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日本対ポーランドから半年。決戦の地ボルゴグラードの今

2019.01.15

 ロシアW杯で日本がポーランドと対戦し、ベスト16進出を手にした地ボルゴグラード。日本の人々には気温35℃を超えた灼熱のピッチと、試合終盤のボール回しへの大ブーイングが鮮明な記憶として残っているだろう。

日本対ポーランド戦を見守るファン

 実際にこの街を訪れてみると、大会用に造られた真新しい施設や道路以外はソ連時代の雰囲気が色濃く残り、他の開催都市と比べると素朴な田舎街という印象だった。地元クラブのロトルは2部と3部を行き来する生活が続き、決してサッカー人気が高い訳でもなく、なぜここが開催地に選ばれたのだろう、という疑問が浮かんでいたのが正直なところだった。

ソ連時代から使用されているレトロな路面電車

 第2次大戦時に激戦の地となったボルゴグラードの中心には、戦没者を慰霊する施設が集まるママエフの丘がある。特に夜は見事なプロジェクションマッピングで数々の彫刻や壁が照らされ、母なる祖国像の巨大さに圧倒されながら異世界へ冒険するように敷地内をめぐることができる。厳かな追悼の場でありながら、エンターテインメント性すら感じさせる唯一無二の空間。ここはロシア人にとって特別な場所であること、そしてW杯をこの街で開催する価値が理解できた。

 ママエフの丘から街の夜景に目を向けると、新スタジアムが眩しいほどに輝いている。それ以外に目立った明かりはなく、ボルガ川は不気味なほど暗い。W杯開催が街の風景を一変させたことは一目瞭然だ。

ママエフの丘から撮影した夜景。闇の中、ロシアW杯のために作られたスタジアムと橋だけが輪郭をなしている

2部では異例の活況と格差

 「我われの運営は世界から高い評価を受けた。この大会は地域の発展の礎となってゆくだろう。これで終わりではなく、歩みを継続していかなくてはならない」

 ボルゴグラード州のアンドレイ・ボチャロフ知事は大会前から懸念されていたW杯のレガシー問題に言及し続けてきた。現在2部リーグに所属するロトルは15位に沈んでいるにもかかわらず、ホーム11試合の平均観客数はリーグトップの2万2056人。仮に1部リーグにいたとしても上位に入る数字だ。この機を逃すまいとスタジアムにはスポーツ博物館と展覧会場の設置が決定。サッカー以外にも人気バンドのコンサートなどによって新たな娯楽を市民に提供し、収益を上げる予定だ。ロシアの経済不調がささやかれて久しいが、劇場は観客数が伸びているという例もあり、W杯特需に関してもすぐに息切れしてしまうのではと不安視し過ぎる必要はないのかもしれない。

 むしろ、ボルゴグラードの活況によって浮き彫りとなるのはW杯とは縁がなかった都市の苦境である。実は昨季、ロトルは降格圏の17位でシーズンを終えたが、財政難によって2部参戦を辞退するクラブが続出し残留の恩恵にあずかった経緯がある。国としては開催都市のクラブが衰退されては困る訳で、裏で何らかの優遇措置が取られているのではという憶測も。W杯によって生じたクラブ間の格差は今後も広がりそうだ。

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ロシアW杯文化日本代表

Profile

篠崎 直也

1976年、新潟県生まれ。大阪大学大学院でロシア芸術論を専攻し、現在は大阪大学、同志社大学で教鞭を執る。4年過ごした第2の故郷サンクトペテルブルクでゼニトの優勝を目にし辺境のサッカーの虜に。以後ロシア、ウクライナを中心に執筆・翻訳を手がけている。