011-12から2015-16の5シーズン中4度トップ6入りするも、ここ2シーズンは9位と中位に甘んじていたボルシア・メンヘングラッドバッハ。しかし今季は前半戦から好調を維持し前半戦3位フィニッシュ、後半戦はやや苦しい戦いを強いられているもののCL出場権争いを続けている。

雌伏の時を過ごしたボルシアの仔馬が、再び飛翔を遂げた理由とは? 2008年からスポーツディレクター(SD)を務めるマックス・エバールが明かす。

ずばり復活の要因


── シーズンの3分の1が終わった時点で2位(編注:取材時点)。あなたがSDとして過ごした10年間で最もいい成績です。山の頂上にたどり着いた登山家の気持ちになりましたか?

 「自分たちが今立っている場所に、とても心地良く感じてはいるよ。普通は『まだシーズンの3分の1。何も成し遂げていない』と言われるものだがね。私の見方は少し違う。シーズンの3分の1を終えて2位にいる者には、それだけの勝ち点がある。そしてそれは、残りのシーズンに向けて確かな土台となる。素晴らしい状況だね。でも、頂上について話をするのはシーズン終了時に上位にいた時だよ」


── このように良いシーズンには、街から出てくる特別な力を感じたりするものでしょうか?

「2001年にブンデスリーガ昇格を果たした時には、マーケット広場に10万人が集まった。この街の人たちのサッカーに対する情熱は本当にすごいし、今は特に彼らが喜んで満足しているのをひしひしと感じるよ。この10年間で欧州カップ戦を38試合戦っているけれど、相手がアポロンであろうがバルセロナであろうが、どの試合もが喜びの祭典だった。今、街の人たちは期待している。もしかしたら、あれをまた経験できるんじゃないかと。サポーターは夢を見るべきであり、喜ぶべきだ。私たちはこの喜びを分かち合うと同時に、それが現実となるよう仕事をしなければならない」

第24節バイエルン戦のゴール裏で掲げられたコレオグラフィ


── うまく行っている主な理由をいくつか挙げてもらえますか?

 「キーワードは、過去から学んだこと、ケガ人がいないこと、そしてピッチの上での新システム。他にも理由はあるが、これらが一番わかりやすい。昨シーズン終了後、自分たちの状況について根本的な分析をした。(監督の)ディーター・ヘッキングと私は、腹を割って話し合い、妨げになったすべてのものを出し合った。そして改善するために、多くのアイディアを発展させたんだ。一番わかりやすいのは、チームのトレードマークになっていた[4-4-2]を[4-3-3]に変えたことだろうね」


── 今では1試合の中でこれら両方のシステムを使い分ける監督もいて、フォーメーションはそこまで決定的ではないと言われたりもします。それが本当に成功の鍵になったのでしょうか?

 「私たちはそう感じている。6、7年間、ずっと[4-4-2]でプレーしてきたけれど、いつからかうまくいかなくなっていた。選手にとっても、新しいアイディアと向き合うことはインスピレーションになり得る。私たちはいつの間にか、相手にとって計算しやすくなっていたんだ。それから、チームにたくさんいいMFがいるのでこのポジションの人数を増やしたかったのと、アラサヌ・プレアをCFとして中央に置きたかったのもあるね」


── 他に何か変えたことは?

 「プレア、フロリアン・ノイハウス、ミヒャエル・ラングと、現在のチームのレギュラーになっている新加入選手は3人だけ。大きな刷新はしていない。でも、長期離脱していたトビアス・シュトローブルのように、いったいどこからきたんだ? とみんなが言いそうな選手が戻ってきた。DFニコ・エルベディはサイドからセンターに移った。もしかすると大したことではないように見えるかもしれないが、大きな効果をもたらしている。それにヨナス・ホフマンが花咲いた。これらが、私たちの次の一歩を可能にするパズルのパーツになるかもしれない。それに、多くの負傷者がいたのは私たちにまったく責任がなかったわけでもない。自分たちのせいだったとまでは言わないにせよね。コミュニケーションが悪かったために、欠場する選手もいた」

王者バイエルン相手に敵地で0-3と快勝した前半戦のブンデス第7節でガッツボーズするエルベディ


── ヘッキングは昨シーズンを9位で終え、批判されました。普通、遅くとも契約が切れる1年前には延長について考えますよね。あなたはそれをしませんでした。彼への疑念があったからでしょうか?

 「クラブの首脳陣が不安に感じていたら、選手たちは気づく。今の選手たちはとても敏感で、多くのことを察知するからね。ディーターも私も、昨年夏の時点での契約延長は意味がないという考えだったんだ。誰にも理解してもらえなかったけれど。もしそうしていたら、昨季に不満だった人たちへ火に油を注ぐことになっていただろう。私たちは意識的に、延長か解任かというサッカーのメカニズムとは違う決定をした。少なくともクラブの内部ではそれで不安になったり、疑ったりすることはなかった。そしてチームがこうやって良い発展を見せて成績がついてきてから、(昨年11月の代表ウィーク中に)契約延長で合意することができたんだ」


── 批判されている、または解任直前の監督ともオープンな付き合いをするのは、あなたがSDになってからのボルシアMGの特徴でもありますね。どうしてそうなったのでしょう?

 「背景にあるのは、自分が人間として監督とどう付き合いたいか。それしかない。私は監督を、自分のパートナーとして見ている。大切な同僚を、常に判断したり疑問視したりしているという雰囲気は作りたくない。同時に、うまくいっている時に監督を抱きしめたり、うまくいかない時にここを変えたらどうかと提案したりするタイプでもない」

SDと監督の付き合い方


── あなたは10年間で2人、ミヒャエル・フロンツェク(2011年)とアンドレ・シューベルト(2016年)しか監督を解任していません。11年半で2人しか解任していない監督にとっての理想郷、フライブルクのようです。

 「どのチーム、どの監督にも良くない時期はある。もしかするとそれはケガのせいかもしれないし、選手たちの調子が良くないからかもしれないし、スタメンを決めるうえでの間違った一つひとつの判断のせいかもしれない。私たちはそうしたことについて、常に正直に話し合って理解したいと考えている。シーズンを通してずっと話をしているんだ。とてもはっきりと、批判的にね。それができるのは、メディアに対して『こう言われた、ああ言われた』と誰も言わないから。今のところ、私と監督が話し合った内容が外に出てきたことはないよ」


── 解任の時でさえ、驚くほど平和ですね。

 「それは私たちがいつもオープンに付き合っているから。監督にはいつも、その時どきの状況について話をしている。一度、危機的な状況にあった時に監督へこう告げたことがあるくらいだ。『次の一歩を考えなければいけなくなってきた。単純にそれが私の仕事なんだ』とね。自分の仕事に責任を持ち、誠実かつオープンに遂行していれば、監督も理解してくれる。それが私のやり方だし、私と付き合う人たちには私とそう接してほしいと願っているよ。いつか私の仕事が疑問視される時がきたらね。でも、少し考えることはあるよ、監督によく逃げられるからね(笑)」


── ルシアン・ファブレとハンス・マイヤーのことですか?

「そう。彼らは自ら辞めていった。私は長期的に彼らと仕事をしたかったのに」


── ファブレはボルシアMGでの4年半の間、何度もあなたの部屋へ来て契約を解消してくれるよう願い出たそうですね。でも、あなたは彼の気持ちを変えることができた。実際、ファブレとの関係はどうでしたか?

 「こう表現しよう。クラブ全体が、彼のサッカーの考え方からもの凄く恩恵を受けた。ボルシアMGには長年、サッカー的にこれといった特徴がなかった。そこへルシアンが再び特徴を与えてくれた。その一方で、彼も私たちから得るものがあった。いつも落ち着いて、ピッチのことに集中できるようにしたのだから」

エバールとボルシアMG時代のファブレ。古豪を強豪へと蘇らせた


── 彼がドルトムントでこれほど早く地盤を固めると思っていましたか?

 「彼がここを去った時、私は言った。『将来、彼の招へいに成功するクラブを祝福する以外ない』と。今でも考えは変わっていないよ。ニースは彼を呼んだことを悔やんでいないと思うし、ドルトムントもそうに違いない。ルシアンは4年分先に進んでいるし、サッカーのクオリティに加えて、もしもっとリラックスすることを身につけていたら、私たちを含めドルトムントのライバルたちにとっては要注意だね」


── 生真面目で、何度も自己疑念に見舞われたファブレとどう付き合ったのですか?

 「監督にとってセンシティブな時には必ず、クラブ全体が重要になる。役員たち、ライセンスサッカー部門ディレクターのシュテファン・コレルに社長のシュテファン・シッパース、そして広報部長のマルクス・アレッツ。チームの危機になると選手と監督だけにフォーカスすることが多いが、実際にはそれよりずっと多くの人間が関わっている。クラブを動かし、決定づける人たち全員だ。ただ、私たちの場合はその人の輪が他のクラブより小さくて、とても強い信頼関係で結ばれている。外から来る監督にとっては、それが仕事をやりやすくしていると思う。それはルシアンも感じただろうし、アンドレもディーターもそうだと思う。それが私たちの“立地”のプラスポイントになっていると考えているんだ」


── ハンス・マイヤーとライナー・ボンホフという、かつてトップチームの監督を務めた人間が2人も役員に名を連ねています。それも監督に対するフレンドリーな環境に一役買っているでしょうか?

 「監督にとってはもちろんいいだろうね。あまりうまくいかない時期には内部でも当然、批判的な声が出る。そんな時、役員会議にマイヤーとボンホフという経験豊富な監督が2人いて、彼らは何が起きているかをよく理解しているからね。パズル自体はあまり大きくないけれど、パーツの一つひとつが大きな役割を果たしているんだ」


── 実り多き将来を作り上げるパーツの一つが、もうすぐ使用可能になりますね。スタジアム横にホテル、ファンショップ、リハビリセンター、ミュージアム、クラブ事務所の入った複合施設が完成します。中期的に見て、この投資から得るものは何でしょうか?

 「この建物が直接、私たちを欧州カップ戦に導きはしないけど、願わくはこれから20~30年間、確固たる土台の柱の一つになってほしいと思っているよ。拡張したファンショップは増収に繋がり、ようやく独自のミュージアムを持つことができる。本当にミュージアムを作るに値するクラブはそれほど多くはないけれど、私たちは間違いなく、そのうちの一つに数えられると思っているから」

話題に上がったボルシアMGの新施設。2月25日にオープンを迎えた


── ファブレとマルコ・ロイスという、あなたにとって大事な時期にクラブにいた2人の重要人物が現在ドルトムントにいます。それを見てうれしいですか? それともライバルとして見ていますか? 彼らはあなたたちの上、首位に立っていますが。

 「誤解を与えないように表現するには、どう言えばいいだろう? 私たちは今ドルトムントにこれだけ近いところにいるので、離れている時のようには喜べないね(笑)。いや、真面目に話すとマルコのために喜んでいるよ。20歳の時にうちに来た時には、その数年後にドイツ全国の多くの人たちにとってお手本の役割を果たすようになるとは思いもしなかった。サッカー選手としての彼がどれだけ特別かはわかっていたけど、人間としてすごく重要な発展を見せた。3、4年間ケガに苦しんだ後あのように戻ってきて、ビッグクラブのキャプテンを務めるまでになったのは驚きだよ。ピッチの上での真のキャプテンでもあるという稀有な存在だ。でも、私たちは今ライバル同士だからね、マルコとルシアンに対する私の喜びには限界があるよ(笑)」

<プロフィール>
Max EBERL
マックス・エバール(ボルシアMG SD)
1973.9.21(45歳)GERMANY

バイエルン州ボーゲン生まれ。バイエルンの下部組織で育ち、U-21ドイツ代表にも選ばれる有望株だったがバイエルンではリーグ戦1試合にしか出場できなかった。その後ボーフム、グロイター・フュルトを経て99年にボルシアMGへ加入。05年までプレーしスパイクを脱いだ。引退後はボルシアMGのユース&アマチュア部門の責任者を務め、08年に34歳の若さでSDに就任。巧みな強化戦略で1970年代の栄華から“古豪”と呼ばれていたクラブを強豪へと蘇らせた。

Photos: Bongarts/Getty Images

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ボルシアMGマックス・エバール

Profile

ダニエル テーベライト

1971年生まれ。大学でドイツ文学とスポーツ報道を学び、10年前からサッカージャーナリストに。『フランクフルター・ルントシャウ』、『ベルリナ・ツァイトゥンク』、『シュピーゲル』などで主に執筆。視点はピッチ内に限らず、サッカーの文化的・社会的・経済的な背景にも及ぶ。サッカー界の影を見ながらも、このスポーツへの情熱は変わらない。