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サンティアゴ・アスカシバル。獲物を逃さないバイタルの番犬

2018.04.18

狙った獲物は逃がさないバイタルエリアの番犬


Santiago ASCACÍBAR
サンティアゴ・アスカシバル

1997.2.25(21歳) 167cm/ 68kg ARGENTINA


 第21節から指揮を執るタイフン・コルクト新体制のシュツットガルトは、ブンデスリーガで最も「攻守分業」がはっきりしたチームだろう。敵陣深くに攻め込むのは2トップとサイドMF、片側のSBだけの場合がほとんどで、ボランチはペナルティエリアの中まで滅多に侵入しない。リードを守り切りたい状況で用いる戦術オプション[5-4-1]の時に、右サイドMFから中盤センターに持ち場を移すゲントナーが攻撃参加のタスクを担うくらいで、ボランチは守備にほぼ専念する。

 相手のビルドアップ時は2トップがパスコースを限定しに行くが、高い位置でプレスの網にかけようとはせず、中盤のラインに侵入してきたボールを狩りに行く。この局面で強烈な存在感を放っているのが2ボランチの一角を担うアスカシバルだ。クサビのパスへの反応スピードが尋常ではない上、受け手のトラップやターンの方向を先読みして一気に奪い取るか、バックパスを強いるような守り方が非常にうまい。巨漢ぞろいのドイツでは異色の167cmと小柄ながら分厚い胸板に象徴される頑強さと、まさに番犬と呼ぶに相応しい旺盛な闘争心も魅力だ。

 目を光らせている範囲は非常に広く、チーム全体が自陣の深いエリアにブロックを作っている時はバイタルエリアを封鎖するだけでなく、タッチライン際のゾーンもカバー。持ち場である中央からサイドに出て行くタイミングが良い上、しっかり中へのコースを切りながらボールホルダーに寄せるので、自身が一時的に離れることになるバイタルエリアのスペースへのパスやカットインは許さない。

 ボールホルダーと対峙している選手のサポートに行き、数的優位を作ろうとする意識は強いが、その味方と連動した守りを見せるというより個の力でボールを奪い切るか、相手の攻撃を遅らせるケースが多い。また、特徴的なのは守備時にあまり首を振らないこと。貪欲に自らのゴールを目指す点取り屋のように、とにかく自分の力でボールを奪おうとする意志の強さをプレーの端々からうかがわせる。

 高い位置までの攻撃参加はせず(おそらく監督から指示されている)、自分たちのビルドアップ時もシンプルなショートパスを出すだけなど特別なことはしない。ただ、守備時は一見「本能型」のボールハンターのようで、常に味方がいてほしい場所にポジションを取るなど気の利いた仕事を連発。チームの攻守分業を成立させる貴重な人材になっている。これで攻撃でも幅広く貢献するようなら、自身の才能を見出したレシュケTDが同様にヨーロッパの舞台に連れて来たアルトゥーロ・ビダルのような万能MFになるかもしれない。


Photos: Getty Images

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サンティアゴ・アスカシバルシュツットガルト

Profile

遠藤 孝輔

1984年3月17日、東京都生まれ。2005年より海外サッカー専門誌の編集者を務め、14年ブラジルW杯後からフリーランスとして活動を開始。ドイツを中心に海外サッカー事情に明るく、『footballista』をはじめ『ブンデスリーガ公式サイト』『ワールドサッカーダイジェスト』など各種媒体に寄稿している。過去には『DAZN』や『ニコニコ生放送』のブンデスリーガ配信で解説者も務めた。