COLUMN

オスカルは、日本食がお気に入りピッチ外でのびのび過ごす

2017.05.15

名優たちの“セカンドライフ”

欧州のトップリーグで輝かしい実績を残した名優たちが、新たな挑戦の場として欧州以外の地域へと旅立つケースが増えている。しかし、そのチャレンジの様子はなかなか伝わってこない。そんな彼らの、新天地での近況にスポットライトを当てる。

from BRAZIL
OSCAR
オスカル

(上海上港/ブラジル代表)

 昨年末にオスカルの上海上港移籍が発表された当初、中国サッカー史上最高額(当時)だった契約金6000万ユーロ(約72億円)や年俸2400万ユーロ(約29億円)といった金銭面ばかりが話題となった。

 もちろん、それも大きな要因ではあった。だが、彼にとって移籍の最大の動機はもっとシンプルで純粋なところにあった。

 「チェルシーは僕に多くの機会と、他ではできない経験を与えてくれた。そして僕は、チェルシーにブラジル人の才能をもたらし、すべての試合で最善を尽くしていた。だけど、この移籍は家族や代理人、クラブと話し合った上でベストな決断だった。僕は選手。もっとプレーしたかったんだ」

 チームには、代表で長年一緒にプレーしているフッキも所属。中国5年目のエウキソンも含めたブラジリアントリオは実力・人気ともに中心選手だ。試合のたびに3万人は集まるホームスタジアムでは試合前、3人を中心にした映像が上映されスタンドを盛り上げている。

 北京国安でプレーするレナト・アウグストは「彼の移籍が決まった時、中国メディアは盛り上がったよ。彼がフッキと一緒に中国サッカーを変える!って。同胞として、その期待感をうれしく思った」と歓迎。

 オスカル自身も「僕が来たことでサポーターが幸せに思ってくれているのを感じるから、僕も凄く幸せ。それに、サッカーが好きなすべての中国人が僕ら外国人のプレーを見るのを喜んでくれている。リカルド・カルバーリョも来たし、他のチームにもレナト・アウグストやパウリーニョ(広州広大)、パト(天津権健)、テベス(上海申花)ら重要な選手たちがいる。リーグは急ピッチで成長しているんだ」と口にする。

最大限の自由を与えられ躍動

 チームではポルトガル人監督ビラス・ボアスの「いつでもベストなサッカーをするように」という指示通りゲームメイク、アシストにゴールとのびのびプレー。彼には最大限の自由が与えられている。

 上海生活も気に入っているようで、「子育ては毎日が発見」という子煩悩なオスカルは、休日は家族を連れて街に出かけているそう。「凄く美しい街だし、国際都市だから僕や家族に必要なものはすべてそろっている。レストランも各国料理のおいしい店がたくさんあるしね。お気に入りはホテルの最上階にあって、街全体が見渡せる日本料理店なんだ」

 ブラジル人同士の絆も強く、フッキやエウキソンと家族で集まりランチを楽しむことも多い。先日は息子カイオ君が1歳となり、みんなを呼んで誕生日会を開いた。

 今の目標は、上海上港でのタイトル獲得と代表復帰。代表には昨年6月にチッチが監督に就任して以降、ケガで辞退した1回を除き招集されていない。

 「チッチは中国にいる選手のこともちゃんと見ている。チェルシーで試合に出ていなかった時は招集されようがなかったけど、ここで凄く良いプレーができているし、これを続けていけばチャンスを得られる」

 19歳でインテルナシオナウに移籍した頃から「凄いタレントが出てきた」とブラジルメディアを盛り上げ、代表の主力、チェルシー移籍と成長を遂げてきたオスカルが、新たなチャンスとみなすほどに中国でのプレーに価値を置いている。いつも物静かな彼が、静かなる闘志を燃やしている。

■プロフィール
Oscar
オスカル

(上海上港/ブラジル代表)
1991.9.9(25歳)
179cm / 66kg MF BRAZIL

2008-10 São Paulo
2010-12 Internacional
2012-16 Chelsea (ENG)
2017-  Shanghai SIPG (CHN)

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45号オスカルチェルシーブラジル上海上港中国

Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。

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