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代理人アリ・バラト。ハイセン、マドゥエケなどビッグディールに多数関与する「新世紀のスーパーエージェント」とは何者?

2026.03.29

サッカー移籍市場を動かす“陰の主役”代理人界隈で今、にわかに注目度を増している男がいる。それがアリ・バラトだ。昨夏のマーケットで成立したディーン・ハイセンやノニ・マドゥエケなどのビッグディールに関与。国外メディアで盛んに取り上げられている気鋭のエージェントが脚光を浴びている理由やその手腕に迫る。

 かつては、ジョルジュ・メンデスや故ミーノ・ライオラのような大物代理人が脚光を浴びることが多かった移籍マーケットだが、近年のメディア上ではむしろファブリツィオ・ロマーノやデイビッド・オーンスタイン、ジャンルカ・ディ・マルツィオといった移籍専門記者の方がむしろ目立っており、ニュースの主役になるような新たな「スターエージェント」は現れていなかった。

 その中で、ここに来て急にメディア上で取り上げられる機会が増えてきたのがアリ・バラトだ。2023年夏にモイセス・カイセドとニコラス・ジャクソンのチェルシー移籍を取り仕切ったことで名前が知られ始め、昨夏(2025年)の移籍ウィンドウでディーン・ハイセン(ボーンマス→レアル・マドリー)、ノニ・マドゥエケ(チェルシー→アーセナル)、ジャクソン(チェルシー→バイエルン)、シャビ・シモンズ(RBライプツィヒ→トッテナム)と、ビッグネームの大型移籍に相次いで関与して大きな注目を浴びたこの代理人は、イラン生まれ、イギリス育ちの45歳。2021年に自らのエージェンシー「エピック・スポーツ」を立ち上げてからわずか5年足らずで、移籍マーケットで最も注意を引く移籍エージェントのひとりへと急成長している。

「戦略的なファシリテーター」として難易度の高い案件を成立へ導く

 イタリアのスポーツ紙『トゥットスポルト』が主催する欧州のU-21世代トッププレーヤーを表彰するアワード『ゴールデンボーイ・アワード』では、2023年と2025年に最優秀エージェント賞を獲得。昨年末にはそれに絡む形で、アメリカメディア『ESPN』や『フォーブス』誌で取り上げられ、移籍専門記者ロマーノのYoutubeチャンネルで単独インタビューを受けるなど、露出機会が増えている。そこには「ビッグディールを動かした敏腕代理人」「新世代のスーパーエージェント」「選手のキャリアを設計し、戦略的なファシリテーターとして複雑な移籍交渉を動かして成立まで運び、タレントの未来を構築する」といった美辞麗句が並んでおり、新たな「スターエージェント」への道を駆け登っているという印象を与えるに十分だ。

 実際、昨夏に彼が動かした案件は、金額が大きいというだけでなく難易度も高いものだった。ハイセンは、前年夏にユベントスからボーンマスに移籍させた後、わずか1年でレアル・マドリーに飛躍。移籍ウィンドウが正式に開く前の5月末、まだシャビ・アロンソ監督の就任すら決まっていないタイミングで、しかしその希望を汲んでスペイン代表のヤングスター獲得を演出するという、注目度の高いディールだった。マドゥエケ(チェルシー→アーセナル)は、クラブW杯期間中という困難なタイミングだった。ジャクソンのバイエルン行きは、移籍期限ギリギリのラスト10分で決まるという綱渡り。クラブ史上最高額でトッテナム入りしたシャビ・シモンズも移籍成立はやはりデッドラインデーだった。たった半日で2つのビッグディールを決めるのは簡単ではない。

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アリ・バラト代理人

Profile

片野 道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。

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