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「サッカーはどこでもサッカー」フッキは中国でも自然体

2017.10.27

欧州のトップリーグで輝かしい実績を残した名優たちが、新たな挑戦の場として欧州以外の地域へと旅立つケースが増えている。しかし、そのチャレンジの様子はなかなか伝わってこない。そんな彼らの、新天地での近況にスポットライトを当てる。

from CHINA
HULK
フッキ

 フッキが上海上港に移籍したのは2016年6月末のこと。続々とビッグネームが中国入りする中、すでに1年間ここで主力としてプレーし続ける彼からは“中国のベテラン”の風格すら漂う。

 「移籍を決断するのには少し時間がかかったよね。ヨーロッパに8年間いて馴染んでいたから。でも、中国からは何年か前にもオファーを受けていたんだ。それで昨年また話をもらって、機は熟したかなと。僕が受けたオファーは断りようのないレベルの金額だった。そして、サッカー自体も凄く成長している」

 ブラジルでも、母国のスター選手の中国行きは大きな注目を集めている。当初は5500万ユーロ(約72億円)とも報道された移籍金の話題が先行していた。しかし実際にプレーし始めると、試合ごとに「フッキのゴールで、上海上港がフェリポンの広州恒大に史上初の勝利」というふうに、ごく自然にかつブラジル人にも親しみやすい形で、中国サッカーの試合結果や内容が報道されるようになった。

 ゴールを量産するフッキは、活躍の秘訣をこう語る。「サッカーというのは、世界のどこでも同じだと思うんだ。人間、好きなことをする時には簡単に適応できるものさ」

投げ出す気はない

 ピッチの外でも充実した上海生活を送っている。この街を気に入っており、自宅はいつも賑やか。セレソンのチームメイトであり同じマンションに住むオスカルとの家族ぐるみの付き合いはもちろん、上海在住のブラジル人や過去にプレーしたヨーロッパ、日本からの訪問客も多い。姉御肌の妻イランさんと一緒に、中国人チームメイトとも機会を作って集まったり、ネイマールやロナウドがイベントで中国を訪れた際には会いに行っている。ブラジルから見れば地球の反対側にいても、そうした友情に囲まれているのがフッキにとっての日常なのだ。

 同時に家族だけの時間も大事にしている。

 「試合、練習、遠征と僕らのルーティンはハードだから、子供たちの休日には一緒にこの辺りを散歩する。上海には、出かけるのに良いところがたくさんあるからね。4、5日間の休暇がある時は、家族を連れてあちこち旅行しているよ」

 中国の海南島や、上海から近い東南アジアのタイやインドネシアにも足を伸ばした。「愛がいっぱい」などの言葉とともに、SNSにアップされた家族と撮った写真に写る彼は幸せそのものだ。

 一方で、トラブルに直面することもある。同僚のオスカルが出場停止処分を受けた際、チームを引っ張る立場として抗議したことで自らも出場停止と罰金を提示されてしまった。だが、そうした困難があっても投げ出す気はない。この8月の移籍市場ではプレミアリーグのクラブからの打診があったとも伝えられたが残留。彼の希望は「ここで4年間の契約をまっとうすること。クラブはどんどん成長しているから、まだ経験のない1部リーグでのタイトルを獲りたいというモチベーションが高いんだ」と意欲を見せる。

 ブラジル、日本、ポルトガル、ロシアと文化もサッカーもまったく違う国を経てきたフッキは、中国でもピッチの外では自然体、ピッチの中では熱く輝きを放っている。

Photo: Getty Images

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フッキ上海上港

Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。